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連載

福島を語る

福島や沖縄の「今」をいかに語るか ルポルタージュとジャーナリズム

三浦英之×阿部岳 後編

三浦英之(新聞記者、ルポライター)

阿部岳(沖縄タイムス記者)

三浦 なぜ、僕がルポライターという肩書を使っているかというと、沢木耕太郎さんや鎌田慧さん、児玉隆也さんに憧れたという影響が大きいです。彼らはルポライターという肩書を名乗った。でも、ルポライターという言葉自体は、海外ではあまり聞いたことがありません。きっと和製外来語なんだと思います。ルポは、ルポルタージュというフランス語からきているように思えるし、ライターは英語。なんかカッコ悪いんだけど、それがまたいいんですよね。

阿部 ルポライターというと、やっぱり現場を歩く感じがありますね。

三浦 そうですね。スーツは着ないで、市井の人々の間に分け入って、その中から町や社会を見る。そういうルポライターのイメージに憧れたんです。

 

新聞記事の署名問題

阿部 最近では朝日新聞も沖縄タイムスも、署名の記事が増えてきました。記者が自分の視点で見たことを書くコーナーも増えています。そういう意味ではだんだん、時代が追いついてきて、新聞記者とルポライターが並んでいることに、違和感がなくなってくるように思います。僕は、中立とか、客観報道ということには、懐疑的なんです。自分の目で見たものを、公平さを保ちながら自分の責任で書き切るということのほうが、大事だと思います。

三浦 あえて署名をつけていない記事というのがまだ多いですね。記者の顔が見えない怖さを感じています。この政権はおかしいとか、この政権は素晴らしいという記事にこそ、署名を入れるべきじゃないかと思います。

阿部 「天声人語」のような「1面コラム」は伝統的に、新聞がしゃべっていることになっているから、署名を入れていないことが多い。だけど、全国で数社だけ署名が入っていて、沖縄タイムスがその一つなんです。やはり署名があると、書くことが違ってくる。私が福島に行きましたとか、伝承館に行きましたということを、自分の責任で書くと、読者から良いも悪いも含めて、反応がいい。政治家の批判をしたら、政治家から直接怒られるし、怒られたら「書いたのはこういう理由です」と言える。そこで、コミュニケーションも生まれるので、やはり署名は入れるべきだと思います。

 

個がつながり合う、ジャーナリズムの未来

三浦 今メディアへの志望者がどんどん減っているでしょう。首相会見で権力者のご機嫌をとるような質問に対して、絶望している人たちは多いと思います。僕が、福島での首相会見にもぐりこんで、事前通告なしで「福島の原発はアンダー・コントロールと言った、あなたの発言の真意を教えてください」という趣旨の質問をしたとき、NHKではその部分がバッサリと切られて、放送されなかった。記者が会見で挙手して質問するという、本来は極めて普通のことが、今や「異常事態」として取り上げられてしまう。

阿部 東京新聞の望月衣塑子さんが目立つのも、同じことですね。わかるまで質問するという記者として基本的なことをやっているだけなのに、それが異例なこととして政府官僚に目をつけられて、集中的に排除される。メディア内でも望月さんへの評価は割れているけど、記者であれば、たとえ流儀の違いはあっても、「質問をさせるべきだ」という望月派につかないのは、おかしいですよ。

三浦 望月さんはあれほどのバッシングを受けても質問し続けている。それによって、自分も勇気づけられたし、声を上げようとする記者が各地で立ち上がるようになってきていると思います。

阿部 そうですね。今こうして三浦さんとの対談が実現しているように、現場の記者同士がつながれるようになったことは、これからのメディアの未来にとって希望なんじゃないかと思っています。

三浦 これからのメディアは、組織に囚われない個の時代になっていくと思います。それぞれの個が共通認識を持ったときには、連帯して、SNS上ですぐにつながることができる。そうした個々のつながりの力で、衰退するジャーナリズムやノンフィクションを「点」ではなく「線」で、できれば「面」で支えていく。そんな時代が実はもう来ているのだと感じています。

いわき市の松柏館での対談の収録が終わり、震災後に再開発された小名浜港へ向かった二人。

著者情報

新聞記者、ルポライター

三浦英之

みうら ひでゆき

1974年、神奈川県生まれ。『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』で第13回開高健ノンフィクション賞、『日報隠蔽 南スーダンで自衛隊は何を見たのか』(布施祐仁氏との共著)で第18回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞、『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』で第25回小学館ノンフィクション大賞、『南三陸日記』で第25回平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞、『帰れない村 福島県浪江町「DASH村」の10年』で2021年LINEジャーナリズム賞、『太陽の子 日本がアフリカに置き去りにした秘密』で第10回山本美香記念国際ジャーナリスト賞、第22回新潮ドキュメント賞を受賞。

沖縄タイムス記者

阿部岳

あべ たかし

1974年、東京都生まれ。名護市民投票の1997年に沖縄タイムス入社、以来基地問題を中心に取材を続ける。著書に『ルポ沖縄 国家の暴力 現場記者が見た「高江165日」の真実』(朝日新聞出版、2017年)

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