性知識イミダス:男性特有の病気~男性生殖器が関わる泌尿器科系疾患について知ろう
イミダス編
(構成・文/加藤裕子)

男性のからだに特有の病気として、前立腺や精巣など男性生殖器の疾患がある。男性生殖器は、普段から本人が目にしたり触れたりする機会も多いため、日頃のチェックで異常を発見しやすいと言える。また、乳幼児期から思春期にかけての疾患は将来の妊孕性(にんようせい。子どもをつくる能力のこと)に影響を及ぼす可能性もあるため、男児の保護者であれば、その立場からも適切な処置を覚えておきたい。これらの病気を診察するのは主に泌尿器科となる。男性の主な病気や受診の目安など、知っておきたい基礎知識を、泌尿器科医で聖隷浜松病院リプロダクションセンター長の今井伸医師(追記:2024年10月よりSRHケアクリニック静岡院長)にうかがった。

今井伸医師(泌尿器科医)
男性生殖器の構造

【男性生殖器の詳細に関しては、「性知識イミダス:男性の生殖器を知ろう」をご覧ください】
思春期に起こる突然の陰嚢の激痛は早急に受診を
女性より男性に多い病気はいくつかありますが、「男性に特有の病気」というのであれば、男性生殖器に関連する病気ということになると思います。何か気になる症状があれば、基本的には泌尿器科を受診してください。
どの病気にかかりやすいかは、年代によって違います。乳幼児期に気をつけないといけないのは、精巣が陰嚢(いんのう)の中に降りてこない「停留精巣」、陰嚢がふくらむ「陰嚢水腫(すいしゅ)」です。思春期頃になると夜間に突然、陰嚢が激しく痛む「精巣捻転(ねんてん)症」などの病気も要注意です(それぞれの疾患の詳しい説明は「性知識イミダス:男性特有の病気~男性生殖器が関わる泌尿器科系疾患について知ろう(基礎知識編)」を参照。以下同)。
まず、停留精巣は放置しておくと後々の妊孕性に影響したり、「精巣がん」などのリスクが上昇したりする可能性があります。男児は通常、胎児のうちに生殖腺が精巣へと成長し、腹部から鼠径(そけい)部、陰嚢へと下降してきます。精巣の下降が不完全で陰嚢内に触知しない状態を停留精巣といい、出生時には5%前後にみられますが、生後6カ月までは自然下降することも多く、1歳頃には1.5%前後まで少なくなります。したがって、1歳頃になっても、陰嚢の中に精巣が見られないときには手術が勧められます。
陰嚢水腫は、停留精巣ほど将来に影響が出るというわけではないものの、乳幼児期は陰嚢の腫(は)れなどの状態に保護者が気をつけてあげて、症状が強く出ているようなら、泌尿器科で診てもらうとよいと思います。

ウェブサイト「家庭の医学」(時事メディカル)などをもとにイミダス編集部作成
早急に受診してほしいのは、思春期前後の男児が急に陰嚢部痛を訴えた場合です。その代表的な疾患が、精巣から腹部へとのびる精管や血管、神経などが束になった精索(せいさく)という部分がねじれる精巣捻転症です。突然激しい陰嚢部の痛みで始まり、だんだん陰嚢部が腫れてきます。その痛みを例えるなら、野球のボールが精巣に当たったときのような痛みがずっと続く感じです。発症するのは夜間の睡眠中が多く、下腹部痛や吐き気、嘔吐を訴えることもあります。
子どもは恥ずかしがって親に言わなかったり、「おなかが痛い」としか言わなかったりするケースもあります。放置すると男性不妊につながる可能性もありますし、ひどければ精巣が壊死(えし)して萎縮し、摘出しなければならなくなります。緊急でねじれを戻す手術を行いますが、応急処置として医師が手で精索のねじれを戻してしまうこともあります。とにかく病院に来てくれればすぐに治りますので、ぜひ早く受診してほしいと思います。なお、手でねじれを直したときは、後ほど改めて、精索が再びねじれないよう固定する手術を行います。

包茎は「病気」なのか?
「仮性包茎」(普段は亀頭〈きとう〉が包皮をかぶっていて、包皮を手で引っ張れば亀頭が露出する状態)は病気ではなく、治療する必要はありません。実際、日本人男性の70~90%が仮性包茎ですから、むしろ「普通」の状態と言えます。仮性包茎は、健康や性交の面でも、何も問題はありません。もっとも、中高年に比べ最近の若い世代はあまり気にしていない印象です。
医学的に「包茎」と見なされるのは、包皮を十分に剥けず亀頭を露出できない「真性包茎」です。男の子は生まれたとき真性包茎の状態で、多くは成長とともに包皮が剥けるようになりますが、中には二次性徴後も真性包茎の人がいます。真性包茎で注意してほしいのは、亀頭とペニスの境目(冠状溝〈かんじょうこう〉)に垢(恥垢〈ちこう〉)がたまりやすくなることです。不潔な状態が続くことで炎症(亀頭包皮炎)を繰り返し、包皮が硬くなって出口(包皮輪〈ほうひりん〉)が狭くなり、尿が糸のようにチョロチョロとしか出なくなる状態に発展したり、「陰茎がん」の原因になったりするとも言われています。

小堀善友『妊活カップルのためのオトコ学』(2014年、メディカルトリビューン)などの記述をもとにイミダス編集部作成
亀頭包皮炎も陰茎がんも、局所を清潔にしていれば予防できます。まずは包皮を剥く練習をして、冠状溝をちゃんと洗えるようにします。最初はうまくできなくても、だいたい3カ月ぐらい練習すれば、ちゃんと包皮が剥けるようになります。やり方がわからないときは、泌尿器科で教えてくれますので、相談してみましょう。
小児期に親が包皮を剥くことに関しては賛否両論がありますが、小さい頃は包皮と亀頭が癒着していることが多く、無理矢理剥こうとすると出血したり、子どものトラウマになったりすることもあるので、嫌がる場合は無理をしないでください。思春期頃にはだいたい自然に剥けるようになっていくので、義務感にとらわれる必要はありません。
剥く練習で気をつけてほしいのは、少しずつ無理し過ぎない程度に行い、剥いたら必ず戻すということです。剥けない包皮を無理に剥くと、戻らなくなって亀頭が締め付けられて腫れてしまう「嵌頓(かんとん)包茎」になります。嵌頓包茎は、放置すると腫れがひどくなって治りにくくなるので、早めに病院を受診してください。症状が軽ければ手で包皮を戻すこともできますし、腫れた包皮の中の水を抜く処置で包皮をもとに戻すことができるようになります。
若い男性は性感染症と精巣腫瘍に注意
男性の一生の中で20~30代はいろいろな病気に最もかかりにくい年代だと思います。ただし、性行動が活発な時期ですから、性感染症に注意することは必要です(参照:「性知識イミダス:性感染症の基礎知識」)。激しい性行為や無茶な格好でのマスターベーションで、勃起中の陰茎が折れてしまう「陰茎折症(せっしょう)」も若いときならではと言えるかもしれません。これは陰茎内部の陰茎海綿体の周囲にある白膜(はくまく)が断裂する外傷で、外科手術が必要になります。また、なんらかの原因で勃起や射精ができない「性機能障害」による男性不妊の相談が多くなってくるのも、この年代の特徴です。
もし、子どものときにおたふく風邪(流行性耳下腺炎)になっていなかったり予防接種を受けていなかったりするのであれば、おたふく風邪が周囲で流行しているときには感染予防に努めてほしいと思います。大人になってからおたふく風邪にかかったことが原因で「精巣炎」になると、一時的に精子をつくる機能が低下したり、精子の通り道が閉塞したりする可能性があります。
他の年代に比べ20~30代男性で発症しやすい傾向がある精巣がんは、10万人に1人の罹患率と比較的稀ながんです。精巣がんの主な症状は、痛みを伴わない精巣の腫れやしこりです。痛みがないのにだんだん精巣が大きくなってくるような場合には、すぐに泌尿器科を受診しましょう。精巣がんは転移があっても化学療法が効きやすく、比較的予後が良いのですが、早期発見、早期治療が一番です。