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現代の若者を苦しめる「住まいの貧困」 〜2つの調査結果から読み解く住宅事情

第81回

大内裕和(武蔵大学教授)

 特に私が注目した数字は、14年調査と26年調査にほぼ共通する質問に対する回答結果です。14年調査では「現在の暮らし向き」、26年調査では「現在の暮らしの状況」をたずねています。14年調査の結果は「苦しい」29.1%、「やや苦しい」28.7%を合わせると、苦しさを感じている人は57.8%となります。これに対して26年調査の結果は「大変苦しい」15.4%、「やや苦しい」35.8%で苦しさを感じている人は51.2%です。12年を隔てても両者の数字が近接していることに着目すべきです。「若者の貧困」とは一部の低所得の若者に限られた問題ではなく、若者の半数を追い込んでいる、巨大な社会問題であることを私たちは認識すべきです。

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 14年調査は首都圏と関西圏の「若年・未婚・低所得層」に対象を絞ることで、都市部に住む低所得の若者にとっての「住宅問題の深刻さ」を明らかにできました。これに対して26年調査の結果は、「ハウジングプア=住まいの貧困」が特定地域の低所得層の若者だけではなく、全国の若者に広がっていることを示しています。

 一部の高所得者を除き、若者の過半数が生活を「苦しい」と感じ、収入の4分の1以上は住宅費で消えるのですから、若者への住宅支援の重要性は明らかです。近年、減税や社会保険料の削減などで現役世代の「手取りを増やす」という議論が盛んとなっていますが、もっと住宅費負担の重さに目を向けるべきではないでしょうか? 手取りを増やすことへの議論が短期間であれほど大きな支持を得たこと自体、現役世代が住宅費の高さに苦しんでいることの影響なのではないか、と問い直す必要があると思います。

 戦後の高度経済成長期、終身雇用と年功序列型賃金を特徴とする日本型雇用が普及する中で、「持ち家」重視の住宅政策が行われ、住宅の「市場化」や「商品化」が進みました。しかし日本型雇用の急速な縮小が進み、多数の若者は「離家」が困難となり、親同居を強いられ、親から独立した場合には高い住宅費に苦しんでいます。

 苦しむ若者を救うには、「住まいは人権」という考え方をもとに、住宅の「市場化」や「商品化」にブレーキをかけることが大切です。家賃補助制度の拡充による家賃の引き下げ、若者向け低家賃アパートや公営住宅の整備、空き家活用などによって住宅費の私費負担を減らしていくことができれば、若者への大きな支援となるでしょう。

著者情報

武蔵大学教授

大内裕和

おおうち ひろかず

1967年、神奈川県生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得。松山大学教授、中京大学教授を経て2022年度より現職。「入試改革を考える会」代表。「奨学金問題対策全国会議」共同代表。著書に「ブラックバイトに騙されるな」(集英社)、「教育・権力・社会」(青土社)、「ブラック化する教育 2014-2018」(青土社)などがある。

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