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もし、自分がジャニオタだったら 〜性加害問題と怒涛の「キャンセル」から考える

雨宮処凛(作家、活動家)

 それに対して、私が10代の時(90年代初頭)に頭角を現してきたX JAPAN率いるヴィジュアル系は、なんのコネもツテもなくお金もない中、YOSHIKIをはじめとするメンバーの「気合いと根性」だけを原動力に発電できそうなほどのエネルギーを発散し、周囲を巻き込みつつムーブメントを作っていた。そこに「大人」は不在で、少ない資金ですべてを自分たちでプロデュースし、新たな道を切り開いていた。何より、自分たちで曲を作っているということが、『ザ・ベストテン』(1978年1月19日から89年9月28日までTBS系列で、毎週木曜日に生放送されていた音楽番組)みたいな世界しか知らなかった私には衝撃だった。お仕着せの衣装を着せられて唄わされているのではなく、自分たちで自分たちの世界を表現し、音楽業界に殴り込みをかけようとする何者でもない若者たち。もはや「百姓一揆」や「下克上」のノリだが、それがよかった。クラスの一軍女子しかジャニーズ好きを公言できない世界(私の学校の教室限定の話です)にあって、下克上にはカースト底辺の自分こそが乗る資格がある気がしたのだ。

 さて、このように、田舎の中学生にもわかるくらいジャニーズは圧倒的な力を持っていたわけだが、今回明らかになったのは、それこそが最悪の性加害が続く下地となったということだ。

 なぜ、たった1人の人間があれだけの加害を繰り返せたのか。それを問うほどに、「なぜ、たった1人の人間にあれだけの権力が備わっていたのか」という問いに辿り着く。

 独裁国家の独裁者に匹敵するほどの力を持つ者が、日本の芸能界、メディアに圧倒的な影響力を持っていたという事実。権力は必ず腐敗するというが、あれだけの巨大エンタメ産業を作った張本人が子どもへの加害者だった場合、ここまで放置され、ここまで被害が拡大してしまうのである。そして幾度もこの疑惑は報じられながら、令和の時代まで「芸能界という特殊な世界の話」と放置され続けてきた。この弊害はあまりにも大きい。加害者にとって放置は「容認」と捉えられただろうし、被害者たちは幾度も疑惑が持ち上がりながらもみ消され、忘れられていくことに幾度も絶望させられただろう。

 そうして加害者が故人となった今、タレントたちがCMや番組から消えているというわけである。まるで、使い捨ての駒のように。そんなものを見ていると、タレントの立場の弱さにも愕然とする。

 もちろん、企業の判断は当然と言えば当然だろう。

 そう思う一方で、何社かが起用見送りを発表した途端、雪崩のように「我も我も」とキャンセルが続くという「横並び」が、「ジャパン……」とつぶやきたくなるほど日本的でもある。

 その上、「人権」とか言ってるけど、ずーっと前から噂レベルであった話に関しては横並びで検証もせずスルーしてたわけだよね? とも思う。

 さて、性加害はジャニーズだけの問題ではない。「日本芸能従事者協会」が2023年の2〜5月に実施した「フリーランス芸能従事者の労災と安全衛生に関するアンケート」によると、「仕事中にハラスメントを受けたことがありますか」という質問に、61.2%が「はい」と回答したという。昨年の同アンケートには、「仕事が欲しいなら従え、とレイプされた」などの深刻な事例も記されていたそうだ。

 ジャニーズ、そして芸能界は、これから膿を出す長い長い時間が始まる。

 それをしっかり見ていきたいと思っている。

著者情報

作家、活動家

雨宮処凛

あまみや かりん

1975年、北海道生まれ。作家、活動家。反貧困ネットワーク世話人。バンギャル、右翼活動家を経て、2000年に自伝的エッセー『生き地獄天国』でデビュー。自身の経験から、若者の生きづらさについて著作を発表する傍ら、イラクや北朝鮮へ渡航を重ねる。その後、格差や貧困問題について取材、執筆、運動を続ける。『生きさせろ! 難民化する若者たち』でJCJ賞受賞。著書に『一億総貧困時代』『「女子」という呪い』など多数。

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