収奪文化財のあるべき場所~「国際主義」vs.「現地主義」という虚構を超えて
五十嵐 彰(公益財団法人東京都教育支援機構 東京都埋蔵文化財センター調査研究主任)
返還を要求されている博物館側は、収蔵品を返還すると自分たちの社会的な役割が損なわれると危惧しています。現状維持に努めるばかりで、返すべき〈もの〉を返すべき相手に返すことによって、奪った側と奪われた側の固定した対立関係を変革させて新たな関係を構築しようという建設的な展望が一向に示されません。
あくまで返還を拒み、これからもひたすら従来の立場を固守して内側に閉じこもるのか。それとも自らの過去の不正義を認めて、現状を良い方向に変えていこうとするのか。文化財を収蔵する博物館は〈もの〉と〈ひと〉との関係を再構築するような新たな展望を示すべきです。「普遍主義」を標榜するならば、所蔵する〈もの〉だけに身勝手な価値を付与するのではなく、また手放すことで国益や館益が損なわれるといった短絡的な損得勘定に囚われるのでもなく、人類の普遍的な倫理観に則った規範を示すことで、ポスト・コロニアルな時代にふさわしい「普遍的」な価値観を世界の人たちと共有すべきです。このことは、私たちを内なる植民地主義から解放する一歩となるはずです。
著者情報
公益財団法人東京都教育支援機構 東京都埋蔵文化財センター調査研究主任
五十嵐 彰
いがらし あきら
1961年東京都生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程修了。専攻は第2考古学(考古学方法論など)。公益財団法人東京都教育支援機構 東京都埋蔵文化財センター調査研究主任、慶應義塾大学非常勤講師として勤務し、韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議、中国文化財返還運動を進める会の世話人を務める。著書に『文化財返還問題を考える』(岩波ブックレット、2019年)がある。