2019年参院選を読み解く(その2) 野党連合の反攻
木下ちがや(政治学者)
6月24日に公表されたNHK世論調査では、安倍内閣の支持率は2週間前と比べて6%下落した(支持率42%)。今回改選される参議院議員は、2013年に選出されたわけだが、参院選1か月前のNHK世論調査における内閣支持率は62%(*)であり、現在はそれより20%も低い。自民党の支持率も13年の41.7%(*)から19年の31.6%と、10%低下している。しかも13年参院選は、1人区での野党一本化はなされていなかった。NHK世論調査は「与党の議席が増えたほうがいい」21%、「野党の議席が増えたほうがいい」30%と、野党に対する潜在的な期待が高まりつつあることを伝えている。
野党連合はこの好機をつかみとることができるのだろうか。それとも再び敗退し、分裂の危機に陥るのだろうか。参院選は政権交代選挙ではないので、野党連合が勝利しても安倍政権の崩壊には直ちには結びつかない。しかしながら、この1年あまりの間につくりあげられてきた、安倍政権の憂鬱な「完成された支配」を突き崩し、次なるステップを切り開くことで、中島京子が〈もう少し楽観的な希望〉(「論座」19年6月16日)を抱くことができた以前の状況を取り戻すことはできるはずだ。
G20におけるトランプ大統領の「日米安保条約は不公平であり、見直すべきだ。安倍総理はそれに理解を示している」といった発言。そして翌日6月30日の朝鮮半島の非武装地帯における電撃的な米朝韓首脳会合は、この国がいま置かれている本当の立場を明らかにしてしまった。これだけ、世界は変わり、東アジアも変わっているのに、気が付くと日本は「蚊帳の外」に置かれていた。安倍政権は「日本は変わらない、変わらなくていい」とひたすら国民に説き続けてきた。だがそれは目前の危機を先延ばしにし、ただ政権を維持するための「時間かせぎ」に過ぎなかったのだ。
冷戦終結後、グローバル化が進むなかで、人々が何とか「変わろう」とした時期はあった。1度目は、自社さ連立政権(村山富市内閣)のもとで、2度目は、民主党政権のもとで。いずれも大震災があり、ボランティアが活躍し、デモや集会への市民参加が進んだ。アジア諸国への侵略と植民地支配の歴史に向き合おうともした。安倍政権はまさに、この2つの政権のもとでの人々の挑戦を否定し、「悪夢であった」と刷り込むことで、自らを正当化してきた。
わたしたちがもし現状を打開し、前に進みたいならば、安倍政権がなきものにしようとした過去の挑戦を取り戻さなければならない。ささやかではあるがかけがえのないこの経験と記憶をいま思い起こす必要がある。
この国が抱える問題は山積している。解決を諦めてやり過ごすのか、それとも希望を捨てず、わたしたち自らが危機を乗り越えていくのか。この選択が問われる参議院議員選挙の投開票が、目前に迫っている。
著者情報
政治学者
木下ちがや
きのした ちがや
1971年、徳島県生まれ。一橋大学社会学研究科博士課程単位取得退学。工学院大学非常勤講師、明治学院大学国際平和研究所研究員。さまざまな社会運動に参加し、行動する政治学者として現場に足を運び、発信している。著書に『国家と治安――アメリカ治安法制と自由の歴史』(青土社)、『原発を止める人々』(小熊英二との共編著、文芸春秋)、『ポピュリズムと「民意」の政治学 ――3・11以後の民主主義』(大月書店)など。最新刊『「社会を変えよう」といわれたら』(大月書店)では、3.11以後の出来事について解説と分析し、これからわたしたちがどこへ向かおうとしているのかを考察している。