ゲイカップル、代理出産に挑む(1)
(構成・文/濱野ちひろ)
東 だから、受精卵のでき方がセックスであろうと、なんであろうと、そこから先はどんな形であれ自然だと私は思うんです。着床して育ち、出産に至るというのは奇跡的なこと。生殖補助医療がこれだけ発達した今でも、100%妊娠出産に至る方法はないわけで、生命の誕生のコントロールは結局は誰にもできない。そう思うと、妊娠出産を「自然か不自然か」とジャッジすることはできないと思います。
生まれてくる子のアイデンティティー
――ところで、AIDによって生まれた方にお話を伺ったことがあるそうですね。
東 はい。当事者の方が体験を語る会でお話を聞く機会がありました。AIDによって生まれ、そのことを成長されてから知った方が開いた勉強会でした。その方はAIDには反対の立場を取られていました。ご本人の経験からの実感のある意見でした。
増原 私たちは質疑応答で手を挙げて、「レズビアンカップルなのですが精子提供を受けて子どもを授かりたい」と発言したんです。するとその方は「あなたがたの場合は少し別のケースなのかもしれない、わからない」とおっしゃった。
東 どう思われるか少し心配でしたが、思い切って意見を言ってみたんです。すると、全くの否定ではなく、理解を示してくださる反応があった。おそらく、日本国内で過去にAIDによって生まれた方々は、夫側に不妊の原因があるご夫婦の子ども、というケースが多かったのだと思います。その場合、いわゆる「自然」といわれる家庭に育っていますから、子どもは自分の両親との血のつながりを疑うこともなく過ごしていることが多い。しかし、DNA検査などがきっかけとなり、あるとき突然自分と父親との間に血のつながりがないことを知り、自分自身のアイデンティティーが崩壊するようなショックを受けるそうなのです。これは、出自を秘密にされてきたことへの衝撃ではないかと思います。
増原 私たちの場合、両親の性別が同じであることは公然と知られる事実なので、前提として、子どもに出生に至る道筋を秘密にしておくことはできないのです。そういう意味では、従来の一般家庭におけるAIDによる出産とは違うのだと思います。やはり、大事なのは生まれてくる子どもへの説明なのではないか、と思います。
著者情報
株式会社トロワ・クルール代表取締役
増原裕子
ますはら ひろこ
1977年、神奈川県横浜市生まれ。株式会社トロワ・クルール代表取締役、LGBTコンサルタント、LGBT研修講師。慶應義塾大学文学部卒業、慶應義塾大学大学院フランス文学修士課程修了。在学中にパリ第3大学(新ソルボンヌ)へ留学。在外公館(ジュネーブ)、会計事務所、IT会社勤務を経て現職。雑誌『日経ビジネス』『日経ビジネスアソシエ』『日経ウーマン』(ともに日経BP社)などメディア掲載多数。LGBTとアライを対象にした日本初のオンラインサロン「こゆひろサロン」運営。著書に『ふたりのママから、きみたちへ』『レズビアン的結婚生活』(共著。ともに2014年、イーストプレス)、『同性婚のリアル』(共著。2016年、ポプラ社)『女どうしで子どもを産むことにしました』(共著。2016年、KADOKAWA)。
LGBTアクティビスト
東小雪
ひがし こゆき
1985年、石川県金沢市生まれ。元タカラジェンヌ。LGBT研修講師。企業研修、講演、テレビ・ラジオ出演、執筆など幅広く活躍中。テレビ「私の何がイケないの?」(TBS)、「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日)、「ハートネットTV」(NHK Eテレ)、「みんなのニュース」(フジテレビ)、「モーニングCROSS」(TOKYO MX)などメディア出演多数。2013年、東京ディズニーシーで初の同性結婚式を挙げ国内外で話題に。2015年、渋谷区パートナーシップ証明書交付第1号。著書に『なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白』(2014年、講談社)、『ふたりのママから、きみたちへ』『レズビアン的結婚生活』(共著。ともに2014年、イーストプレス)、『同性婚のリアル』(共著。2016年、ポプラ社)『女どうしで子どもを産むことにしました』(共著、2016年、KADOKAWA)。ブログ「元タカラジェンヌ東小雪の『レズビアン的結婚生活』」を発信中。