経済的に困っているなら進学しない方がいい? 〜貧困の連鎖を断ち切る高等教育へ
大内裕和(武蔵大学教授)
〈同じ学問に興味ある友達と出会えたこと。高校までは1人で勉強することが多かったが、大学生になってからは友達と自主ゼミを開き、切磋琢磨しながら勉強できる環境にある。そういった環境にいる時、質問し合うことで専門分野に関する理解が深まり、心の底から勉強が楽しいと思えるから〉
〈興味関心があるものについて、豊かな環境で詳しく学ぶことができることです。また、同じものに興味がある仲間と毎日楽しく過ごすことができています。そのため、大学に進学して良かったと思いました〉
〈人の輪が広がり、色々な境遇や地域で生きてきた人との交流が増え、新しい視点や立場、活動を知れたから〉
〈高校までの教育では得られなかった分野の知見が深まってきたので、大学に進学してよかったと思う。大学で学んだことが日々の生活で役立ったときや大学での経験が自分の思考過程に入り込み自分の感性が豊かになっていると感じる時に思う。大学に進学していなければ絶対得られなかった財産だからそう思う〉
〈自分なんてと思うマイナスな考え方をしないようになった。経済格差を感じつつも嫉妬しなくなった〉
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これらの声から、困窮家庭出身で経済的困難に苦しみながらも大学での学びに価値を見出し、充実した大学生活を送っている若者が多数存在していることが分かります。この声を広めて、「経済的に困っているなら進学しない方がいい」から、「経済的な理由で進学を諦めたり、大学生活を経験できない社会は間違っている」へと、世論を大きく転換させることが私たちに求められていると思います。
「経済的に困っているなら進学しない方がいい」という意見は、学費に苦しむ学生たちの困難に思いを致す一方で、経済的理由で大学進学できない現実を容認することで「高等教育予算の拡充によって学費を引き下げる政策」の実現を妨げる機能をも果たしてきました。こうした考え方が、現在に至るまで高等教育における「教育の機会均等」を損なわせてきたことを私たちは見逃すべきではないと思います。
渡辺さんのお話は、困窮家庭の子たちの声に焦点を当てることで、「貧困の連鎖を断ち切る高等教育」実現へのヒントを与えてくれる内容でした。どんなに苦労をしても「進学してよかった」「大学生活が充実している」と答えた彼らの声にしっかり耳を傾け、私も今後の学生・若者支援を考えていきたいと思います。