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連載

トランプと女性蔑視と40男

雨宮処凛(作家、活動家)

 この文章を読んで、思った。先に書いた二人の男性の嫌なエピソードって、彼らの「逸脱」だったのでは? 女にひどいことをできる俺、女に点数つける俺、という「逸脱」でショボい「男らしさ」をアピールしていたのでは?
 が、本書は、中年の逸脱に対して手厳しい。
「40男の逸脱自慢は恥ずかしいだけなので、なるべく早く止めた方がいい」
 そして著者は読者に、気持ち悪がられるおじさんにならないよう、呼びかける。
「女性からは求められず、同性から見てもおぞましい、しかし、本人は自信満々の悲しいモンスター。もはや彼らに通じる言葉はないのだろう。そうであるならば、僕らの世代で終わりにしよう。これ以上、怪物を増やしてはいけない」
 本書によると、家庭科が男女共修になったのが中学校で1993年、高校で94年。
 私の世代はギリギリ男女別だった。女子が家庭科で料理や裁縫などをしている時に、男子は「技術」の授業を受け、何か作ったりしていた。
 しかし、もう時代は違うのだ。私たちより下の世代の男性の意識はどんどん変わっている。6歳下の私の弟などはびっくりするほどのイクメンで、大変そうだけど子育てを楽しんでいることが伝わってくる。弟夫婦に子どもが生まれるまで、地元に帰れば弟と深夜まで飲むことが楽しみだった。が、今は完全に子ども優先。18時には子どもをお風呂に入れるために帰宅する。

 そういうパパになってくれたことに、安心する。弟がもし、「今日は姉ちゃんと飲むから全部やっといて」と妻にすべてを押し付けたら、私は怒るだろう。その姿を見ていると、すべての男性がこうだったらいいのにな、といつも思う。いやそれよりも、子育てってこんなに楽しいことなんだな、と弟夫婦を見ていると思うのだ。
 だからこそ、同世代とそれより上の世代の男性たちの意識改革を望みたい。そしてそれは、労働現場でこそ必要だ。現在の管理職であり、「子育ては女がやるもの」という意識が根強い50代、60代の意識が変われば、男性も育休が取りやすくなる。男性上司の意識が変わることで、女性たちが生きやすくなる。「おじさんたちの意識改革」こそが、この国のために今、もっとも必要なことだと思うのだ。
 が、今、若干不安なことは「トランプ大統領」の誕生と、それによって作られる女性蔑視の微妙な空気が、そんな流れに冷や水を浴びせることにならないかということだ。
 大統領選が終わって数日後、トランプ氏は政権の要職に起用する人物を発表した。そのうちの一人、スティーブン・バノン氏は、最右派系ニュースサイト「ブライトバート・ニュース」の元会長。同サイトでは、「避妊は女の魅力を欠けさせ、正気を失わせる」などという、「お前こそ正気か?」と言いたくなるような女性蔑視の記事が掲載され、物議を醸したことがあるという。
 ……不安だ。なんかトランプ氏って、あのギラギラした感じとか、妻とか家族のヴィジュアルイメージとか、トランプタワーのセンスとか、すべてが80年代っぽいし。
 時代が逆戻りしないことを、心から祈っている。

次回は2017月1月5日(木)の予定です。

著者情報

作家、活動家

雨宮処凛

あまみや かりん

1975年、北海道生まれ。作家、活動家。反貧困ネットワーク世話人。バンギャル、右翼活動家を経て、2000年に自伝的エッセー『生き地獄天国』でデビュー。自身の経験から、若者の生きづらさについて著作を発表する傍ら、イラクや北朝鮮へ渡航を重ねる。その後、格差や貧困問題について取材、執筆、運動を続ける。『生きさせろ! 難民化する若者たち』でJCJ賞受賞。著書に『一億総貧困時代』『「女子」という呪い』など多数。

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