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社会問題

「子どもの権利条約」と日本の学校〜「物言う子ども」を育てるために(後編)

「子どもの権利条約」を教育にどう活かすのか

喜多明人(早稲田大学名誉教授)

(構成・文/加藤裕子)

 世界に目を向ければ、たとえばお隣韓国では、今、公立校で子ども参加による学校づくりを進めており、教職員と保護者と子どもの三者により学校を運営していくための「学校自治条例」が光州市などの自治体でつくられています。ドイツやフランスなどヨーロッパ諸国でも、学校運営に生徒、保護者が参加することを定めた条例、法規を持つ国があります。
 日本でもいくつかの自治体で子どもの権利条例をつくっていますが、学校運営に児童生徒が参加することを定めているところはあまり見られません。ただ、たとえば2000年に「子どもの権利に関する条例」を制定した川崎市では、「学校評議員制度」という国の制度と子どもの権利条例とをミックスして、教職員や保護者、地域住民に加えて児童生徒も参加できる「学校教育推進会議」という仕組みをつくっています。川崎市以外でも、高校などでは学校単位で教師と生徒の二者協議、あるいは保護者も加わった三者協議で学校運営しているところもありますが、生徒が入れ替わっていく中でこうした制度が形骸化することがないよう、条例によって学校の中の子ども参加の仕組みをバックアップするという取り組みは大いにあり得ると思います。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                        
 こうした地域レベルでの動きを進めていくためにも、やはりもっと子どもの権利条約について多くの人が知ることが大切です。子どもの権利条約第42条(条約広報義務)では「締約国は、この条約の原則および規定を、適当かつ積極的な手段により、大人のみならず子どもに対しても同様に、広く知らせることを約束する」とあります。こうした広報義務が課せられている人権条約は非常に珍しいのですが、学校で子どもの権利条約について教えていない日本の状況は、明らかに条約違反です。
 子どもの権利を大切に、というとすぐに「生意気な子どもになる」という声が上がりますが、子どもの権利行使はけっしてわがまま、生意気などではなく、よりよき未来をつくるための、社会を動かす力です。スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんが15歳で気候危機に対して声を上げたように、子どもたちには自分たちが生きる未来のために意見を述べ、行動する権利があります。環境問題に限らず、奨学金制度の問題やコロナ禍で多くの我慢を強いられていることなどに、日本の若い人たちも、もっと怒っていいのです。自分たちの将来がかかっている問題について声を上げ、行動していく、その一歩を踏み出すためにも、子どもの権利条約の役割は非常に大きいと思っています。子どもたちが悩んだり問題を抱えていたりするときに「あ、これは子どもの権利で解決できる」と思えるように、子どもの権利条約を身近なものとして学ぶ機会を増やしていくことが必要です。

著者情報

早稲田大学名誉教授

喜多明人

きた・あきと

1949年、東京都生まれ。1973年早稲田大学教育学部卒業後、1981年から立正大学専任講師、助教授、教授を務める。1996年以降、早稲田大学文学部教授、文学学術院教授を経て2020年に早稲田大学名誉教授となる。子どもの権利や学校改革を専門とし、子どもの権利条約ネットワーク、多様な学び保障法を実現する会、学校安全全国ネットワーク、チャイルドライン東京ネットワークなどの代表を務める。著書に、『みんなの学校安全 いのちを大事にする社会へ』(エイデル研究所、2016年)、『子どもの学ぶ権利と多様な学び 誰もが安心して学べる社会へ』(エイデル研究所、2020年)など多数。

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