imidas - 情報・知識&オピニオン

探究

カルチャー

「同性婚」いろいろな生き方を大切にする社会へ(2)

「レズビアン」として生きる

東小雪(LGBTアクティビスト)

(構成・文/濱野ちひろ)

「同性婚」いろいろな生き方を大切にする社会へ(1)から続く。

同性婚の是非を巡る闘い

 これまでの日本において、同性婚に関する憲法・民法上の議論が他国に比べて活発とは言えなかった理由の一つとして、日本では同性婚を争点とする裁判がこれまで一件も無かった、という事実があります。欧米では1970年代、80年代から数多くの裁判が行われ、長年にわたる闘いの積み重ねがありました。でも、日本のLGBTはそれをしてこなかった。その件に関しては、木村さんに発破を掛けられました(笑)。「同性婚についての訴訟件数がゼロというのは、申し訳ないけど、日本の同性愛者は怠けていたんじゃないの?」と。
 なぜ同性婚裁判の実績が無いのか。それは他国と日本の環境の違いが理由だと私は思います。
 一つ目は、これまでは顔と名前を出せるLGBT当事者がとても少なかったという事情です。実感としてはここ5年くらいの間にカミングアウトする人々が増えてきていて、「東京レインボープライド」などパレードも盛んになり、LGBTへの社会的な認知度も高まったという印象なのですが、それ以前はやはり偏見が根強かったのです。ですから、少し前の世代の当事者は裁判を諦めがちだったのではないでしょうか。
 また、二つ目として、日本にはもともと同性愛行為に対する刑罰が無いことが挙げられます。世界には宗教的規範を背景として同性愛者が極刑に処される国さえありますが、それに比べれば日本は差別や偏見はあったとしてもある意味では寛容と言えます。日本よりも先に法整備が進んだアメリカやその他の国や地域を見渡してみると、同性愛に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)や、LGBTに対する凄まじい差別と暴力が横行してきた、という状況があります。そんな中で、LGBTの当事者たちは自分自身の権利を守るための活動に踏み込んでいった。しかし日本では、そこまでの壮絶な闘いを強いられる環境が無かったのも事実で、ある程度平和であったとも言えますが、その分、法整備も遅れてしまったのかもしれません。
 同性パートナーシップ条例が審議されていた頃、東京でも反対派によるチラシが配布されたり、街宣車が区役所前に来て条例反対デモを行ったりということがありました。反対意見を述べたりデモを実施したりすることは全ての人々の権利ですから、私はそれに関して不快に思うことはありません。ですが、そのチラシに書かれていた内容には問題を感じました。
 例えば、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に関する誤った情報や、同性愛者に対する差別的見方を助長する文言が書かれていました。幸い、私はレズビアンとしてカミングアウトして以後、このような差別意識に直面させられる出来事に遭遇しませんでした。しかし、今回の条例をきっかけに、反対派の感情や意見も一気に出てきたのを目の当たりにしました。いい意味でも悪い意味でも、これから日本は変わっていくのだろう、という気がしています。

いろいろな生き方を選べる自由

 私が願っているのは、日本でも同性婚が出来るようになること。私たちは特別なことをしたいわけではありません。異性カップルにとっては当たり前のことを、私たちも当たり前にしたいだけ。「結婚するかしないかを選ぶ、選べる」という自由が同性愛者にもあってほしいと思うのです。
 現在、数十人の弁護士など法律家が中心となって組織されている「LGBT支援法律家ネットワーク」の有志の方が同性婚人権救済弁護団を結成、同性婚が日本で認められないのは人権侵害であると主張し、15年7月7日、東京都千代田区の日本弁護士連合会(日弁連)に対して人権救済申立書を提出しました。申立人になれるのは同性婚を求める当事者たちで、455人が申立人に名を連ねています。
 日本のLGBTの人口比率は、「LGBT調査2015」(電通ダイバーシティ・ラボ)によると7.6%です。およそ13人に一人の割合です。職場にも、親戚にも、友達にも必ずいるんだろうな、と想像できる比率だと思います。しかし、社会全体を動かすための人数としては圧倒的に少ない。私は今後は、92.4%の人たちにLGBTのことを正しく知ってもらうことが最も大事だと考えています。私は金沢市の出身ですが、地元はまだ保守的で、LGBTの人にとっては現在も生きにくい土地であろうと思います。近年、都市部を中心にオープンになってきたとは言っても、全国的に見れば、LGBTに対してマイナスなイメージを持っている人もまだまだ多いでしょう。そういった方々へ情報を届けていくことが私自身の最優先課題です。

LGBTにフレンドリーなもう一つの「二丁目」

 さて、渋谷区による同性パートナーシップ条例のニュースが報道された後、東京都世田谷区、横浜市、兵庫県宝塚市も「私たちの自治体でも、できることをしていきたい」と言ってくださいました。また、大阪市淀川区では、2013年から「LGBT支援宣言」を行政として打ち出しています。LGBTにフレンドリーな街や場所は、少しずつ増えています。
 最後に、今最も盛り上がっている地域をお知らせしましょう。それは東京都渋谷区の神宮前二丁目です。LGBTに関する情報発信を行うコミュニティスペース「カラフルステーション」を中心に、当事者もそうでない人も気軽に交流出来る空間が作られ始めています。長らく、「二丁目」と言えばゲイ文化を支えてきた新宿二丁目でした。神宮前二丁目はもう一つの「二丁目」になりつつあります。昼はレストランでランチが楽しめ、カフェでのんびりおしゃべり出来、夜はお酒も飲めます。神宮前二丁目は明るく楽しい雰囲気で、古くからお住まいの方々にも受け入れていただいているのを感じます。ぜひ皆様も、気軽に神宮前二丁目に遊びに来てくださいね。

著者情報

LGBTアクティビスト

東小雪

ひがし こゆき

1985年、石川県金沢市生まれ。元タカラジェンヌ。LGBT研修講師。企業研修、講演、テレビ・ラジオ出演、執筆など幅広く活躍中。テレビ「私の何がイケないの?」(TBS)、「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日)、「ハートネットTV」(NHK Eテレ)、「みんなのニュース」(フジテレビ)、「モーニングCROSS」(TOKYO MX)などメディア出演多数。2013年、東京ディズニーシーで初の同性結婚式を挙げ国内外で話題に。2015年、渋谷区パートナーシップ証明書交付第1号。著書に『なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白』(2014年、講談社)、『ふたりのママから、きみたちへ』『レズビアン的結婚生活』(共著。ともに2014年、イーストプレス)、『同性婚のリアル』(共著。2016年、ポプラ社)『女どうしで子どもを産むことにしました』(共著、2016年、KADOKAWA)。ブログ「元タカラジェンヌ東小雪の『レズビアン的結婚生活』」を発信中。

関連記事