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経済万華鏡

PIGS再び

浜矩子(同志社大学大学院ビジネス研究科教授)

 ギリシャとポルトガルがまたもや世間を騒がせています。いずれも財政危機が極限状態に達して、EUやIMF(国際通貨基金)からの支援無しには窮地を乗り切れない状況に陥っています。
 ギリシャは既に前科者です。昨年(2010年)、EUとIMFから総額1110億ユーロの支援を受けました。ポルトガルに対しては、11年5月5日に780億ユーロのEUとIMFの融資パッケージがまとまりました。

 皆さんはPIGSというはやり言葉をご記憶でしょう。ポルトガル・アイルランド・ギリシャ・スペインの頭文字を連ねてPIGSです。この豚さん国家群に共通する問題が、財政破綻問題であることも、ご承知の通りです。
 国が借金を返せない。このままでは、債務不履行で豚箱入りになるかもしれない。だから豚さん国家群だというわけでもないでしょうが、いずれにせよ、何とも不面目な呼び名をつけられた四人組です。
 なぜ、こういうことになるのか。豚さんたちはなぜ、一様に財政難に陥っているのか。かれらの共通の弱点はどこにあるのでしょうか。この辺を改めて考えてみたいと思います。

 彼らの共通点は、いずれもカトリック国だというところになる。そんな見方をされる向きもあります(ギリシャは東方正教の国なのですが)。品行方正なプロテスタント諸国は、財政についても規律正しい。節度に欠けるカトリック諸国は財政規律についてもだらしない。そのような見方です。
 面白いといえば面白いですが、これはやっぱりこじつけでしょう。筆者も実をいえばカトリック信者で、自分のだらしなさは良く承知しています。原稿の締め切りが守れないのも、宗教上の理由か?…などとフト思ってしまいますが、自らの不徳のいたすところを神様のせいにしてはいけません。
 それはともかく、PIGS諸国には明らかな共通点が一つあります。それは、いずれもEUの中の新興諸国だということです。ある時期までは、イギリス、ドイツ、フランスなどのEU内成熟諸国の低迷を尻目に、いずれもめざましい成長力を発揮して注目を浴びていたのです。その意味で、PIGSはすなわちヨーロッパ版BRICSだといってもいいでしょう。

 ただし、BRICSとの大きな違いが一つあります。BRICSはいわば自力で新興勢力としての足場を固めた国々です。それに対して、PIGSは極めて他力本願的な形でEU内での新興組としての位置づけを射止めることになりました。
 そして、彼らの他力本願の対象となったのが、ほかならぬユーロだったのです。ユーロという通貨を手に入れたことで、彼らは突如としてとても借金がしやすくなったのです。それこそ、プロテスタント的謹厳実直の塊であるドイツと同じ通貨建てで借金が出来る。その七光りのおかげで、彼らはどんどん借金を重ねてインフラ整備や国家基盤の形成に励むようになりました。そして、そうこうするうちに、気がつけば借金の山がアルプス的にそびえ立つ状況になってしまった。これが、簡単に借金が出来ることの恐ろしさです。
 ちなみにいえば、この点は日本ももって他山の石とすべきところです。日本の場合には、国の借金の相手があらかた日本人です。身内は借金を返せとはいわないだろう。その甘えが日本の借金の山をここまで高くして来た面があるでしょう。日本にPIGSを笑う資格はありません。

 それはそれとして、こうしてみれば、PIGSの借金大国化は、身から出たさびではありますが、ユーロという通貨のなせる業である面も否定出来ません。その意味で、彼らは無理な通貨統合の犠牲者であるともいえるわけです。
 彼らに背伸びをさせて、それでも適格性に欠けることを百も承知でユーロ圏入りを容認した。その責任は他のユーロ圏諸国も免れるわけにはいきません。節度無き者たちの仲間入りを受け入れた方の節度無さも問題です。この問題と、ヨーロッパはどう向き合っていくのか。その意味で、PIGS問題はその本質的なところでEU問題でもあるということです。

著者情報

同志社大学大学院ビジネス研究科教授

浜矩子

はま のりこ

1952年生まれ。一橋大学経済学部卒。三菱総合研究所ロンドン駐在員事務所長等を経て、現在に至る。『グローバル恐慌』『スラム化する日本経済』『ユニクロ型デフレと国家破産』『浜矩子の「新しい経済学」~グローバル市民主義の薦め~』など多数の著書がある。

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