結婚後も自分の姓を名乗りたい! 「第2次夫婦別姓訴訟」にむけて
打越さく良(弁護士)
(構成・文/仲藤里美)
やっぱり、こうした状況はなんとか変えていかなくてはならない。その思いから、18年3月、私も「第二次夫婦別姓訴訟弁護団」の一員となり、東京・広島の家庭裁判所に「第二次夫婦別姓裁判」の第一弾を申し立てました。
原告は別姓を望む4組の夫婦で、夫婦別姓の婚姻届の受理を求める審判、という形。つまり、裁判所が各地方自治体に対し、原告らが届け出た夫婦別姓での婚姻届を受理するよう命じてほしい、という申し立てです。
前回の訴訟では主に、夫婦別姓を認めない民法750条は、個人の尊厳を謳う憲法13条 や24条に反しているという主張を行いましたが、それが認められませんでした。そこで今回はまた別の視点から、民法750条はおかしいという主張をしています。
一つは、「信条による差別」を禁ずる憲法14条1項 に反するというもの。「自分の姓を変えたくない」と考える人は今、法律婚をすることができず、婚姻の自由を侵害されている。さらには、法律婚によるさまざまな権利や利益──先ほど述べた、相続や子どもの親権にかかわるものも含め──を受けられないわけで、これは信条による差別にほかならない、ということです。
二つ目は、「個人の尊厳や両性の平等を定めた憲法24条に反する」という主張。この論点については、前回の訴訟でも最高裁大法廷の15人中5人の裁判官が「違憲だ」として、非常に説得力のある少数意見を付けてくださったので、今回も主張していきます。
そして三つ目が、自由権規約および女性差別撤廃条約違反だという指摘です。後者は実は前回の訴訟でも取り上げたのですが、判決ではほとんど触れられずにスルーされたので、今回はきちんと判断を求めようと考えています。
内閣府による世論調査でも、選択的夫婦別姓の導入に賛成する人の割合は年々増えてきていて、昨年(17年)の調査 では全体の42.5%が「賛成」と答えています。特に、30代以下では半数以上が「賛成」。反対は70歳以上など高年齢層に多いのですが、実際に結婚のときに姓をどうしようと悩む人たちの多くは若い世代なのですから、その意見を重視してほしいと思います。
もちろん、国連の女性差別撤廃委員会などが繰り返し勧告しているように、夫婦別姓を認めるかどうかは人権の問題であって、世論が反対であってもそれとは関係なくやり遂げるべきことです。しかし、その世論さえ「賛成」に傾いているのですから、ますます認めない理由はないと考えます。

かつて、民法には婚外子への相続差別の規定がありましたが、13年に最高裁で違憲判決が出たあと、3カ月ほどで民法改正が行われました。同じように、今回の夫婦別姓訴訟で違憲判決が出れば、さすがに国会も動くはずです。その意味でも非常に重要な裁判だと認識しています。
先ほどお話しした婚姻届受理の申し立てに加えて、5月には第二次夫婦別姓訴訟第二弾として、国家賠償請求訴訟も提起しました。こちらは、夫婦別姓での婚姻を可能にするための法改正を行わないことについて、国に対して損害賠償を請求するものです。どちらの訴訟も現時点では東京と広島のみですが、全国で私も原告になりたいという声が上がっています。各地に広がり、違憲判決や国家賠償を認める判決が出れば、その影響は大きいと思っています。
15年の最高裁大法廷判決を鋭く批判してくださった泉徳治元最高裁判事は著書(『一歩前へ出る司法』日本評論社)の中で、裁判所が「憲法よりも法律を重視し」「法律に適合するならば憲法違反とは言えないとし、条約は無視する」といった現状から早く抜け出して、「憲法を盾に一歩前に出てきてほしい」と書かれていました。とても感動しましたし、このような考えのもと「個人の尊厳を守ろう」と、一歩前に出て判断してくださる裁判官もいるはずだ、と期待しています。
「自分の姓を変えずに結婚したい」というのは、本当にささやかな個人の選択だと思います。それが、なぜ「個人の尊厳」などを定めた憲法の施行から70年経っても認められないのでしょうか。このようなささやかな選択を勝ち取るため、いまだ闘い続けなければならない現状というのは、本当に不思議です。
そして、現状では意思にかかわらず改姓を余儀なくされているのは圧倒的に女性。その生きづらさを直視せず、こんなささやかな選択さえ認めないのであれば、「女性の活躍」どころではないし、ますます少子化も進んで、国全体が地盤沈下していってしまうのではないかと思います。
さらに言えば、個人が自分らしく生きることが認められず、ある固定化された役割を押しつけられるような国は、女性のみならず男性にとっても決して生きやすい社会とはいえないはずです。誰もが、自分らしく豊かに生きていける社会。選択的夫婦別姓の実現は、そんな社会への第一歩だと思っています。ぜひ応援してください。
著者情報
弁護士
打越さく良
うちこし さくら
2000年弁護士登録。15年に夫婦別姓訴訟(第一次)弁護団事務局長として最高裁大法廷判決に臨む。日弁連「両性の平等委員会」委員、一般社団法人女子高生サポートセンターColabo監事、「憲法24条変えさせないキャンペーン」呼びかけ人等を務め、離婚、DVなどの案件を多く取り扱う。著書に『なぜ妻は突然、離婚を切り出すのか』(祥伝社新書)、『レンアイ、基本のキ―好きになったらなんでもOK?』 (岩波ジュニア新書)、『右派はなぜ家族に介入したがるのか』(共著、大月書店)など。