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変革への闘い

「社会的連帯経済」への誘い4「ワーカーズ・コレクティブ とまと」自分を生かせる場を地域に協同で創る女性たち

工藤律子(ジャーナリスト)

 府中市に拠点を置く「ぷろぼの工房」は、市民団体などの計画づくりや課題に関するワークショップや講座などの企画、印刷物のデザイン・編集から、「親子ひろば」のような居場所づくり、地域のほかの団体と実施しているフードパントリー(企業や農家、個人から寄付される食料を生活困窮者らに無料で直接配布する活動)まで、多種多様な活動を地域に密着して行っている。組合員13人(〈とまと〉の統合で現在17人)のワーカーズ・コレクティブだ。
 代表の藤木千草さん(64)は、「東京ワーカーズ・コレクティブ協同組合」理事長や「ワーカーズ・コレクティブ ネットワーク ジャパン」代表を務めたこともある。自分たちが企画したイベントでの料理の準備を委託するなど、以前から付き合いのある遁所さんたちから「統合」の相談を受けた藤木さんは、こう考えた。
「食の安全を守る生活クラブの運動から生まれたワーカーズ・コレクティブにとって、食に関わるワーカーズはとても大切なもの。それなのに、これまでいくつかが解散するのをみてきた。今度こそなんとかしたい。いっそ自分たちのワーカーズの事業の一つとしてやれば、存続できるのでは? 挑戦してみよう」

〈とまと〉代表の遁所朋江さん(右)と「ぷろぼの工房」代表の藤木千草さん。ぷろぼの工房が居場所づくりに使用している「ぷろぼのサロン」の前で。撮影:篠田有史

 遁所さんたちの相談内容をぷろぼの工房に持ち帰った藤木さんは、メンバーと話し合った末に、〈とまと〉を統合することに決める。
「〈とまと〉は、企業組合としては解散し、2021年4月から、ぷろぼの工房の食部門の事業所として、活動を再開したんです」
 遁所さんは目を輝かせて、そう話す。
「ベテランメンバーも、3人がアルバイトとして残りました。企業組合を潰してぷろぼの工房さんに入れたことで、肩の力を抜いて自分たちのできる形でやっていく覚悟ができました」
 以前は価格競争を意識していたが、今は自分たちの弁当の味と質を評価し、値段に関係なく利用してくれる客を対象に、採算の合う価格での販売に徹する。「家計の延長線レベルの規模のお金を扱うようにしました」というほど、コンパクトな事業にしたおかげで、経営も黒字になったという。ぷろぼの工房が、法的な縛りの少ない一般社団法人で、依頼に応じてできる仕事を請け負いながら、地域で必要とされる活動を自ら生み出している組織であることも、新生〈とまと〉の働き方にプラスの影響を与えているようだ。

家庭と食と生きがいを守る

 新生〈とまと〉は、現在、遁所さんと渡辺さんの中堅2人と若手2人、計4人のメンバーを中心に、7人のアルバイトを加えて活動している。メンバー4人はぷろぼの工房に、一口1万円の基金(一般社団法人のため、「出資金」ではなく「基金」)二口を納入。ぷろぼの工房のメンバーとして、月曜日から金曜日までの毎日、130食前後の弁当を作り、販売する〈とまと〉の事業に携わる。ぷろぼの工房本体とは職種が大きく異なるため、日常の経理は別にしている。
「メンバーは、交代で週に3〜4日、働いています。アルバイトは週に2〜3回、入ります。それぞれの都合でシフトは調整しています」
 体力や子育て、家庭の状況などに合わせて、勤務時間を決めている。賃金は時給制だ。
 日替わり弁当のメニューは、毎月、遁所さんと渡辺さんが考える。作る弁当には、生活クラブ生協の食材を使い、ワーカーズ・コレクティブならではのこだわりをみせる。
「安心・安全の食材で、不必要な食品添加物は使わず、基本的に手作りしています。ちょっとした漬物以外は、既製品も使いません」
と、遁所さん。

来店客に対応する遁所さん(左)。「ここの弁当を食べていれば、栄養がバランスよく取れて安心」とお客さん。撮影:篠田有史

〈とまと〉の存続を果たした遁所さんは、「80歳になるまで、がんばろうかなぁ」と、笑顔を浮かべる。
「〈とまと〉は地域で必要とされている事業所だと思うので、仲間を増やすことができれば、(さらに次の世代へ)引き継いでいきたいと思っています。以前は、それが難しいと思っていましたが、最近少し考えが変わりました。家族を大切にしながら、地域ともつながれる事業をしたいと思っている人はいるんだと感じています」
 統合先のぷろぼの工房が掲げる「働くことは、生きること」というモットーは、そんな女性たちの思いを表している。代表の藤木さん自身、「何々ちゃんのお母さんとか、誰々の妻とかではなく、自分の名前で活動できる場がほしい。そう感じて、30代でワーカーズ・コレクティブを創りました」と語っているように、妻や母親として以外の生きがいや、地域での活躍の場が必要な女性は、大勢いるはずだ。それは今や、女性に限ったことでもないかもしれない。
「皆、何歳になっても自分を生かせる場が必要なんじゃないでしょうか」
と、藤木さん。〈とまと〉の創立メンバーでアルバイトとして働き続ける角田さんも、「この歳になっても、行く場所があってよかったと思います。夫が赴任しているベトナムへ行くのも、やめました」と、笑う。
「〈とまと〉の活動を通して、自分たちが子どもを育てている地域で、いい仕事ができる環境をつなげていけたら、と思います」
 遁所さんは今、心からそう思う。

 

ワーカーズ・コレクティブ とまと
設立年 : 1993年(ぷろぼの工房への統合2021年)
人数 : 組合員4人、アルバイト7人
事業内容 : 仕出し弁当製造・販売
モットー : 地域で仲間と「食」に関わるいい仕事をする

著者情報

ジャーナリスト

工藤律子

くどう りつこ

1963年大阪府生まれ。東京外国語大学地域研究研究科修士課程在籍中より、メキシコの貧困層の生活改善運動を研究するかたわら、フリーのジャーナリストとして取材活動を始める。著書に『仲間と誇りと夢と』(JULA出版局)、『ストリートチルドレン』(岩波ジュニア新書)、『マラス 暴力に支配される少年たち』(集英社、開高健ノンフィクション賞受賞)、『マフィア国家 メキシコ麻薬戦争を生き抜く人々』(岩波書店)、『ルポ 雇用なしで生きる スペイン発「もうひとつの生き方」への挑戦』(岩波書店)、『働くことの小さな革命 ルポ 日本の「社会的連帯経済」』(集英社新書)などがある。NGO「ストリートチルドレンを考える会」共同代表。

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