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今、困難を抱える若者への住まいの支援が苦境に立たされている

第70回

大内裕和(武蔵大学教授)

 自分の部屋で一人暮らしを始めてからも、孤独感との戦いや家賃の支払いなどの苦労はあったそうです。そうした困難さえも周囲の人々の支えと自身のバイタリティーで乗り越えてきた様子が語られ、若い女性が直面した困窮と住居問題の事例としてとても興味深い報告でした。

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 以上に紹介した4つの報告で、現代の若者には「ハウジングプア」=「住まいの貧困」が確実に大問題となっていることがあらためて認識できました。戦後日本の生活保障は、就労によって自立する「就労主義」と、困った時には家族が手を貸す「家族主義」で支えられてきました。しかし、就労主義や家族主義では生活を保障しきれなくなっている現状が、ハウジングプアと「若者の自立の困難」という形で具体的にあらわれてきています。

「子どもの貧困」が社会問題となる中で、不登校支援、子ども食堂、子どもの居場所づくりや学習支援、そして高校教育の無償化など「18歳以下」に対する支援は近年、一定程度整備されてきました。しかし、その年齢を超える20代前後——主に19~30歳程度の若者が困った時に頼れる制度は圧倒的に不足しています。

 児童養護施設を出て保育士資格を取ることを目指した山本氏は、親からの援助を得られなかったために、専門学校の学費と生活費の両方を自分の力だけで何とかしなければならなくなりました。このような困難は、成人したての若者にとっては「過大な負担」といえるでしょう。背負った負担に耐えきれず、夢や目標をあきらめてしまう若者も少なくないはずです。

 岡部氏の報告からも分かるように、民間の若者支援団体が居住支援に取り組むようになったのは、公的な支援制度のはざまに置かれて苦しんでいる20代前後の人が数多く存在しており、支援の必要性が極めて高くなっているからに他なりません。そうしたことからも若者支援団体の活動は貴重であり、大きな役割を果たしているといえるでしょう。

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「住宅会議2025サマーセミナー」は、研究者、支援者、当事者それぞれの報告から、困難を抱えている若者の実態と居住支援の重要性を明らかにした点で、とても有意義な内容でした。

 若者支援団体の居住支援の取り組みの重要性は明らかですが、岡部氏の調査結果にあったように「入居希望者の増加に対する受け入れ体制の不足」という課題を抱えています。そして支援団体が少ないリソースの中で、いかに苦心して若者支援に取り組んでいるかは、実際に支援現場に立つ久保氏の報告からもよく伝わってきました。

 ここから見えてくる課題は「居住保障なき居住支援」という日本社会の厳しい現実です。川田教授の報告は、まさにこの点を示唆する内容でした。居住支援の取り組みをより一層活かし、「若者の自立」を十分にサポートするためには「居住保障」の視点が欠かせません。「社会住宅・非営利住宅」など低家賃住宅ストックの拡充、そして公的な住宅手当(家賃補助)制度の拡充といった「居住保障」政策の推進(具体的には「若者の『離家』」・「若者の自立」・「学び」・「子育て」を支援するための住宅費負担軽減に関する提言」)が、若者支援に強く求められているといえるでしょう。

著者情報

武蔵大学教授

大内裕和

おおうち ひろかず

1967年、神奈川県生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得。松山大学教授、中京大学教授を経て2022年度より現職。「入試改革を考える会」代表。「奨学金問題対策全国会議」共同代表。著書に「ブラックバイトに騙されるな」(集英社)、「教育・権力・社会」(青土社)、「ブラック化する教育 2014-2018」(青土社)などがある。

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