imidas - 情報・知識&オピニオン

連載

経済万華鏡

古典にみる消費税の正しいかけ方

浜矩子(同志社大学大学院ビジネス研究科教授)

 突然の国会解散、皆さんどう思われますか? 安倍さんは「アベノミクス解散」だとおっしゃっていますね。私は「ヒステリー解散」だと思います。何もかもが行き詰まってきて、「もう、僕ちゃんイヤ!」とガラガラポンしちゃった。そんな感じがします。

 それはそれとして、今回の解散に向けて消費税を巡る議論がかまびすしかったですね。消費税を上げるのか。上げないのか。すぐに上げるのか。もう少し待ってから上げるのか。消費税談義は、尽きるところがありません。
 ちなみに、経済学の生みの親、イギリスの経済学者アダム・スミス(1723~1790)が、その大著『国富論』の中で次のように言っています。「消費への課税は国家による苦肉の策だ。」なぜかといえば、国々は、どうすれば所得格差に見合って、公平に国民に課税できるかが分からない。そこで、苦し紛れに、国民の消費に課税することを考えた。そうスミス先生はおっしゃっているのです。

『国富論』が発行されたのは1776年、18世紀のことです。当時の人々は、よほど、所得隠しが上手だったのでしょうね。
 大先生によれば、国々の政府は、人々の所得水準をどうしてもうまく把握できない。そこで、次のように考えたというのです。人々の消費パターンは、その所得の大小を反映しているに違いない。だから、彼らが買う物に税金をかけておけば、間接的に、所得水準に対応した課税ができる。この発想に基づいて、消費財への課税が発明された。これが、スミス先生の解釈なのです。

 大先生のこの解釈には、とても重要な認識が込められています。それは要するに、消費に課税するなら、金持ちが買いそうな高額商品には高い税金をかけ、低所得者の生活必需品には低い税金を適用するということです。そうでなければ、所得課税への代替手段としての消費課税、という考え方は成り立ちませんものね。
 今日の租税制度の設計者たちには、経済学の生みの親のこのお言葉をしっかり押しいただいた上で、今後の消費税論議に臨んでもらいたいと思います。

 スミス先生は、次のようにもおっしゃっていますよ。
「生活必需品の消費に課税するなら、それに見合った賃金上昇を確保する必要がある。……さもなくば、低賃金労働者は家庭を維持することができなくなり、結果的に労働供給が不足することになりかねない。」何たる明快さでしょう。何たる合理性でしょう。これ以上、言うべきことは何もありませんね。
 かくして、政策論議に携わる方々は、何はともあれ古典をちゃんと読む必要があります。消費税を高くしていくなら、贅沢グッズと生活グッズでは税率をきちんと変える。消費課税を強化するなら、その前に働く人々の賃金をきちんと確保しておけ。答えは既に出ているのです。

著者情報

同志社大学大学院ビジネス研究科教授

浜矩子

はま のりこ

1952年生まれ。一橋大学経済学部卒。三菱総合研究所ロンドン駐在員事務所長等を経て、現在に至る。『グローバル恐慌』『スラム化する日本経済』『ユニクロ型デフレと国家破産』『浜矩子の「新しい経済学」~グローバル市民主義の薦め~』など多数の著書がある。

関連記事

新着記事

imidasの更新情報をお届けします。