「国境なき医師団」看護師として、紛争地医療に生きる(後編)
白川優子(看護師)
(構成・文/小林資子)
白川 まず語学力に関しては、できるだけ早いうちに鍛えたほうがいいと思います。私は30歳を超えてからだったので、すごくきつかったです。それと、現場ではいろんな文化、いろんな背景を持った人たちと協働することになるので、いろんな国の人と出会って、コミュニケーション力を鍛えておくといいかもしれません。私の場合、MSFに入る前に、バックパック一つで3カ月ほど旅をして回ったのですが、これが下地になりました。どんな環境でも寝られる、とか(笑)。
あとは、相手国の文化をきちんと勉強して、尊重することですね。例えばイスラムの国ならば、女性は公共の場では肌と髪を見せないといった文化を尊重して、外出時はスカーフをかぶる。豚肉やお酒のような、タブーとなる話をわざわざしない、ラマダンの時期は彼らの前では食事をしない、といった基本的なことを守っています。医療行為であっても、異性が触れることを嫌がる国もありますからね。私たちはあくまで、その国におじゃまして、活動させてもらっている立場です。相手に失礼にならないように、柔軟に対応することが大切です。
――MSFには、若い人でなくても参加できますよね。
白川 もちろんです。若くて体力や柔軟性がないと無理、なんて決めつけることはありません。年齢を重ねた、経験豊富な医療関係者は大歓迎です。欧米人ドクターの中には、定年を迎えたら国際貢献したいと思っていた、という60代のかたも多くいますし、70代のかたも時にはいます。
小さな子どもがいる女性もたくさん活躍していますし、シリアで一緒に働いた事のある男性スタッフは、奥さんが初めてのお子さんを妊娠中なんだと嬉しそうに話してくれました。家族の協力がなければできないことですし、人道援助や国際協力に対する社会の見方が日本とはちょっと違うのかもしれませんが、こうしたスタッフが日本人でも増えるといいなと思っています。
著者情報
看護師
白川優子
しらかわ ゆうこ
1973年、埼玉県出身。小学1年生で「国境なき医師団」にあこがれる。高校卒業後、坂戸鶴ヶ島医師会立看護専門学校を卒業して看護師となる。日本で外科・産婦人科を中心に看護師として計7年間勤務。2003年にオーストラリアに渡り、06年にオーストラリアン・カソリック大学看護学部を卒業。その後、現地の病院で手術室などを中心に4年にわたり勤務。2010年、37歳で念願の「国境なき医師団」に参加。外科チームの手術室看護師として、シリア、イエメン、南スーダン、パレスチナ(ガザ地区)、ネパールなど、紛争地や被災地を中心に活動。2018年7月時点で9カ国、17回の派遣経験を持つ。著書に『紛争地の看護師』(2018年、小学館)がある。