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ワールドカップ・南アフリカ大会のここを見逃すな

優勝候補の注目選手を総チェック

大住良之(サッカージャーナリスト)

 ワールドカップ・南アフリカ大会(2010年FIFAワールドカップ)が、いよいよ目前に迫ってきた。キックオフの前に、有力チーム、注目選手を押さえておこう。

データ上では南米勢が有力

 ロンドンのブックメーカーのオッズを見ると、優勝候補の筆頭はスペイン、それに続くのがブラジルで、さらにイングランド、アルゼンチンが追うという形。
 ただし、過去18回、「9対9」で南米対ヨーロッパが分け合ってきた優勝チームを見ると、ヨーロッパ勢が優勝を飾ったのは、ヨーロッパ内の大会だけ。しかし南米勢は、南米での4大会、ヨーロッパでも南米でもない4大会に加え、ヨーロッパでも1大会で優勝を飾っている。今回は「中立地」アフリカでの大会。となると、優勝は南米勢ということになる
(注目選手のデータ)

セットプレーとカウンターのブラジル

 南米の最有力チームは、もちろんブラジル。ワールドカップの全19大会に出場してきた唯一のチームであり、そのうち優勝5回。最近では、1994年、2002年と、1大会おきに優勝を飾っている。10年はまさに「ブラジルの番」と言ってよい。そして今回のブラジルは、かなり優勝の可能性が高いと、私は思っている。
 ブラジルと言えば天才テクニシャンを中心とした攻撃的なチームというイメージがある。今大会も、MFカカ、FWロビーニョなど、過去、優勝したときにも劣らないスター選手をもっている。しかしそうした選手をもってなお、現在のブラジルは「リスタートとカウンターアタックのチーム」でもある。
 コーナーキック(CK)やフリーキック(FK)などのセットプレーからヘディングで奪う得点が、これまでになく多い。そして相手に攻めさせておいて繰り出すカウンターアタックから決定的なチャンスを生み出す。なかでも相手CKからのカウンターには、対戦チームは相当な注意を要する。
 カウンターアタックではロビーニョやFWルイス・ファビアーノが主役となるが、セットプレーで目を離すことができないのがボランチのフェリペ・メロだ。183cm。飛び抜けて長身というわけではないが、驚異的な身体能力を生かして強烈なヘディングを放つ。
 南米勢でブラジルに続くのがアルゼンチン。マラドーナ監督の采配で迷路に落ち込むこともあるが、何と言っても天才FWのメッシの存在が大きい。激しい攻防のなかから突然メッシが飛び出し、美しいゴールを決めて勝ち上がっていくという形も十分考えられる。

スペインの優勝はイニエスタがカギ

 ヨーロッパ勢として初めてヨーロッパ外の大会で優勝を飾るとしたら、やはりスペインだろうか。08年のヨーロッパ選手権ではMFシャビを中心とした圧倒的なパスワークと、FWビジャフェルナンド・トーレスの決定力で見事優勝を飾った。ただ、そのフェルナンド・トーレス、MFイニエスタファブレガスと、主要プレーヤーが3人も故障で大会に間に合うか、懸念されている。
 なかでもスペイン初制覇のカギを握るのはイニエスタ。シャビやFW陣の派手な活躍の陰に隠れているが、左サイドで質の高い攻守を繰り返すイニエスタを欠くと、とたんにチームがぎくしゃくしてしまう。イニエスタがトップフォームを取り戻してワールドカップに臨むことができれば、スペイン優勝の可能性はぐっと高くなる。
 FWルーニー、MFランパードなどスターぞろいで、今回はイタリア人のカペロ監督に率いられるイングランドだが、私はあまり期待していない。プレミアリーグの戦いは厳しく、積み重なった疲労は隠しようがないからだ。頼りになるGKが相変わらずいないのも、ワールドカップでは致命的な欠陥になりそうだ。

アフリカの雄コートジボワール

 「南米対ヨーロッパ」という図式に真っ向から挑戦するのは、大会を初めて「地元」に迎えるアフリカ勢だ。「ホスト国」は南アフリカだが、アフリカ全土の人が今大会を「アフリカの大会」と意識している。そして「ホームチーム」として負けるわけにはいかないと意欲を燃やしている。
 その最有力候補は、2大会連続出場のコートジボワールだろう。ロンドンのブックメーカーも、ポルトガルを押しのけて第9位にコートジボワールをランクさせている。エースのFWドログバはパワーあり、スピードあり、右足でも左足でも、そしてヘディングでも得点できるというスーパーストライカー。他の選手もヨーロッパの一流クラブで活躍しており、チーム全体のレベルは非常に高い。
 私は、そのなかで、若いストライカーのカルーに注目している。兄も有名なコートジボワール代表選手だったが、06年、当時20歳で、小野伸二のいたフェイエノールト(オランダ)で活躍していたカルーは、オランダ国籍をとってオランダ代表になろうとした。オランダ代表監督も大乗り気で手続きを進めたが、結局は許可が下りず、夢はかなわなかった。そして翌年からコートジボワール代表となり、いまやドログバと組む2トップの一角を占めている。
 現在はドログバとともにチェルシー(イングランド)でプレーするカルー。疲れ知らずの動きとスピードで相手守備陣を攪乱し、そこにドログバが飛び込んでくるという形になったら怖い。
 ただ、ブラジルと同じG組にはいり、勝ち上がっても決勝トーナメント1回戦でH組のスペインと当たる可能性が高いのは、コートジボワールにとって厳しい。ブラジルをおしのけて首位になるか、それとも決勝トーナメント1回戦でスペインを撃破するか――。そうなれば、コートジボワールの進撃を止められるチームはない。

アメリカの「BCDDライン」に注目

 さて、私がひそかに期待しているのがアメリカだ。09年の「FIFAコンフェデレーションズカップ 南アフリカ 2009」では、準決勝でスペインを破り、決勝戦ではブラジルを相手に2点を先制(逆転で敗れた)したのは、けっしてフロックではない。
 アメリカの強みは猛烈な運動量を誇る中盤にある。ブラッドリークラークドノバンデンプシーという「BCDDライン」は、90分間にわたって全力ダッシュを繰り返す。戦術面でも新しいものをもっており、イングランド、スロベニア、アルジェリアと組むC組を勝ち抜いて上位に進出する可能性は十分にある。
 10年大会は、南米とヨーロッパのワールドカップ独占にストップをかける歴史的な大会になるのか、そしてその歴史的なチームとなるのは……。楽しみがいっぱいのワールドカップであることは間違いない。

著者情報

サッカージャーナリスト

大住良之

おおすみ よしゆき

1951年生まれ。一橋大学卒。74年ベースボールマガジン社入社。78年「サッカーマガジン」編集長に就任。88年からフリーランスのサッカージャーナリストになる。著書に『サッカーの話をしよう1~6』、『新・サッカーへの招待』など多数。

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