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一語千金

産業再生法

[Industrial Revitalization Law]
沈没寸前の船を救え!

玉手義朗(エコノミスト)

「船体に穴が開いて浸水中、燃料も底をつきかけています!」
 船舶からのSOSを受信すると、海上保安庁がただちに救助に出動し、費用は政府が負担してくれる。しかし、不可抗力の事故ならともかく、波浪警報が出ている中で出航するなど、船の側に大きな責任がある場合には、自己責任を求める声が出てくることもある。
 企業に対しても同じような「救助活動」が展開される場合がある。「産業再生法」に基づく企業の救済だ。
 企業を船と考えよう。企業の経営が悪化して船体に穴が開き、運転資金という燃料も残りわずか、倒産という遭難の危機に見舞われることがある。こうした企業を救済するのが産業再生法だ。1999年に2003年3月までの時限立法として成立した法律で、その後、改正を繰り返して現在に至っている。現在の正式名称は、産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法(産業活力再生特別措置法)で、産活法とも略される。
 経営破たんした企業は、民事再生法や会社更生法などによって再建に向けた「法的処理」か、企業そのものを解体する「清算」が行われる。企業という船を、裁判所の管理のもとで「ドック」に入れて造り直すのが前者、そのまま沈めてしまうのが後者だ。これに対して産業再生法は、経営破たんという遭難を、事前に回避するための手段と考えられる。
 産業再生法の基本的な目的は、過剰な設備や大きな借金を抱えて経営が行き詰まっている企業に対して、不採算部門の整理など、抜本的なリストラを促進させようとするもの。
 税制上の優遇措置や、資金調達をする際の政府保証、登録免許税や不動産取得税の軽減などの税制上の優遇措置も行われる。壊れてしまった部品を交換し、船を修理することで航行能力を回復して、遭難を回避しようというわけだ。
 産業再生法の中で、企業が最も期待するのは「公的資金の投入」だ。公的資金は、日本政策投資銀行がその企業の株式を購入する代金というかたちで投入される。これによって企業の資金繰りが楽になり、再建に向けた抜本的な対策も可能となる。
 しかし、日本政策投資銀行は政府指定の金融機関であり、その資金は最終的には「公的資金」、つまり税金となる。もし「公的資金投入」となれば、株価が下落した際の損失は政府が負担することになる。万一、経営破たんとなれば、購入した株式は紙くずとなり、その損失はさらに拡大する。
 産業再生法による公的資金の投入は、遭難を回避するために政府の救助チームが船に直接乗り込むこと。救助活動が実を結ばず、沈没という事態になれば、政府の救助チームも巻き添えになり、税金が消えることになる。
 国民の税金が使われる以上、産業再生法は安易に適用されてはならない。その企業は救済する必要があるのか?無謀な経営の尻ぬぐいを政府がすることにならないか?企業からのSOSを受信しても、安易に救助に出動せず、その必要性を十分にチェックすることが必要なのである。

著者情報

エコノミスト

玉手義朗

たまて よしろう

1958年生まれ。筑波大学卒。東京銀行、マニュファクチュラース・ハノーバー銀行などで、外国為替取引に携わる。その後、テレビ局で経済部デスクなどを経て、現在はフリー。著書に『円相場の内幕』(1995年、集英社)、『経済入門』(共著、2004年、ダイヤモンド社)がある。

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