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首相から子どもたちへの「応援」ポエムに物申す

"ここがおかしい"

仁藤夢乃(社会活動家)

 安倍首相が子どもにあてたメッセージの冒頭で「こども食堂」という言葉を使っているが、これも子どもへの支援として市民が始めた取り組みであり、その運営はほとんどがボランティアで担われている。基金ではそうした取り組みへの助成も行っているが、子ども食堂という取り組みを政府が貧困対策として行っていて、そういう居場所を政府が作っていて、さも自分たちがやっていることであるかのように語っている。これは「ずるいなあ」と思う。
 せめて政府が家賃や人件費や食費など運営にかかる費用を確保し、子どもたちが無料でご飯を食べられたり、無料で勉強を教えてもらえる場所を中学校区ごとに一つずつ作ったりすることくらいしてから言ってほしい。
 支援者の中には「子ども食堂の取り組みが国にも認められた」と喜ぶ人や、「子どもたちに寄り添う活動を行っている私たちのような団体から首相のメッセージを届けていきたい」と、このメッセージを子どもに伝え始める動きもあるようだ。私はそれよりも、今の政府が子どもの貧困対策を重要なこととして本気で取り組んでいく姿勢があるのかにこれからも注視していきたい。そして、おかしいことがあれば指摘していくことの大切さや、自分たちの利益や建前だけでなく、困難な状況にある人への目線を持った政治家が誰なのかを考えて、選挙で選ぶことの大切さなどを中高生に伝えたい。
 私は、「子供の未来応援国民運動」について「今までと比べたらまし」「当然のこと」とは思うが、安倍首相の言動に対しては、「政府がここまでしてくれてよかった」というふうにはまだ思えない。しかし、こういう批判をしていると、支援者仲間たちから「うまくやったほうがいい」と忠告されることがある。
 私は、それまで声を上げて支援に関わってきた人たちが、政府や、何か大きい権力が関わるところから援助を受けることで、本当はよくないなと思っていることがあっても、見て見ぬふりをするようになっていくことがある。そのたびに、私は残念に感じる。私だって、声の上げ方ややり方を変えていくこともその時々で必要だと思うし、「大人の事情」を理解できるようにもなってきた。でも私は黙りたくない。直接子どもに関わり、権力を持つ人たちに届かない子どもたちの声を聴いているからこそ、その声を伝える代弁者としての役割も大切なのではないかと思う。

くだらない儀式をやめさせよう

 今回の首相のメッセージについて私がこのような意見を書いていたら、助成先の一つに決まり、官邸での集いに参加していた知人からこう言われた。
「実際にこのメッセージを子どもたちに直接伝える団体なんかないと思う。会場にいる団体の方は『儀式』だとわかっている。このメッセージも首相本人が書いたものでもチェックしたものでもなく、子どもたちの実情を知らない関係者が作ったのではないか。それを首相が読み、写真を撮って絵になればOK。『やりました』という実績さえ残せばいいという考えなんだと思う。彼らに期待しても無理だとわかっているので、特に怒りも感じなかった。それよりも、自分がしっかりやっていこうという思いでいる」
 私はたとえ儀式だとしても、自身が書いたものでなかったとしても、こういうメッセージを首相が子どもたちに「子供の未来応援国民運動」という名のもとに発表できてしまうことはおかしいと思う。儀式だとわかっているのであればこそ、声を上げる必要がある。
 ただの儀式なら、そんなものよりも子どものために時間やお金を使ってほしい。もし、「やりました」という実績だけ残せばOKと政府が思っているのだとしたら、そんな形でこの運動が利用されないでほしい。子どもの貧困問題に取り組むための運動なのだから。私はもし自分の関わる団体が助成を受けたとしても、活動資金をもらえたからOKとは思えない。こんなメッセージを出したり、いくつかの支援団体を呼んでそんな儀式をしたところで、子どもの貧困は解消されないし、今後も継続してこの運動を続けていくにあたって、大切な視点が抜けていると思うからである。
「政府や政治家に期待していない、あきらめている」と宣言し、それを変えるために何もしないことは、そんな大人たちの姿を見ている子どもたちにとってもよくないと思う。自分が目の前の子どもたちに寄り添い、できることをすることで変えられることもある。民間の力も大切だ。だからこそ私も活動を続けている。でも、それだけではいけないと思うのだ。
 名ばかりの政策や支援で政府が自己満足したり、それに市民が納得してしまうのは、結果的に子どもを追い込むことになりかねないし、政府の姿勢は市民の考えや理解にも影響する。おかしいことは「おかしい」と指摘し続け、理解者を増やし変えていくことが、格差のない社会づくりにもつながるのではないか。そうやって「社会は変えられるんだよ」と、子どもたちに伝えられるような社会こそ子どもたちが夢や希望を感じられる社会だと思う。

著者情報

社会活動家

仁藤夢乃

にとう ゆめの

1989年生まれ。中高時代に街をさまよう生活を送った経験から、10代女性を支える活動を行っている。これまでに夜の街でのアウトリーチ、シェルターでの保護や宿泊支援、シェアハウスでの住まいの提供といった活動を展開。第30期東京都「青少年問題協議会」委員。厚生労働省「困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会」構成員を務めた。TBS「サンデーモーニング」にコメンテーターとして出演中。著書に『難民高校生』(英治出版)、『女子高生の裏社会』(光文社新書)。

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