英語スピーキングテストに「音漏れ」証言 〜どうなる日本の公教育と民主主義?
大内裕和(武蔵大学教授)
要望書の回答期限は23年2月8日でしたが、この記事が公開される2月28日になっても回答はありません。当事者である皆さんの疑問や批判の声をよそに、都立高校入試は終了し合格発表の段階になってしまった状況です。
このままでは「音声は聞こえても、発言内容を聞き分けることはできず、解答に影響を与えることはなかった」という都教委側の主張が、何ら根拠も示されることなく通り、今後もESAT-Jが都立高入試に採用され続けることとなります。
「入試改革を考える会」「中止を求める会」「保護者の会」などの市民団体は、2月に入ってからもESAT-Jの都立高入試への導入中止を求めて活動を続けています。中学3年生や保護者ら当事者の声に加えて、複数の市民団体からこれだけ長期にわたって、批判の声が上がり続ける入試制度というのは、私もあまり耳にしたことがありません。
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東京都の教育行政が、当事者の声や市民団体の声に耳を傾けない姿勢は、ESAT-Jが民間委託されたことと深く関わっています。都立高入試のスピーキングテストをなぜ民間委託したのかとのマスコミの質問に対して、浜教育長は次のように答えています。
〈これだけの規模の試験をやるマンパワーがないからです。先生の負担を考えると、自前でやるのは現実的ではありません。個人情報を扱う業務を民間事業者に委託するのは、一般的なこと。これまで他の仕事も民間に任せてきました(後略)〉(朝日新聞「民間業者に委託『大丈夫』 都立高入試の英語スピーキングテスト 都教育庁に聞く/東京都」、2022年9月3日)
東京都の教育行政のトップが、都立高入試の一部を民間委託する第一の理由として「公教育機関の人員不足」を挙げています。浜教育長の発言には、「公教育の民営化(=私企業化)」に対する疑問や躊躇といったものは全く感じられず、それが都教委の認識であるならブレーキがかかることもないでしょう。
公教育の民営化は、国際的に見ても圧倒的に少ない日本の公教育予算が、営利を目的とした一般企業にも流れ込むことを意味します。このまま民営化が進むと、行政側は主権者である市民・都民よりも事業者を優先するようになるかもしれません。そうなれば教育の現場に充てられる予算は一層少なくなり、公教育の解体と機能不全が深刻化することでしょう。
今まさに都立高入試へのESAT-J導入は、中学3年生や保護者ら当事者の声や市民・都民の声に向き合うことなく、事業者を優先して進められようとしています。それこそ主権者を無視する暴挙であり、民主主義の破壊につながると私は考えます。