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福島を語る

人の住めない「白い土地」で生きるということ

『白い土地』刊行記念インタビュー 木村紀夫

三浦英之(新聞記者、ルポライター)

木村紀夫

木村 あと、今年度には、実際に人を連れてきて帰還困難区域の中を見てもらうツアーをやり始めようと思っていたんですけど、新型コロナの影響で仕方なくオンラインになってしまいました。でも、オンラインでやってみると、意外といいんですよ。

三浦 オンラインだと海外からも参加できる。

木村 そうやって実際にはここに来られない人たちにも伝える活動を続けていくなかで、大熊の自宅のところが将来的に帰れるようになったときに、このあたりにスモールコミュニティをつくりたいなと思っています。たとえば、うちの田んぼで育てている菜の花を搾油して農業用機械の燃料にするとか。そこにあるもので賄って、それ以上のものは求めない。いま、仕事も含めて無駄なものが多いし、いまの世の中は、先延ばしばかりじゃないですか。やはり、こうなってしまったことの原因は、東京電力だけじゃなくて、いまの生活様式にあると思うんです。

汐凪さんの遺骨の一部が見つかった場所につくられた慰霊碑を後にする木村さん。

新しい生活様式を目指して

三浦 木村さんは避難先のいわき市でも、ソーラーで発電をしたり、薪ストーブで暖をとったりして、ほとんど電気に頼らない生活をしているじゃないですか。それは原発事故を生み出した、電気というものに対する抵抗ですか?

木村 電気が悪いわけじゃないですよね。以前、東京電力の社長に、汐凪が原発事故によって避難せざるをえなくなって捜索できなかったために命を落とした可能性もあるという話をして、「それでも原発は必要ですか?」と問いただしたことがあるんです。それに対して彼は「電気をつくることは命を守ることです」と答えたんですよ。それを言われたときに、なんかすごくバカにされたなと思いました。その彼らが言う「命を守る」ために、汐凪の「命」は犠牲になったのかと。やろうと思えば、電気は使わなくたって生きていけるわけですよ。だから、ほかの人はできなくても、自分はできるだけ電気に頼らないでいこうと思ったんです。

三浦 おそらく日本で原発の近くに住んでいる人は、いつか福島のようになるかもしれないという不安を抱きながら生きていると思います。でも経済的な利便性や、国益によってその不安が覆い隠されている。メディアもそれを伝えようとしない。

木村 東電の社長に「電気をつくることは命を守ること」と言われたという話をしたら、「それってすごいカッコいいですよね」と言った若者もいました。ほとんどの人は、電気のない生活を考えることすらないんだと思います。でも、いまサラリーマンとしてあくせく働くよりも、電気を使わないようなゆったりとした生活様式のほうが、楽かもしれないという気がします。

三浦 さらに、そこには「自分でやる」という楽しみも加わりますからね。僕も薪ストーブが好きなんです。薪で火を焚いて、手をかざしてると幸せみたいなものが加わる。エアコンよりも暖かくなるまでに時間はかかるかもしれないけど、それが物事を考える時間になるんですよね。

木村 手間をかける中にこそ、本当は楽しみを見出せるんじゃないかと。

三浦 でも、木村さんは脱電気に近い生活をしていながら、コンビニには行っちゃうんですよね。そういうところは、とてもいいなと思います。

木村 もともと、ものぐさなので……(笑)。でも、そんなものですよ。自分のできることしかできないので、無理はせずにやっています。いまの電気に頼りすぎている生活のバランスを見直しながら、昔の不便な生活ともまた違う、新しい生活様式をつくっていきたいです。そうした生活に楽しさを感じてもらえるようにしながら、この土地で起きたことを次の世代に伝えていきたいと思っています。

第一章に木村さんが登場する書籍『白い土地 ルポ 福島「帰還困難区域」とその周辺』(集英社クリエイティブ) 特設サイトはこちら

 

著者情報

新聞記者、ルポライター

三浦英之

みうら ひでゆき

1974年、神奈川県生まれ。『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』で第13回開高健ノンフィクション賞、『日報隠蔽 南スーダンで自衛隊は何を見たのか』(布施祐仁氏との共著)で第18回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞、『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』で第25回小学館ノンフィクション大賞、『南三陸日記』で第25回平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞、『帰れない村 福島県浪江町「DASH村」の10年』で2021年LINEジャーナリズム賞、『太陽の子 日本がアフリカに置き去りにした秘密』で第10回山本美香記念国際ジャーナリスト賞、第22回新潮ドキュメント賞を受賞。

木村紀夫

きむら のりお

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