地球温暖化メカニズム
住明正(東京大学教授)
「IPCC第4次評価報告書」は、地球の温暖化は「疑わしい」ではなく、さまざまなデータから、「疑う余地がない」ものとしている。そしてその原因を人的な活動によってもたらされていると導いている。はたして、地球はどのような仕組みから、温暖化へと向かっているのだろうか。
なぜ、地球は温暖化しつつあるのか?
地球の気候は、地球にもたらされる太陽エネルギーと地球から出ていくエネルギーとのバランスで決まっている。
入ってくるエネルギーが出てゆくエネルギーより大きくなれば、地球表面の温度は上昇し、やがて、地球から出てゆくエネルギーが増加して釣り合うようになる。このようなエネルギーのバランスから地球の温度を計算してみると、もし地球に空気がないと仮定すれば、-20℃程度になる。しかし現実の気候値は、約15℃程度であるので、約35℃程度高いことになる。この温度の上昇は、空気に含まれる温室効果気体(温室効果ガス、グリーンハウス・ガス)による結果である。
温室効果気体としては、二酸化炭素(CO2)だけではなく、水蒸気やメタンも存在する。温室効果としては水蒸気の効果が大きく、二酸化炭素の効果は、先ほどの35度のうちの約10℃程度といわれている。したがって、大気中の二酸化炭素(CO2)が倍増すれば、長い時間の経過によっては、3℃程度の温度上昇が起きるであろうことに間違いない。
今後、地球の温暖化はどこまで進むのか?
しかしながら、今、世界が問題にしていることは、この先、10年から100年程度の時間スケールでの気候の変動である。現在の地球の表面温度が上昇しているということ、特に、1990年代以降の気温の上昇は疑う余地がない事実となっている。
したがって論点は、現在の温度の上昇が人間活動の寄与なのか、否かに移っている。気候システムには、エルニーニョや氷期と間氷期とのサイクルなどのさまざまな時間スケールを持つ固有の気候変動があるので、「現在の温暖化は自然変動ではないか?」という疑問が繰り返し出されている。
これらの質問については、2007年のIPCC第4次評価報告書では、20世紀の気候変動の数値シミュレーションから「90%の確率で人間活動は最近の温暖化に寄与している」と、人為的寄与はほぼ確実である、との結論を出している。
人間活動による温室効果気体の増加を考慮しない限り、1980年代以降の気温の上昇が再現できないからである。
温暖化によって、地球はどうなるのか?
それでは、温暖化したら何が問題なのであろうか。地球の温暖化は、今までと異なる気候になることを意味する。だから、我々はそれに適応していけばよい、ということもできる。ただ、現在の我々の社会は、今の気候に対応するように膨大な設備投資が行われてきている。たとえば、東京の水資源は、上越の冬の降雪量を想定して、ダムなどの水利用計画が作られている。もし、温暖化によって、冬に雪が降らなければ、梅雨期の前の渇水が心配になる。
また、海面が上昇すれば、海岸の堤防のかさ上げなどの費用が発生することになる。いずれにせよ、新しい気候に対応した資金の投資が必要とされる。
このような事態は、貧困国、あるいは貧困層の生活を直撃する。地球温暖化による影響は、正しい対応策が講じられなければ、結局、企業倒産の増加や物価の上昇という影響となり、貧困層が拡大する結果となろう。これらの結果として、世の中は不安定になってゆくと思われる。
20世紀は、大量生産・大量消費・大量廃棄というパラダイムで、経済成長をひたすら追求してきた。しかしながら、21世紀には、そのような路線は、地球の資源や廃棄物処理能力など、環境が受容できる量には限りがあるため、不可能となっている。最近の、石油高、食料の高騰は、その兆しである。地球の容量に見合った、サステイナブル(持続可能)な発展の道を確立する必要がある。
著者情報
東京大学教授
住明正
すみ あきまさ
1948年生まれ。東京大学理学部物理学科卒。理学博士。気候システム研究センター長などを経て、東京大学サステナビリティ学連携研究機構(IR3S)地球持続戦略研究イニシアティブ(TIGS)統括ディレクター、そののち、国立環境研究所理事、理事長。任期満了を受けて、現在、東京大学サステナビリティ学連携研究機構(IR3S)特任教授。主な著書に『地球温暖化の真実』(1999年、ウェッジ選書)、『さらに進む地球温暖化』(2007年、ウェッジ選書)、『気候変動がわかる気象学』(2008年、エヌティティ出版)、監修に『考えよう地球環境(1)~(7)』(2004年、ポプラ社)、 『地球環境とわたしたちの暮らし』(2008年、実業之日本社)など多数。