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連載

ヤウッカマー、怪しい日本人にハマる!

子連れ・ババ連れ帰国旅行2

鈴木亜香里(地球市民の会ミャンマー駐在員)

(構成・文/井下優子)

 ミンガラーバー! こんにちは! 中国系ミャンマー人と結婚して4年、夫と長男と3人でタウンジーという街に住んでいる鈴木亜香里です。タイトルの「ヤウッカマー」はミャンマー語で義母、姑という意味。この春、義母と長男を連れて一時帰国したときの、義母の爆裂ぶりを暴露する今回のシリーズ、なんと2回目も出国前のエピソード(笑)。義母がとんでもないものにハマってしまい……!

義母が覚えた日本語は?

 海外旅行をするとき、少しはその国の言葉を覚えて行きますよね? みなさんは、どんな言葉を覚えて行きますか? 普通、「ありがとう」「こんにちは」は必須だと思いますよね? 義母は三つの日本語を覚えました。
 最近、夫の親族は、日本熱に浮かれています。私という日本人が身内にいるから、というわけではなく、単に盛り上がってるだけ(笑)。
 その熱に浮かれて、昨年、義母の弟 が北海道旅行をしました。その土産話で「魚とアイスがおいしかった」と聞き、義母が覚えた日本語は「魚が食べたいです」「アイスが食べたいです」。これで二つ(笑)。
 しかし、さすがの義母もこれだけでは不安だったのでしょう。私とはぐれたときの対策として、「ここまで連れて行ってください」「ここに電話をしたい」という日本語のメモを準備しました。
 そして、義母が覚えた三つ目の日本語は! 「石神井(しゃくじい)公園」(笑)。
以前、日本に来た夫が覚えていて、「石神井公園という駅が近くにある」と教えたのです。こう聞けば、私の実家が石神井公園にあると思いますよね? ところが、実家の最寄り駅は「ひばりヶ丘」。中国系なので、漢字は覚えられるけど、ひらがなはチンプンカンプンなのでした。
 というわけで、日本へ来る前に義母が覚えた日本語は「魚が食べたいです」「アイスが食べたいです」「石神井公園」の三つ。しかも「石神井公園」は覚えても意味ないし!

タウンジーに怪しいお店出現!

 日本へ来る前に義母は、日本語で1から10までの数字を覚えようともしていました。が! それは日本旅行のためではありません。
 旅行前の2月半ば、義母は、夫の仕事を手伝うためと、2人目を妊娠している私の体を気使って、自分が住むヤンゴンからタウンジーにやって来ました。そのとき、親戚から「日本人がやってるお店ができたよ」と、聞きつけた義母。
「無料健康セミナー」「無料で日本語を教えます」という看板が出ているそのお店がオープンしたのは、去年の夏ごろでした。毎日、健康セミナーが開催されるほか、マッサージ機や目が良くなる機械などが置いてあり、それらも無料で使うことができます。
 タウンジーに滞在していた1カ月半、義母は毎日そこに通うほどハマってしまったのです。朝、お弁当を作ると、自分は10時半くらいに早々と昼食を済ませ、夫の店にお弁当を届けるとその店へ行き、また夫の店に戻って店番、という毎日。目的は、日本語よりも健康セミナーです。
 いやいや、このお店にハマったのは義母だけではありません。タウンジー中のヒマな高齢者が集まっているかのような盛況ぶりで、脚の悪いおじいちゃんまでが、店の前まで車で送ってもらうほどです。
 しかし、タダほど怖いものはない! 怪しいニオイがプンプンします。実際、健康セミナーや日本語教室は客寄せ手段で、健康食品やサプリメント、健康グッズを販売することで、ビジネスとして成り立っているのです。
 どんなところなのか興味もあったので、義母の健康相談について行ったところ、MAX級の怪しさでした!

橋下さん、舛添さん、名前使われてますよ!

 まず、お店のドアを開けると、若いスタッフが「いらっしゃいませ~! ミンガラ~バ~!」と、叫ぶような挨拶。帰るときも同様に「ありがとうございました~! チェーズーティンバーデーシーン!」。元気を通り越して、異様すぎ~!
 売られているグッズを見ると、日本で100円の普通のペットボトルの水が350円! サプリメントや磁気ベルトが1万円! そして10万円の布団! 高すぎ~!
 私はまだ健康グッズとは無縁の年齢なので、相場を知りません。そこで日本の通販サイトで調べたところ、有名メーカーの磁気ベルトが3000円くらいで買えると判明。そのお店の磁気ベルトは見たこともないメーカーで3倍以上! ぼりすぎ~!
 それでも売れるカラクリは、セミナーに出るとポイントカードにスタンプを押してもらい、たまったポイントに応じて割り引きしますよ~、という悪魔のささやき。つまり、セミナーに出れば出るほどお得ではあるのですが、そのセミナーで毎日のように、洗脳されているのです。たとえば「ひざが痛かったらコンドロイチンを飲め。コンドロイチン買え買え!」と。その洗脳に、高齢者たちが気づいているとは、とても思えません。
 義母が欲しがったのは、当然、10万円の布団。全力で止める私を振り返り、「日本に行ったらあるかな?」と(笑)。
 私がこのお店で見つけた怪しいの極めつけは、立派な額縁入りで並んでいた2枚の販売許可証。日本語で「健康器具販売を許可します」と書かれた下に、それぞれ、橋下徹さんと舛添要一さんの名前が……? すでに2人とも現役じゃないし(笑)。
 でも、これを読めるのは、タウンジーで私だけなんですよね。

大使館から密命が!?

 いやいや、販売許可証よりもっと怪しいのは、セミナーをやっている日本人のおじさんでした。60歳過ぎくらいで、容貌はタヌキにそっくり! 自称、いろんな国を転々としている。しかもミャンマー語ができない(笑)。やっぱ怪しすぎ~!
 だけど、セミナーは面白い! 通訳を介してですが、おじいちゃんおばあちゃんたちは大いに盛り上がっていました。さすがプロ! 義母がハマるのもわかります。
 とりあえず10万円の布団には手を出さなかった義母ですが、サプリメントを購入しました。そのときも私は「詐欺だから買うな!」と止めたのですが、夫が勧めたのです。「毎日通って、何も買わずに機械を使わせてもらうのはよくないよ」と。それじゃあ相手の思うツボなのに、完全にしてやられてます。
 しかし、お店の様子を見ていると、単純に詐欺とも言えません。
「健康器具が無料で使えるし、日本の先生が一人ひとりにアドバイスをしてくれる」と、みんな喜んでいるし、6~7人いる若いスタッフが「おじいちゃん」「おばあちゃん」と話しかけてくれるのも楽しいみたいだし。そして何よりも、お客さん同士が「これは本当にいいから、買った方がいいよ」と、商品を勧め合っているので、セールスの必要がないのです。
 今、タウンジーにいる日本人は、私と長男とそのおじさんだけなので、一度、セミナーではなく会いに行ったことがあります。しかし、どうしても怪しい感がぬぐえなかったので、日本大使館の人にちらっとおじさんの話をしました。すると「それはゆるやかに退去してもらったほうがいい」と。
 ん? 世間話の延長線で話したつもりだったのに、思った以上にオオゴトの展開になりそうで、ちょっと焦った私(笑)。しかも、「そのおじさんが飛行機に乗る日がわかったら、教えてほしい」という密命が、大使館から私に下されたのです!
その後、夫が経営している旅行代理店で、おじさんが飛行機のチケットを買ったので、009気分で大使館に知らせたのですが、特に動きなし(笑)。
 9月になれば、私の出産を手伝いに、義母がタウンジーにやって来ます。無料のマッサージ機ならいくら楽しんでもいいけど、10万円の布団に手を出さないかとハラハラする日々になりそうです。

著者情報

地球市民の会ミャンマー駐在員

鈴木亜香里

すずき あかり

1985年生まれ。東京外国語大学ビルマ語専攻卒。コンサルティング会社勤務を経て、佐賀県の認定NPO法人「地球市民の会」ミャンマー駐在員に。南シャン州のタウンジーという町に暮らし、農業支援、教育支援、地域開発、環境保護などのプロジェクトを行う。公的活動の一方で、2010年、現地で知り合った中国系ミャンマー人のイスラム教徒と結婚、自らも改宗してイスラム教徒となる。13年末、長男を出産。なお、現地では中国系イスラム教徒は「パンデー」と呼ばれ、特別なコミュニティーを形成している。

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