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地図を読み解けば世界が広がる

地図のつくり手から聞いた地図を愉しむ法

山岡光治(元・国土地理院中部地方測量部長)

(構成・文/村山加津枝)

 それでは、具体的にどのような縮尺の地図がおすすめかというと、たとえば街歩きの場合は、全国の主要都市について整備されている1万分の1縮尺地図です。ショッピングなどが目的ではありませんから、多少情報の更新が遅くても、基本的な道路の骨格や地形に変化がなければ問題はありません。これが2万5000分の1縮尺だと個々の建物や道路が省略されていて、一般者の街歩きには不向きです。かといって、5000分の1縮尺などのより大きな縮尺の地図になると、情報量は変わらないのに大型になって、持ち運びにも不便です。 もちろん、郊外での野歩きや小山歩きなら、2万5000分の1縮尺の地図で十分です。
 私の住まいの近く、常磐線に「佐貫」という駅があります。茨城県にあるこの駅には「当駅は、マザー牧場の最寄り駅ではありません」という貼り紙があります(地図研究家の今尾恵介さんが発見しました)。実は、マザー牧場の最寄り駅が「佐貫町」(千葉県)であることから、間違う人が増えて貼り紙をするようになったのだそうです。
 原因は、ネット時代を反映したものです。マクロな情報の持ち合わせない人が、検索だけを頼りに目的地をめざした結果です。
 このようなポイントとポイントだけをつなぐ情報で歩くのではなく、広がりや高さを感じるとることができる紙の地形図を持ってする街歩きには、遊びの可能性がたくさんあります。
 たとえば、スマホの地図では味わえない等高線が表現する高低差を感じながら小路をたどって寄り道することで、緑多い急坂や人恋しい階段坂といった新しい発見があり、河川蛇行の周辺では、難しい読みの地名を発見し、地形と対比して納得する。そして街中では、三角点や水準点の標石に遭遇するといったことです。併せて過去の地図を携帯すれば、街の変遷を想像することができ、あるいは暗渠(通水路にふたをしたもの)になった旧河川探しもできて、愉しいものです。
 こうした紙の地図の愉しみは、ネットショッピングで書籍を買い求めるのではなく、実際に書店に行って回遊しながら気になった本を買う、そんな愉しさに通ずるものだと思います。

著者情報

元・国土地理院中部地方測量部長

山岡光治

やまおか みつはる

1945年神奈川県横須賀市生まれ。元国土地理院中部地方測量部長。63年道立美唄工業高校卒業後、国土地理院に入所。2001年同院を退職し、ゼンリンに入社。05年退社後も、執筆、講演、街歩きなどを通し、地図の楽しみ方を伝える活動を続けている。主な著書に『地図に訊け!』(ちくま新書、2007年)、『地図を楽しもう』(岩波ジュニア新書、2008年)、『地図をつくった男たち』(原書房、2012年)、『地形図を読む技術』(サイエンス・アイ新書、2013年)、『地図はどのようにして作られるのか』(ベレ出版、2013年)ほか、多数。(2015.11)

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