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経済万華鏡

消費増税前夜、駆け込みの地鳴りが怖い

浜矩子(同志社大学大学院ビジネス研究科教授)

 消費税引き上げに向かって、いよいよ、カウントダウンのタイミングに入ってきましたね。「その日」が近づけば近づくほど、様々な場で駆け込み需要がすさまじい勢いで盛り上がっているようです。

 その様子を、部品メーカーに勤める親戚から聞きました。製造ラインは連日フル稼働状態。作っても作っても、注文に追いつかないそうです。ひたすら、悲鳴の日々が続いていると言っていました。
 悲鳴は二種類あります。一つが、当面のあまりの忙しさゆえの悲鳴です。これには、きっと、久々の活況がもたらしている若干の歓喜の響きも混じっているのでしょう。
 ですが、第二の悲鳴は、嘆きの悲鳴です。消費増税前の駆け込み需要が一巡してしまえば、後はぴったり発注が止まってしまう。それが目に見えているための嘆きです。現に、発注主側から、明確にそう宣言されているというのです。今年(2014年)5月以降については、当分、新規発注を期待しないでくださいね。そのように通告されているのです。

 必死で駆け込みまくっているのは、なにも、企業ばかりではありません。消費者もそうです。まず、自動車や宝石などの高額商品について、買い急ぎが相当盛り上がっています。これは分かります。値が張る商品であればあるほど、消費税の3%アップがもたらす影響は大きいわけですから、どうせ買うなら今のうち、という心境が広がるのは当然でしょう。
 それはそれとして、驚くのが生活必需品の買いだめ・買い急ぎです。調理用の油とか、みそ・しょうゆ・塩・砂糖の類が、すごい勢いで売れているのです。災害発生時でもないのに、生活物資の猛烈なる買いだめが進んでいるのです。
 もっとも、思えば、企業にとっても家計にとっても、消費増税は一種の災害なのかもしれませんね。日々の生活が脅かされる。その恐れを強く抱かざるを得ないのですから、その意味で、これは確かに災害だといえるでしょう。政策災害です。

 注目されるのは、この「災害感」の強さ・大きさです。危機意識が強いからこそ、空前の駆け込み大ブームが起きているわけです。
 むろん、増税時の駆け込み行動は、今回に固有の現象ではありません。必ず起こる反応です。ただ、今回は、そのスケールがいかにも特大です。これには、政府もかなりうろたえているだろうと思います。
 要するに、それだけ、企業も家計も日常が厳しいということです。消費増税を、おおらかに受け止めるようなゆとりが、全くないということです。それが日本経済の実態なのです、そのことを、この駆け込みのすさまじさが実によく我々に示してくれています。

 4月以降、全く経済活動が途絶えてしまう。それが心配になるほどに、駆け込む企業と人々の足音が強烈です。この地鳴り、なかなか怖いですね。それが途絶えた時、何が起こるでしょうか。政策と政治は、その時、どう対応するつもりなのでしょう。

著者情報

同志社大学大学院ビジネス研究科教授

浜矩子

はま のりこ

1952年生まれ。一橋大学経済学部卒。三菱総合研究所ロンドン駐在員事務所長等を経て、現在に至る。『グローバル恐慌』『スラム化する日本経済』『ユニクロ型デフレと国家破産』『浜矩子の「新しい経済学」~グローバル市民主義の薦め~』など多数の著書がある。

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