『けものフレンズ』現象を読み解く
氷川竜介(アニメ特撮研究家)
こうした推理のプロセスを通じて得られた知見や感覚が、想像力の発動をうながし、作品が終わっても「現実の動物」「現実の自然界」へとつながっていくのだとしたら、この「けものフレンズプロジェクト」はかけがえのない境地を開拓しつつあるのではないか。そこには冒頭述べた「アニメーション」のそなえる「魔法のパワー」が介在している。それが、何より嬉しいことだ。
もともと「アニメーション」という用語は「アニマル」と同じ「アニマ(ラテン語の霊魂)」を語源としている。その「霊魂=いのち」とは、設定として説明されるものではなく、想像力を媒介にして吹きこまれ、発見されるものだったはずだ。
アニマルをモチーフにしたフレンズの生活、特徴の「動き」に観客が想像をめぐらせることには、「いのちの発見」がある。その点で『けものフレンズ』は「アニメーションの根幹」に触れている。アメリカ映画のように、巨費をかけて常時なめらかなモーション、アクションを見せつけるだけがアニメーションの価値ではない。『けものフレンズ』のように、控えめに静かに動かし、間を大事にしつつも「大切な時間」を観る者に想像させるタイプの3DCGアニメーションもあり得るということだ。この発見は、もしかしたら、「日本らしいアニメ文化」に新たな1ページを加えるものかもしれない。
送り手と受け手、想像力の相互作用に「新しいかたち」を獲得しつつある『けものフレンズ』。その点で、今後の展開と新たな進化の可能性から目が離せない。
著者情報
アニメ特撮研究家
氷川竜介
ひかわ りゅうすけ
1958年生まれ。東京工業大学卒。日本SF作家クラブ会員。70年代後半から『機動戦士ガンダム』など数々の作品に関わる。文化庁メディア芸術祭アニメーション部門審査委員、毎日映画コンクールアニメーション映画賞選考委員を歴任。文化庁向けに「日本特撮に関する調査報告書」「日本アニメーションガイド ロボットアニメ編」を執筆。2014年度から明治大学大学院国際日本学研究科客員教授。近著に「細田守の世界」(祥伝社、2015年)がある。