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権威ではコロナを抑えられない 過去の教訓を生かした韓国の対策

徐台教(ジャーナリスト)

一 個人の自由と権利を制限する措置が、法により提供され実行されなければならず
二 一般の善(general good)の正当な目標を持った場合にのみ留保可能で
三 そうした目標を達成するために、民主的社会で厳格に必要な水準で
四 同一な目標に向かうためには最も浸湿的(既存の規則を侵す方法)でなく制限的な手段で
五 科学的な根拠に基づき
六 任意に賦課したり差別的な方式であってはならず
七 公衆のために個人の人権と自由が制限されるとき、国家は彼らが不当に害を受けないよう保障し支援するべきだ(互恵性の原則)

 注によると、このうち6つ目までは国連が定める「シラクサ原則(人権を制限する場合の詳細な原則)」とのことであるが、こうした点も考慮して準備してきた点は印象的だ。

 最後に、この文章を終えるにあたって日本社会にどうしても強調しておきたいことがある。

「最も有効な被害の克服と景気改善対策は、1日も早く新型コロナ禍を終息させることだ。一旦、耐えてこそまた立ち上がれる。確診患者も耐えてこそふたたび立ち上がれる。今苦しんでいる零細企業の商工人もふたたび立ち上がれる」

 3月2日、洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相兼企画財政部長官(財務省に相当)は国会を訪れ、追加補正予算の成立をこう訴える途中で涙を流した。別に洪長官は、取り立ててリベラルな人物ではない。どちらかといえばシビアな財政専門家に分類される。だが、こうした姿を見て人々は、政府の対応の原則がどこにあるのか判断する。

 ソウル市の朴元淳(パク・ウォンスン)市長も事あるごとに、社会的弱者への支援を強調する。こうした姿勢は市民が落ち着いて、安心して暮らすには欠かせない。国家的な感染症に対する姿勢は「まず社会的弱者から」となるべきだ。

 見てきたように、韓国政府の新型コロナへの対応は「感染病拡大時に最も必要な『信頼』を得るために政府が情報公開を行い、社会がそれに応えた」という原則を徹底したものだ。4月15日に迫る総選挙を政府の頑張りの理由に持ち出す人もいるが、それだけでは説明できないことが多い。その間のプロセスはこれから分析され、落ち着いた頃にやはり白書として功罪がまとめられることになるだろう。

 ただ一つ言えることは、韓国政府と韓国社会は「開放的で民主的な」今回のやり方に自信をつけつつある。個人情報の取り扱いや今は支援から除外される外国人へ対応など、諸々の重要な問題も今後、この土台の上で折り合いをつけていくだろう。どれも予断を許さないものの、襲い来るウイルスに対する新たな第一歩としては、うまく踏み出せたのではないかと筆者は思う。

著者情報

ジャーナリスト

徐台教

ソ・テギョ

1978年、群馬県生まれの在日コリアン三世。小学校は朝鮮学校、中学校・高校は公立学校で学び、1999年からソウル在住。韓国の高麗大学東洋史学科を卒業後、人権NGO代表や日本メディアの記者として朝鮮半島問題に関わる。2015年、韓国に「永住帰国」すると同時に独立。現在「コリア・フォーカス」編集長。主な取材テーマは、朝鮮半島の分断、南北関係、韓国政治など。Yahoo!ニュースや日本メディアへの寄稿・出演多数。ソウル外国人特派員協会(SFCC)正会員。2022年、「第七回鶴峰賞言論部門優秀賞」受賞。著書に『分断八〇年 韓国民主主義と南北統一の限界』(集英社クリエイティブ)がある。

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