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驚きのミャンマー結婚体験記

夫は中国系イスラム教徒のミャンマー人!?

鈴木亜香里(地球市民の会ミャンマー駐在員)

(構成・文/井下優子)

 改宗と結婚式はスムーズに運びましたが、大変だったのは、日本大使館に婚姻届を提出するという最後の手続き。「イスラム教のイマームがサインした結婚誓約書は正式な書類と認めることができない。ミャンマーの法律に基づいた結婚誓約書が必要」と言われたのです。
 ということで、裁判所で結婚誓約書を作ってもらうことになりました。ミャンマーでは長い間、外国人とミャンマー人との結婚が認められていませんでした。特に外国人男性とミャンマー人女性の結婚は、人身売買を防ぐ目的で禁止されていたので、書類にサインをしてくれる裁判官を探すのは今でも難しいようです。私たちは逆のケースだったので、比較的楽に裁判官を見つけることができたのですが、その裁判官から「仏教徒同士でなければサインできない」と言われてしまいました。
 法律で決まっているのか、ミャンマー国内で仏教徒とイスラム教徒の関係が悪化しているからなのか、原因は裁判官に聞いてもはっきりしません。仕方なく、私たちは書類上、仏教徒として結婚することにしました。しかも、手数料という名目の「ワイロ」を払わなければ、結婚誓約書を作成してくれません。不満はあったものの、約1万5000円を支払いました。私が外国人、そして夫が中国系であることから、普通のミャンマー人同士の結婚よりも高額です。ミャンマーでは中国系はお金持ちだと思われているのです。あるミャンマー人と日本人のカップルは、6万円も支払ったと聞きました。
 その後、私のパスポート、戸籍、夫の国民登録書、結婚式の写真や招待状などの書類を提出してから、実際にサインをもらうまで、さらに1カ月近く待たされました。しかも、当日いきなり裁判所から呼び出され、「本当に仏教徒なのか」と何度も確認されたのち、ようやく結婚誓約書をもらうことができたのです。

ゆる~いイスラム生活

 こうして、宗教的にも社会的にも結婚を認められた今、私は大いに新婚生活を満喫しています。結婚してからわかったことですが、夫の家族は戒律に対してそれほど厳格ではなく、たまにお酒を飲んだり、忙しいときにはお祈りをしなかったりします。義母いわく、「ビールはお酒に入らないので飲んでも大丈夫」。だから夫はビールとワインをたしなみます。ただ、パンデーコミュニティーではすぐに噂が広まるので、皆の前ではしっかりしているように見せなければなりません。夫の家だけではなく、実際は多くの家族が適当にやっているのではないかというのが、私の推測です。
 食生活も、今のところ問題なし。義母は、豚肉なしの中華料理を作るのですが、鶏ガラを煮込んだスープで食べる牛ひき肉の水餃子は絶品! 今日のお昼ご飯は、酢豚ならぬ酢鳥でした。夫婦の食生活は、朝はパンとコーヒー、昼は豚肉を使わずに作った和食弁当、夜は牛肉のスープに野菜をたっぷり入れたラーメン、休日には唐揚げ、といった具合です。「加熱すればアルコールも飛ぶからいいや!」と、料理酒を使ったり、ワインでシチューを煮込んだりもしています。
 外食は、ムスリム以外の人がやっているレストランでの食事は禁じられているものの、夫は気にせず食べています。夫の両親はムスリム以外の店ではあまり食べないのですが、他宗教の人と食事をするときは、たまに食べることも。ただし、「ほかのパンデーには内緒にね」という、ゆる~いイスラム生活です。
 どうしても私がなじめない規則はひとつだけ、トイレの後にお尻を指と水で洗うこと。個室での作業なので誰かに見とがめられることもないだろうと、紙で拭いています。
 私は今、家庭教師にアラビア語を習い、お経の暗記をしているところですが、信仰心のなさそうな夫がお経を覚えていたり、アラビア文字を読めたりすることに驚きました。子どものころに習ったのだそうです。そういえば、夫はなぜイスラム教徒であることを隠していたのでしょうか? いつかじっくり問い詰めようと思っていますが、13年12月の末に子どもが生まれたので、しばらくは子育てに追われそうです。ただ、家族や親せき、友人のサポートがたくさん得られる環境にあるので、子育ては日本よりも楽なのかもしれません。

著者情報

地球市民の会ミャンマー駐在員

鈴木亜香里

すずき あかり

1985年生まれ。東京外国語大学ビルマ語専攻卒。コンサルティング会社勤務を経て、佐賀県の認定NPO法人「地球市民の会」ミャンマー駐在員に。南シャン州のタウンジーという町に暮らし、農業支援、教育支援、地域開発、環境保護などのプロジェクトを行う。公的活動の一方で、2010年、現地で知り合った中国系ミャンマー人のイスラム教徒と結婚、自らも改宗してイスラム教徒となる。13年末、長男を出産。なお、現地では中国系イスラム教徒は「パンデー」と呼ばれ、特別なコミュニティーを形成している。

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