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一部指定

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「一軍昇格」で株価上昇

玉手義朗(エコノミスト)

 2018年5月2日、プロ野球日本ハムファイターズの本拠地である札幌ドームは、大歓声に包まれた。大型ルーキー清宮幸太郎選手が一軍に昇格し、初打席を迎えたのだ。清宮選手はケガなどで不振が続き開幕は二軍からスタートだったが、その後復調して一軍昇格を果たした。球団は観客に「観戦証明書」を配布、新たなスターの誕生を大いに盛り上げていた。
「一部指定」は証券市場における一軍昇格だ。東京証券取引所は、プロ野球の一軍に相当する東証一部を頂点に、二軍である東証二部、その下に実業団や独立リーグに相当するマザーズやジャスダックなどの新興企業向け市場から構成されている。選手である企業にとって東証一部でプレー(上場)することは憧れだが、株主数や時価総額、利益や資産から企業倫理に至るまでの厳しい基準(上場基準)を満たす必要がある。これを満たし、審査をクリアした企業だけが、東証一部という晴れ舞台に立てるのだ。
 東証一部への道筋は、マザーズやジャスダックに上場して実績を積み、東証二部を経て一部指定を勝ち取るというのが一般的だが、東証二部を経由しない場合もある。東証はこうした場合を「市場変更」と呼んで、一部指定と区別している。また、第一生命保険やサントリーなど、大企業でありながらあえて上場していなかった場合、いきなり東証一部に上場される場合もある。「超大型新人」の登場というわけだ。
 厳しい勝負だけに、成績不振の選手が「二軍送り」になることもある。東証も同じで、東証一部に上場されていた企業が、業績不振などで東証二部に降格されることがある。「指定替え」と呼ばれるもので、原発事業で債務超過に陥った東芝がその一例だ。さらに経営が悪化して、経営破綻(はたん)したり、上場維持の最低限条件すら満たせなくなったりした企業は「上場廃止」となる。球団からクビを言い渡され、株式市場から追放されるというわけだ。
 二軍スタートとなった清宮選手に対しては、力不足を指摘する声もあり、注目度も下がっていた。しかし、一軍昇格を果たしたことで人気が再燃して、一気に株を上げた。東証でも同じことが起こる。一部指定されると「株を上げる」、文字通り株価が上昇する。
 一部指定となった企業の株価が上昇するのは、厳しい上場基準を満たしたからだけではない。東証一部に上場されると、その株式は自動的にTOPIX(東証株価指数)に組み入れられる。TOPIXは東証一部上場の全株式の動きを示す指数だが、これに連動した投資信託や投資方法が数多く存在している。従って、新しい株式がTOPIXに加わると、投資信託の運用会社などが自動的に一定量を購入するため、株価を押し上げる。また、一部指定を受けるために、企業が株主の優遇策を打ち出すことも多く、これも株価を押し上げる要素となる。こうしたことから、一部指定を受けそうな株式を探し出し、一足先に購入して値上がり益を狙う投資家もいるのである。
 一軍昇格を果たした清宮選手は、初打席で痛烈な二塁打を放ち期待に応えた。東証でも一部指定を受ける企業が毎月のように誕生している。清宮選手のような初々しさと実力を兼ね備えた一部指定の企業を探すのも株式投資の楽しみの一つと言えるだろう。

著者情報

エコノミスト

玉手義朗

たまて よしろう

1958年生まれ。筑波大学卒。東京銀行、マニュファクチュラース・ハノーバー銀行などで、外国為替取引に携わる。その後、テレビ局で経済部デスクなどを経て、現在はフリー。著書に『円相場の内幕』(1995年、集英社)、『経済入門』(共著、2004年、ダイヤモンド社)がある。

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