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社会問題

森喜朗氏の女性差別発言から考える「男性中心社会日本」~私たちはどう変えていくべきか~

三浦まり(上智大学法学部教授)

(構成・文/仲藤里美)

 また、21年3月には、東京オリ・パラ開閉会式の統括責任者であった佐々木宏氏が、タレントの渡辺直美さんの容姿を侮辱する演出を提案していたことが明らかになり、辞任しました。問題が世に出てから辞任までが早かったのも、森氏の辞任によって規範が強化されていたからでしょう。この出来事もまた、何が問題なのかの議論を深めて、再発防止に繋げる必要があります。外見で人を判断するルッキズムの問題、「痩せている方が美しい」という美的基準を強化する問題、容姿を笑いものにするという侮蔑的態度、さらには人を動物にたとえることで、その人の尊厳を否定するという深刻な差別
 女性を容姿でいじることを「笑い」だととらえる感覚は、本当に罪深いものです。逆に、渡辺直美さんのコメントは多くの女性たちを勇気づけるものでした。佐々木氏の引責辞任をきっかけに、こうした人権意識の欠如は古い、むしろ格好悪い、という受け止め方が広がるといいなと思います。
 この件を報じた『週刊文春』(2021年3月25日号)は、森氏や佐々木氏の介入により、演出家のMIKIKO氏やパラ開閉会式に携わっていた栗栖良依氏が排除されていく過程を明らかにしています。森氏はMIKIKO氏に向けて「あなたが女性だったから、佐々木さんは相談できなかったのでは。事を荒立てるんじゃないだろうな」と発言したと報じられています。二人とも、女性が意思決定において重要な役割を果たすこと自体を受け入れることができない。恫喝すればなんとでもなると考えているかのように見えます。発想の根元にミソジニー(女性蔑視)が深く染みついています。そして、同質的な集団に囲まれているために、人権意識の欠如に気がつくこともできない。

 日本は今、こうした意思決定の闇を変える転換点に立っていると思います。性差別的な社会構造が何百年と続いてきたのですから、何か一つのことで急に変わるわけではないでしょう。今回の組織委の変化も、単なる見かけ倒しと冷笑する向きもあるかもしれません。でも、私はそういった態度が日本の20年の停滞をもたらしたと考えています。
 もうすでに変革は始まっています。これからは、あらゆる領域に変化の連鎖を作り出していくことがポイントとなります。揺り戻しも抵抗も起きるでしょう。それでもなお新しい時代を創るには、連鎖反応をそれぞれの現場で作り出すよう持続的な働きかけが鍵となります。それには多くの人の参加が必要です。市民社会で呼吸を合わせて、進めていければと思います。

著者情報

上智大学法学部教授

三浦まり

みうら まり

1967年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。カリフォルニア大学バークレー校政治学博士課程修了。政治学博士。東京大学社会科学研究所研究機関研究員を経て、現職。専門は現代日本政治論、比較福祉国家論、ジェンダーと政治。主な著書に『さらば、男性政治』(2023年、岩波新書)、『政治って、面白い! 女性政治家24人が語る仕事のリアル』(23年、花伝社)、『私たちの声を議会へ――代表制民主主義の再生――』(15年、岩波現代全書)、『ジェンダー・クオータ――世界の女性議員はなぜ増えたのか』共著(14年、明石書店)、『日本の女性議員 どうすれば増えるのか』編著(16年、朝日選書)ほか。21年にフランス政府より国家功労勲章シュバリエ受賞。

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