imidas - 情報・知識&オピニオン

連載

「アンダークラス」と「新しい階級社会」 ~若者の現在と未来を考えさせるワード

第73回

大内裕和(武蔵大学教授)

 対談の中で最も印象深かったのは、永田さんから自身が関わった80年代の「いじめ」など教育問題を扱ったNHKの番組について「意図はなかったものの結果的に公教育や公立学校叩きを後押しし、教育の私事化や規制緩和を進める新自由主義改革を下支えしたのではないか?」という自省を含めた問いかけがなされたことでした。公教育の問題点を批判する報道が「教育の私事化」を促進することで、「公教育の再生」になかなかつながらないジレンマについては、私も以前から論じてきました。永田さんと問題意識を共有していることが分かって嬉しくなりました。

◆◆

 今回の学習会は総じて、日本社会における80年代からの格差拡大を、歴史過程の中で構造的に明らかにする内容でした。これは現代における「若者の貧困」が彼ら自身の努力不足など「自己責任」によって生じたものではなく、非正規雇用の急増による格差社会化、その延長上に登場した「新しい階級社会」という構造的要因によって生み出されたものであることを示しています。奨学金利用者の急増、ブラックバイトの登場など、私がこれまで取り上げてきたテーマもそうした構造的要因との関係の中で捉えると問題点がより明確に見えてきます。

 今後の若者を考える上で重要なのは、橋本教授が言及された「アンダークラスがいまの規模で存在する限り、他の階級からその担い手が調達されなければならない」という点です。親/保護者の貧困によって進学できない若者、奨学金を利用して卒業後の返済に苦しむ若者、ブラックバイトによって学校で十分に学ぶことができない若者、正規雇用されず不安定かつ低賃金に苦しむ若者、こうした若者たちがアンダークラスとして社会の底辺に固定化されてしまう危険性があります。しかもそれは資本主義の崩壊など、若者だけでなく日本社会全体の危機にもつながりかねないということです。

「アンダークラス」「新しい階級社会」という捉え方の有効性と、その打開策については今後も考えていきたいと思います。

著者情報

武蔵大学教授

大内裕和

おおうち ひろかず

1967年、神奈川県生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得。松山大学教授、中京大学教授を経て2022年度より現職。「入試改革を考える会」代表。「奨学金問題対策全国会議」共同代表。著書に「ブラックバイトに騙されるな」(集英社)、「教育・権力・社会」(青土社)、「ブラック化する教育 2014-2018」(青土社)などがある。

関連記事

新着記事

imidasの更新情報をお届けします。