「防災教育」の課題と可能性とは 〜東日本大震災の被災地で若者たちと学んだこと
大内裕和(武蔵大学教授)
高度産業化社会を実現した私たち人類は、一定の豊かさを実現すると同時に、温暖化をはじめとする気候変動を引き起こし、それが地球環境に異変をもたらしていることは、さまざまな事象から明らかになっています。とりわけ20世紀後半以降に、急成長することで高度産業化社会を実現した先行世代は、現在の若者たちに「災害」や「生存の危機」と常に隣り合わせの過酷な条件を課してしまったと言えるでしょう。今夏の暑さは「地球温暖化」ではなく「地球沸騰化」と呼ばれましたが、温暖化による地球の異変や自分たちの「生存の危機」を多くの人が感じざるを得なくなる状況が生み出されています。
学生たちがフィールドワークで見せた表情やそこで発せられた言葉は、災害の恐ろしさと、それが自分自身にも襲いかかる危険性があること、そしてその危険性は明らかに日々高まっていることを彼らが認識していることを示していました。

児童74名、教員10名が亡くなった石巻市震災遺構大川小学校(石巻市)
私の防災教育の実践は始まったばかりです。私自身も「生存の危機」に直面する当事者の一人として、また若者の生存にとって「過酷な条件」を課してしまった先行世代の一人として、防災教育の課題と可能性をこれからも考えていきたいと思います。
東日本大震災の被災地におけるフィールドワークは3日間の短い期間でしたが、人が生きることの意味、自然との向き合い方、防災教育の意義、教育の困難と可能性など、多くのことを考えるきっかけを与えてくれました。ここで与えられた課題を、学生たちとともにこれからも考えていきたいと思います。