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連載

「キャラ」という地獄

雨宮処凛(作家、活動家)

「怒れない」背景には、自己肯定感の低さもある。自分なんかはこの程度のことで怒ってはいけないのだ、という縛りは、今に始まったことではなく子どもの頃から私に染み付いている。その上で「自分に期待されているキャラ」を演じなければ、という余計な義務感が加わってしまうと、「怒る」など異次元の話だ。そうして怒ったところで「冗談の通じない奴」扱いされてバカにされて終わる。そんなことを経験しているからこそ、怒れない。

 このことについて、何が「正解」だったのか、今もずっと考えている。ちなみにその編集者とは、今も親しく付き合っている。このことを話題にしたことはない。だけど「対等」だと思っていても、あの時、私が誤魔化すことしかできなかったのは「仕事をもらっている」という立場があったからなんだよな、と思う。そんなこと、普段はまったく気にしていない。逆に私の方が「悪ノリ」でいろいろと辛辣なことを言っているくらいだ。だけどあの時、私は「断れない」と思い込んでいた。そういう時、それまでまったく見えなかった力関係がはっきりする。きっと相手はその力の差に気付いていない。すべてのハラスメントの芽は、ここにある。だからこそ、自省も含めて意識的でいなくては、と思う。

 

 活動家で、怖いもの知らずの行動派キャラ。それは私の一部分ではあるけれど、当然すべてではない。素の自分は、むしろ正反対だ。しかし、男女問わず多くの人が知らず知らずに自分に投影されたキャラを演じ、いつの間にかそれに縛られ、そのことで苦しんだり、時には身に危険が及ぶような事態になっていると思う。それでも、「そんなキャラを作ったお前が悪い」と自業自得を突きつけられる「キャラ地獄」。正当な怒りの表明の仕方と同時に、すべての人が「自分のキャラ」との付き合い方を考えるべきなのかもしれない、と改めて思ったのだった。

 

次回は9月5日(水)の予定です。

著者情報

作家、活動家

雨宮処凛

あまみや かりん

1975年、北海道生まれ。作家、活動家。反貧困ネットワーク世話人。バンギャル、右翼活動家を経て、2000年に自伝的エッセー『生き地獄天国』でデビュー。自身の経験から、若者の生きづらさについて著作を発表する傍ら、イラクや北朝鮮へ渡航を重ねる。その後、格差や貧困問題について取材、執筆、運動を続ける。『生きさせろ! 難民化する若者たち』でJCJ賞受賞。著書に『一億総貧困時代』『「女子」という呪い』など多数。

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