imidas - 情報・知識&オピニオン

連載

“普通の日本人”のあいまいな不安 第6回 外国人叩きで「連帯」する人たち ~勝てないリベラル、ゆがむ自民党

――慶應義塾大学総合政策学部、小熊英二さんに聞く

雨宮処凛(作家、活動家)

 ゼノフォビア、外国人ヘイト、レイシズム――。今、この国に蔓延はびこっているものにはいろいろな呼び名がついている。それについて、小熊さんは「弱いものいじめ」と口にした。
「外国人比率の高い国では、外国人とのコンフリクト(衝突)が起きるとそれ自体が治安の問題に直結したり、労働政策に直結します。しかし、日本は少なくともそういう国ではない。それでもなぜ外国人問題がシンボリックな問題になるのかと言えば、結局は弱いものいじめの問題だからです。弱いものをいじめて、ある種、政治的に利用する。それに対して反発を感じる人が少なくないのは、その行為自体が醜いからでしょう」
 そう、私たちはずっと、醜悪ないじめを見せられているのだ。そしていじめは時に、人の命を奪う。
 小熊さんに取材した翌月、アフリカ出身者の集会に参加した。民主化運動に参加したことで身の危険を感じコンゴから逃げてきた女性は、集会で以下のように語った。
「毎日、ネットの排外主義がひどくなっています。私はインターネットの外国人への憎しみが直接の暴力になるのが怖いです。私のパートナーは、南アフリカから来たコンゴ人です。南アフリカでは、レイシズムが直接の暴力です。私のパートナーの両親は、レイシズムの暴力で殺されました。子どもに日本で同じ経験をしてほしくないです」
 レイシズムの暴力が近くにあった人が、今、日本でそれが直接の暴力に発展しないかを懸念している。
 しかし、すでに直接の暴力は各地で起きている。北海道・江別でパキスタン人が経営する中古車店にロケット花火が打ち込まれ、埼玉県川口で、クルド人の男児が男に押し倒されるなどしている。
 外国人を苦しめるのは、目に見える暴力だけではない。
 在留資格の手続き費用は突然20倍になり、経営・管理ビザの要件も厳格化され、資本金が6倍に引き上げられるなど突然の制度変更に振り回されている。それだけでなく、8月、外国人の永住許可要件を厳しくするガイドライン案に「日本人世帯の平均を上回る年収水準」が盛り込まれた。外国人に対する一方的な不利益変更は、いじめや嫌がらせといった言葉を彷彿とさせる。
 しかし、多くの「日本人」が外国人に向ける視線は、決して優しいとは言い難い。
 そんな中で7月、一人のクルド人の命が失われた。
 自損の交通事故を起こし、旅券不携帯で逮捕され、勾留中だったクルド人俳優――『みんな、おしゃべり!』に出演――ムラット・チチェックさんが亡くなったのだ。
 ムラットさんは死亡する数日前から腹痛を訴え、一度は医療機関で検査をしていたものの留置場に戻されていた。しかし、痛みから再び受診することを求めていたものの対応されずに、死亡。死因は腹膜炎だった。
 幾度も受診を訴えていたのに、無視された声。ウィシュマさんのことを思い出すまでもなく、この国では、やはり軽く扱われている命がある。
参考文献
「観光客と留学生 『安くておいしい国』の限界」(朝日新聞、2018年5月31日付)
松谷満『「右派市民」と日本政治 愛国・排外・反リベラルの論理』(朝日新書、2026年)
田崎史郎『安倍官邸の正体』(講談社新書、2014年)
マーシャル・マクルーハン著、 森常治訳『グーテンベルクの銀河系 活字人間の形成』(みすず書房、1986年)
「オランダの選挙歴戦を制した政治戦略家が語る『ポピュリズムの物語に対抗する究極の処方箋とは何か?』(Forbes Japan、2026年6月29日付)
 

著者情報

作家、活動家

雨宮処凛

あまみや かりん

1975年、北海道生まれ。反貧困ネットワーク世話人。バンギャ、フリーター、右翼活動家などを経て2000年、自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版/ちくま文庫)でデビュー。2006年からは貧困問題に取り組み、『生きさせろ! 難民化する若者たち』(2007年、太田出版/ちくま文庫)は日本ジャーナリスト会議のJCJ賞を受賞。著書に『学校では教えてくれない生活保護』(‎河出書房新社、2023年)、『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』(光文社新書、2024年)など多数。

関連記事

新着記事

imidasの最新記事はこちら!