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連載

松本俊彦さん/命を守れる一番のゲートキーパーは友だちです

対談! 10代のあなたへ

松本俊彦(精神科医)

仁藤夢乃(社会活動家)

(構成・文/石川敦子)

「死にたい」と言える人を見つけて
松本 もう一つは、メンタルな健康度の高い9割の子たちが、1割のハイリスクの子たちのサポーターになれるような教育をしてほしいんです。リストカットしている子たちは、親やカウンセラーにはほとんど話さない。でも35%くらいの子が、友だちには話したことがあるそうです。つまり、その子たちを守れる一番のゲートキーパーは友だちです。ただ、告白された子も困って絶交してしまったり、反対に巻き込まれて一緒にリストカットしてしまう子も多い。だから告白された子はどう受け止めて、どう大人の支援につなげていけばいいか、教える必要があります。
 それから高校では中退者ガイダンス。だって薬物や自殺のリスクが高い子たちは、だいたい高校1年くらいで中退してるじゃないですか。
仁藤 私も中退しました。
松本 中退してからお金に困ったらどこに相談に行ったらいいか、メンタルを病んだらどこに行ったらいいか、教えてもらってないじゃないですか。そういう教育こそやるべきです。
仁藤 先生は困っている子がいたら、どこに頼れる大人がいる、と伝えますか?
松本 僕はよく「どこにいるかわからないけど、少なくとも3人の大人に相談してくれ」と言うんですけど。3人に1人ぐらいは頭ごなしに「だめ」と決めつけず、「こういう悪いことをしたのには訳があるよな」と思ってくれるんじゃないかと。
仁藤 私も「10人に言えば3人くらいは聞いてくれるかもだけど、私をそのうちの1人にしてもらえたらうれしい」と言ってます。
「なんで売春がダメなの?」「なんで自殺はダメなの?」と聞かれたら、私にはダメとは言えない。そもそも私も、あんまりそれが悪いと思っていないところがあるんです。ただ、目の前にいる子が私にとって大事で、その子が傷ついているのがわかるからやめてほしかったり、危険な目にあう子がいるからその危険を伝えるけど。「やめなよ」と言うより「一緒に考えるよ」と言うことで、「人を信じてみてもいいかも」「環境を変えてもやっていけるかも」と思ってもらえたら。そこからかな、と思っています。
松本 「何があっても自殺はダメ」と思っている援助者ほど、うっとうしい人はいませんよね。そんな人に「死にたい」という気持ちは話せないし、それを正直に話せない関係性で自殺予防はできません。自殺がいいか悪いかはわからないけど、「何に困ってるの? 他に解決策がないか、一緒に考えてみよう」という関わり方が必要なんだろうと思います。
“問題行動”というのは、その行動によって一時的に救われて、命をつないでいるという面があります。人にはいろんな生き延びようがある。援助交際している子が「誰かに抱きしめられている時だけ、この世にいてもいいのかなって思える」なら、「そんなふうに感じちゃダメだ」なんて言えません。「リストカットしたり、クスリを使ったり、いろいろあったけど、とにかくここまで生き延びてきてよかったね」と、まずは褒めたいです。
仁藤 「死にたい」と言ってもらえるのは、いいことですよね。「もう夢乃ちゃんにも言えない」となった時こそ、本当に行動してしまう可能性がある。私も、これからも女の子たちと一緒に考え続けていきたいと思います。

著者情報

精神科医

松本俊彦

まつもと としひこ

1967年、神奈川県生まれ。佐賀医科大学卒業。神奈川県立精神医療センター医師などを経て、2015年より国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 薬物依存研究部部長。精神科医として薬物依存症や自傷行為に苦しむ患者と向き合う。著書に「自傷・自殺する子どもたち」(合同出版)、「自分を傷つけずにはいられない 自傷から回復するためのヒント」(講談社)など。

社会活動家

仁藤夢乃

にとう ゆめの

1989年生まれ。中高時代に街をさまよう生活を送った経験から、10代女性を支える活動を行っている。これまでに夜の街でのアウトリーチ、シェルターでの保護や宿泊支援、シェアハウスでの住まいの提供といった活動を展開。第30期東京都「青少年問題協議会」委員。厚生労働省「困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会」構成員を務めた。TBS「サンデーモーニング」にコメンテーターとして出演中。著書に『難民高校生』(英治出版)、『女子高生の裏社会』(光文社新書)。

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