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政治・経済

史上空前の失敗!? 賃下げ政策アベノミクスになぜ人々はだまされているのか

GDPかさ上げの「ソノタノミクス」で隠された現実

明石順平(弁護士)

(構成・文/畠山理仁)

──明石さんは名目賃金伸び率のカラクリについても指摘していました。
明石 賃金については、2018年4月から算出方法を変えています。一部が違うサンプル同士をそのまま比べて「伸びました」と嘘の数字を公表しているわけです。賃金が下がれば消費が下がりますから、どっちもごまかそうとしている。そんないかさまをしても物価の伸びが上回っているので、実質賃金は全然伸びていないんです。
 アベノミクスは開始から6年も経つのに、いまだに実質賃金は2012年の民主党時代の数字よりもずっと下です。食べ物が小さくなったり、値段が上がったりしたと感じるのは、アベノミクスが理由です。
──民主党政権時代の方が、まだ伸びていたんですね。
明石 別に民主党が優れた経済政策をしていたわけではありません。特に何もしてない。でも、経済は政府が大きく動いて、すごく急に良くなるものではありません。
 賃金のかさ上げもそうですが、「かさ上げ」してもしょぼいのが「ソノタノミクス」の特徴です。
 具体的に言うと、例えば2013年から2017年の5年間かけて、名目賃金は1.4%しか伸びていません。2018年は調査方法を変えるイカサマをしたので、1年で1.4%伸びましたが、物価が1.2%伸びているので、結局実質賃金は0.2%しか伸びておらず、ほぼ横ばいです。
 難しく考える必要は何もありません。賃金と物価の推移だけをグラフにして、消費はこうなりましたと示せばわかる。アベノミクスの失敗は一つのグラフにまとまります。

──それでも皆がアベノミクスに異を唱えないのはなぜでしょうか。
明石 わかりやすいからでしょうね。国民は単純なんですよ。今までの選挙結果を振り返ってみると、小泉純一郎首相が「郵政民営化」と言ったときは、誰も意味をわかっていなかったけれども大勝しました。「政権交代」を叫んで大勝した民主党がダメになった後は、アベノミクスで大勝している。全部ワンフレーズで選挙の結果が決まっています。ワンフレーズポリティクスって、選挙に勝つためには正しいんですよね。
──日本人に、船が沈みかけている自覚はあるんでしょうか。
明石 私は「この船はいったん沈む」と思っていますが、その点に共感している政治家はほとんどいませんね。
──それでもまだ国家として存続しています。
明石 まだだませているということです。円の信用が続く限りは続きますが、世界に「日本、ダメだな」と思われたら、ドーンって行きますよ。人類史上最悪の恐慌が来るでしょうね。
──ものすごく悲観的な見方をしていますが、衝撃を和らげる方法はあるのでしょうか。
明石 ありません。財政再建の方法は緊縮と増税です。「死ぬほど痛い目に遭う」か「死ぬか」の二択という状況です。でもいくら説明しても理解を得るのは不可能でしょうから、私は財政再建を完全に諦めています。
──そんな状況の中、2019年10月には消費増税が予定されています。
明石 延期するんじゃないですか?消費税率を2%上げたところで、財政状況はたいして改善しません。もうすぐ死ぬ人に注射をするようなものです。そこでまた国民は「増税が延期された! ワーイ!」ってだまされるわけです。でも、さすがに3回も延期してしまったら、本当に通貨の信用を維持できるのでしょうか。
──日本の危機は、いつ来るのでしょうか。
明石 2023年には後期高齢者が2000万人を突破します。団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)に達することで、介護・医療費などの社会保障費の急増が懸念されている2025年問題もあります。後期高齢者2000万人以上という水準は50年間続き、社会保障費の増大で政府の資金繰りは絶望的な状況になりますので、円の信用を維持したままで2020年代を乗り切れるとは思えません。私はもう破滅的事態を覚悟しています。そこからどう立て直せるか、という点が重要です。

明石順平さんの著書『アベノミクスによろしく』『データが語る日本財政の未来』(ともにインターナショナル新書)

著者情報

弁護士

明石順平

あかし じゅんぺい

1984年、栃木県出身。東京都立大学法学部、法政大学法科大学院を卒業。主に労働事件、消費者被害事件を担当。ブラック企業被害対策弁護団所属。著書に、『アベノミクスによろしく』(2017年)、『データが語る日本財政の未来』(2019年、ともにインターナショナル新書)がある。ブログ「モノシリンの3分でまとめるモノシリ話」管理人。

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