「全世界の寝そべり主義者よ、団結せよ!」〜謎の文書・中国『寝そべり主義者宣言』を入手した!!
雨宮処凛(作家、活動家)
さて、中国で起きていることは、当然日本にも通じる。この国にも、誰もが羨む生活をしている人もいれば、深夜の肉体労働に従事し、低賃金・不安定な生活から抜けられない人が多くいる。中国よりは緩やかと言っても、この30年ほどで開いたこの国の格差も凄まじい。20年の国税庁の調査によると、正社員の平均年収496万円に対し、非正規の平均年収は176万円。今や働く人の4割が非正規だ。
昨年末、上位1%の富裕層が世界の個人資産の4割を保有していることが大きなニュースとなった。が、日本国内だけを見ても、上位2%が個人資産の2割を保有すると言われている。一方で、コロナ以前の19年の「貯蓄ゼロ世帯」は単身世帯で実に38%。コロナ禍での失業・減収などで、貯蓄ゼロ世帯は現在さらに増えているだろう。が、富裕層はコロナ禍でますます豊かになっているというのが世界共通の現象だ。
そんな中、疲れ果て、「一抜けた」とばかりに競争から降りたい人はどれほどいるだろう。頑張っても一部の人は決して報われない状態は、人を、社会を病ませていく。2000年代前半からの公務員バッシング、10年代の生活保護バッシング、そして昨今目立つベビーカーヘイトや相模原事件に象徴されるような障害者ヘイトを見てもわかる通り、「なんらかの公的ケアの対象となる人が憎まれる」のは、「病気も障害もない人は自己責任で死ぬまで競争に勝ち抜いてください、それが無理なら野垂れ死ってことで」という無理ゲーを、30年近く強いられているからだろう。そう思うと、昨年から相次いでいる「死刑になりたい」などの動機から起きた事件の背景にあるものもうっすらと浮かび上がる気がする。
![]()
そんな中、やはり露骨な格差社会の中国で始まった「寝そべり」という、ゆるやかな抵抗。それ自体がライフスタイルであり主張であり反乱であるという痛快なレジスタンスが日本でもじわじわと支持されている現象は興味深い。
そんな『寝そべり主義者宣言』を流通させている松本氏は、東京に雪が降ると予想された2月10日の数日前、「今週の木曜日、寒そうなのでお休みします」と店の張り紙で宣言するなど早くも「寝そべり」を実践している。しかし、考えてみたらこのコロナ禍、無駄に店を開けたり働いたりしてもロクなことはないのだ。出勤途中に転んで骨折しても救急車は来ないかもしれないし、来たら来たで、医療現場の逼迫に加担してしまうかもしれない。この国では「悪天候の時こそ出勤して会社に忠誠心を見せる」みたいなことが推奨されがちだが、悪天候なら休んだ方がいいに決まってる。
ということで、『寝そべり主義者宣言』が欲しい人は、すでに地下流通しているので、全国各地の怪しげな個人の店とかを探してみてほしい。
どんなとこで売られてるのかって? ヒントは、「金の匂いがしない場所」だ。それでは、良い「寝そべり」を。