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「リベラル保守」による政権交代へ

「リベラル」と「保守」は対立した概念なのか? 政治ヴィジョンを整理してみる。

中島岳志(政治学者)

  逆に、立憲民主党は「Ⅱ」の立場を鮮明にしたため、政権との対立軸の明確化に成功し、多くの支持を集めることに成功した。このことは希望の党の今後にとって、極めて示唆的である。いくら中道保守の票を獲得しようとしても、「Ⅳ」の政党と見なされる限り、自公政権のオルタナティブとはならない。あくまでも「Ⅱ」を基調としなければ、有権者の選択肢とはならない。
 つまり、結論は簡単である。小池都知事をはじめとする「Ⅳ」の政治家と明確に決別するしかない。「Ⅱ」と「Ⅳ」の対立的な矛盾を党内に抱えている限り、希望の党に未来はない。玉木代表を中心に、「Ⅱ」の方向性を取る「リベラル保守」政党として、理念を確立するべきである。

共産党の政策は保守的

「Ⅱ」の路線を取る政党が共闘して選挙に勝ち、政権を担うためには、日本共産党の存在を無視することはできない。小選挙区で1対1の勝負に持ち込むためには、共産党との選挙協力が不可欠である。希望の党のもう一つの失敗は、「共産党と選挙協力をすると左傾化する」と考え、野党共闘を拒絶した点にある。
 しかし、共産党の掲げる政策をじっくりと吟味すると、極めて保守的であることに気づく。例えば、新自由主義やグローバル資本主義の暴走に対峙し、「TPP反対」を掲げ、農家や中小企業を守ろうとしている。大企業の過剰な内部留保と利益を中小企業など社会に還元し、家計・内需主導の安定路線を目指している。共産党の内政面での政策は、どの政党よりも保守的である。
 つまり、共産党と組むことで左傾化するのではなく、共産党の政策を取り込むことによってこそ、本来の保守へと接近するという逆説が存在する。ここが共産党との関係を構築するうえで重要なポイントとなる。
 もちろん、政党間の齟齬(そご)は存在する。最大の問題はアメリカとの関係だろう。共産党は「日米安保条約の廃止」を主張し、「対等平等の日米友好条約」を結んだうえで、日本国内の米軍基地の撤退を訴える。対米従属を批判する共産党の主張は、本来の保守派の路線と軌を一にするが、現実的には一気に同盟関係の解消を進めることは難しい。野党共闘を進めるためには、対米関係についての短期的・中期的・長期的ヴィジョンを調整する必要がある。

 これからは「Ⅳ」のネオコン的安倍政権に対する「Ⅱ」の政党による共闘関係構築が重要になる。その時の理念の方向性は「リベラル保守」ということになるだろう。ここに共産党や社会民主主義者との連帯が構築できれば、野党による連立政権の樹立は十分可能である。立憲民主党が中核となって希望の党とタッグを組み、共産党と共闘する「リベラル保守」政権の樹立こそ、次の課題となる。

 

 

 

著者情報

政治学者

中島岳志

なかじま たけし

1975年大阪府生まれ。専門は南アジア地域研究、近代日本政治思想。大阪外国語大学卒業。京都大学大学院博士課程修了。北海道大学大学院准教授を経て、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授に。『中村屋のボース インド独立運動と近代日本のアジア主義』(白水社)で、2005年に大佛次郎論壇賞を受賞。著書に『インドの時代―豊かさと苦悩の幕開け』(新潮社)、『パール判事 東京裁判批判と絶対平和主義』(白水社)、『「リベラル保守」宣言』(新潮社)、『親鸞と日本主義』(新潮選書)など多数。幅広い評論活動を行っている。

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