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一語千金

オルタナティブ投資

[alternative investment]
カタカナ言葉にご用心!

玉手義朗(エコノミスト)

「カタカナ言葉の使いすぎは要注意なんだ」と言うのは、広告代理店に勤める友人だ。「新開発のハイブリッドエンジンを搭載」、「最新のクラウド技術を採用」といった具合に、新商品の宣伝にはカタカナ言葉が踊ることになる。聞き慣れないカタカナ言葉が並べられることで「すごい!」と購買意欲を高める一方で、「よく分からない…」と、高齢者などからは敬遠されるという。
 同じことがオルタナティブ投資にも当てはまるだろう。オルタナティブ(alternative)は、「代替」「もうひとつの」という意味で、新しい可能性を求めて、既成の概念を超えたものに付けられる言葉。太陽光発電などを示す「オルタナティブエネルギー」、現行の教育制度の欠点を補う「オルタナティブ教育」など様々な分野に登場するが、「オルタナティブ投資」もその一つだ。
 既存の投資手法に代わって、最先端の投資手法を積極的に取り入れ、より大きな利益を上げようとするのがオルタナティブ投資。株式や債券などを購入して、値上がり益や配当、利息などを得ようとする一般的な投資方法は、市場全体が下降局面にある場合などでは十分な利益を得られない。
 そこで、オルタナティブ投資の出番となる。オルタナティブ投資は、既存の投資の「代替手段」として、その欠点を補おうとする先端的な投資の総称である。先物取引やデリバティブなどの高度な金融取引、不動産や商品(コモディティー)、さらには企業買収やベンチャー企業への投資など、多種多様な投資によって利益を上げようと狙っている。
 オルタナティブ投資を活用しているのがヘッジファンドだ。顧客から巨額のお金を預かって運用しているヘッジファンドは、厳しい顧客の要求に応えられるように、オルタナティブ投資に力を入れている。一部の証券会社や投資銀行、企業の年金資金などを預かって運用する投資顧問会社などでも、オルタナティブ投資を強調することで、顧客を集めている。どんな市場環境でも利益を生み出す「魔法のつえ」が、オルタナティブ投資というわけだ。
 しかし、オルタナティブ投資は、元手の数十倍、数百倍の取引が可能となるレバレッジ取引が含まれるなど、「ハイリスク・ハイリターン」の投資だ。したがって、大きな利益が期待できる一方で、裏目に出れば通常では考えられない巨額の損失を出すことになる。
 その一例がAIJ投資顧問だ。オルタナティブ投資によって、下げ相場でも利益を出しているなどと言って顧客を勧誘してきたAIJだが、実際には、2000億円以上の損失をする事態となった。既成の投資では考えられない損失は、リスクの高いオルタナティブ投資にのめり込んで行った結果なのである。
 こうしたことから、オルタナティブ投資と聞くと、「よく分からないけどすごいらしい…」とうのみにする人がいる一方で、「カタカナ言葉は信用できない。悪魔の道具だ!」といった拒否反応を生み出すことにもなっているのだ。
 オルタナティブ投資は、利益を生み出す「魔法のつえ」でもなければ、巨額損失をもたらす「悪魔の道具」でもない。カタカナ言葉に惑わされることなく、冷静にその実態を把握することが大切なのである。

著者情報

エコノミスト

玉手義朗

たまて よしろう

1958年生まれ。筑波大学卒。東京銀行、マニュファクチュラース・ハノーバー銀行などで、外国為替取引に携わる。その後、テレビ局で経済部デスクなどを経て、現在はフリー。著書に『円相場の内幕』(1995年、集英社)、『経済入門』(共著、2004年、ダイヤモンド社)がある。

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