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軍の拘束から生還した北角裕樹さんが語る! 長期化する軍の支配に抵抗し続けるミャンマー市民たちと日本の役割

北角裕樹(ジャーナリスト)

(構成・文/志葉玲)

「民主化勢力は当初、徹底的な非暴力の抗議を続けてきたのですが、クーデター後の軍の支配が長期化し、国際社会の介入も不十分な中で、武器を手にしての武装闘争を始める人々も出てきました。ただ、手製の銃や爆薬などの装備で約40万の兵員と戦車や攻撃ヘリなどの兵器を擁する軍を倒すことは不可能ですので、ゲリラ戦というかたちになります。軍側も拠点地域を村ごと焼き討ちするなど、徹底的にゲリラ掃討を行っています。これまで、地方の少数民族の勢力圏で行われてきたことが、ビルマ民族が多い都市部でも行われるようになってきているのです」

PEOPLEと書かれた盾を持つミャンマー市民たち。©北角裕樹

 

ミャンマーの民主化のために果たすべき日本の役割

 ミャンマーの民主化と内戦激化の回避のためにはどうしたらよいのか。北角さんは「日本のできることは大きい」と強調する。2011年の民政移管開始後、日本はミャンマーへ1兆円ものODAや経済協力を投じてきた。

「日本政府がミャンマーに行ってきた支援は、すべて民主化を進めることが前提だったのです。日本の民間企業も、現地への投資を行ってきました。それらが今回のクーデターで吹っ飛んでしまった。日本側はミャンマーの軍に『責任取れ!』ともっと怒るべきだと思います」

 クーデター発生後も、日本政府は進行中の対ミャンマーODA事業は継続するなど、手ぬるい対応が目立つ。その理由として度々主張されるのが、”もし日本がミャンマーの軍に厳しい態度を取れば、軍の後ろ盾である中国のミャンマーへの影響力がますます増すことになる”というものだ。だが、北角さんは「ミャンマーの人々も軍も、中国に依存しすぎることに警戒感があり、だからこそ日本が重要な役割を果たせる」と言う。

「金にものを言わせてチーク材を買い漁って、山々をまる裸にしたり、バナナのプランテーションによる環境破壊を引き起こすなどの中国企業の振る舞いにミャンマーの人々は憤っています。また、軍も中国からの支援を受けつつも『本当に味方なのか?』と疑っています。それは、カチン族やワ族などの少数民族の武装勢力も、中国から支援を受けているからです。
 ミャンマーと中国は国境線をめぐる領土問題を抱えています。ちょうどクリミア半島問題のように、国境地帯の不安定化は、それを口実にした介入もありうる。そういう意味で中国にとって好都合だからです。また、中国としても何がなんでもミャンマーで軍を支援するというわけではありません。ミャンマー西部のラカイン州沖から中国雲南省へと天然ガスを運ぶパイプラインさえ維持してくれるのであればよいという姿勢であり、ミャンマーの民主化勢力と敵対しているということでもないのです」

 まことしやかに「日本がクーデターを批判すると中国のミャンマーに対する影響力が増す」という説が語られる背景には何があるのか。

「メディア業界にたとえるなら、あまりに核心に踏み込みすぎた記事でネタ元(である政治家や官僚等)を怒らしてしまうとまずいので、ちょっとボカして書くというのと同じです。つまり、ミャンマーの軍を怒らせると、彼らとパイプがある日本側の人々(外交関係者等)が困るということなんでしょうね。確かに彼らのもっているパイプは貴重なもので、私自身そのパイプを通じた交渉で釈放されることになりました。こうしたパイプをもっている人々がそろって軍側に物申せば、また状況が変わってくるのではないかと思います。
 僕は、ミャンマーの人々の勇気に、刑務所内や地域で助け合う彼らの行いに感動しました。それが取材の原動力となっています。アウンサンスーチーさんのような特別な人だけじゃなく、つい最近まで普通の学生だったような若者たちが声をあげている。そうした彼らの悲痛な思いを、日本の人々にも知ってもらいたいです」

 本稿執筆時点で、クーデター発生以来900人が犠牲となっている。これ以上犠牲が大きくなる前に、国際社会が動くべきだろう。ミャンマーの人口は、約5400万。それだけ多くの人々の未来に、日本が影響力をもっているのならば、もっと積極的に関わっていくべきなのだろう。

著者情報

ジャーナリスト

北角裕樹

きたずみ ゆうき

1975年生まれ、東京都出身。早稲田大学政治経済学部卒業。商社、中学校校長、新聞記者などをへて、2014年からミャンマーに移住。現地の情報雑誌の編集長を経て、フリージャーナリストとして活動している。

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