ロッキンママ・東海林のり子さんの「推し活」に老後の理想像を見た!!
雨宮処凛(作家、活動家)
なんでも最近88歳の「米寿」のお祝いをしたらしいのだが、そこにLUNA SEAのメンバーが来てくれたというではないか。10代の頃から熱烈なSLAVE(LUNA SEAファンを指す)だった私にとっては気が遠くなりそうなほど羨ましい話だが、その場で東海林さんはLUNA SEAのメンバーに「バックハグ」をしてもらったというではないか。後ろから抱きしめてもらうという、アレである。
なんでも海外ドラマなどでバックハグを見て憧れていたそうだ。ファンとしては、一体LUNA SEAの誰にバックハグしてもらったのか、なぜそのメンバーを選んだのかというところがもっとも気になるところだ。が、そこには触れられず、しかし、畳み掛けるように東海林さんは、90歳・卒寿のお祝いでは「お姫様だっこをしてほしい」とはにかみながら口にしたではないか。
それを聞いた瞬間、私の脳内で盛大なファンファーレが鳴り響き、巨大な花火が打ち上がった。
なんて可愛い人なのだろう。私が10代の頃からブッ飛んでいたけれど、さらにパワーアップして自由になっている。こんなに好き放題、やりたい放題にバンギャの夢を叶えている人が有史以来、この世に存在したであろうか? もう痛快すぎてリスペクトしかない。
番組を見終わった頃、私の老後の目標は明確になった。「目指せ、東海林のり子」である。
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ということで、「東海林さん」という老後の目標ができて初めて気づいたことがある。それは、「ロールモデルとなる高齢の女性があまりにも少ない」ということだ。
例えば10代の頃は、アーティストでも芸能人でも、憧れの女性はたくさんいた。しかし、40代の今、「こんな60代、70代、80代になりたい」というような女性がいるかと言えば浮かばない。というかそもそも、憧れる対象はメディアで知ることが多いわけだが、高齢の女性でメディアに出ている人は圧倒的に少ないという事実がある(その中で高齢女性が出ている率がもっとも高いのが『徹子の部屋』)。
一方、テレビなどを見ていると、高齢の男性はむちゃくちゃたくさんいる。政治家の多くがそうだし、テレビの司会やコメンテーター、俳優なんかも大勢いる。そんな光景を見ていると、若さばかりがもてはやされる女性との非対称性にため息が出てくるほどだ。
さて、その中でも比較的メディアに出ていた人と言えば、21年に亡くなった瀬戸内寂聴さんだろうか。しかし、「ロールモデル」になるかと言えば、彼女は約半世紀前に出家済み。生き方を真似るにはハードルが高すぎる。しかも他界してしまい、さらに遠い世界の人となってしまった。
他に浮かぶ人と言えば、緒方貞子さんとかだろうか。しかし、国際政治学者で日本人初の国連難民高等弁務官とか、経歴がすごすぎてなんの参考にもならない。
他にメディアで見かける高齢の女性と言えば上皇后さまくらいではないだろうか。皇室なので、やはりモデルにはならないだろう。
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ということで、東海林さんという理想ができて気づいた、高齢女性のロールモデルが少なすぎるという問題。が、このジャンル、絶対にこれから需要が高まるに決まってる。私はもっともっと、「先輩」女性たちが何を思い、何を楽しみにしてどんなふうに暮らしているか、非常に知りたい。それなのに、世間の高齢者イメージはといえば、病気と墓と終活とゲートボールと盆栽みたいな、そんなものではないか。
ということで思い出したのは、数少ない高齢者の「推し活」を記録した漫画、『バンギャルちゃんの挑戦』(KADOKAWA、2015年)だ。本書はヴィジュアル系の「追っかけ」である著者の蟹めんまさんがK-POPやプロレス、アイドル、宝塚など他ジャンルの追っかけ現場に挑戦するものなのだが、演歌の現場にも突撃している。
訪れたのは、「都内某ホール」で開催された多くの若手演歌歌手が出るイベント。会場に詰めかけたのは大勢のおばあちゃんたち。手押し車を押す人もいれば酸素吸入器を持参する人もいる。そんなおばあちゃんたちは公式グッズのふろしき(ふろしきが公式グッズという時点でいろいろニーズをわかってらっしゃる)でペンライトの袋やバッグを手作りし、コンサートでは若い男性歌手に黄色い声を発し、終わればオールスタンディングで2時間出待ち。カラオケは本人映像があるという理由で「最新のDAMがあるとこ」に行くと即答したりと、なんというか、バンギャとほとんど一緒なのである。思えば氷川きよし氏のファン層を見れば明らかなように、この国の女性たちは皆さんご高齢でもバリバリ「推し活」に勤しんでいるではないか。
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ということで、私にはもうひとつ、新たな目標ができた。
それは、80歳になってもライブに行くこと。
そのためには健康第一だ。30代後半くらいから2時間立ちっぱなしのライブには足腰が悲鳴を上げるようになってきた。が、こんなことでは東海林さんは目指せない。生涯の「推し活」のために、まずは体力をつけるところから始めなければ。
ということで、いくつになっても新しいバンドやジャンルにも挑戦し続けたいと思う所存である。