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連載

役所の母子支援窓口で感じたこと

"ここがおかしい"

仁藤夢乃(社会活動家)

 強い態度を取ったつもりはなく、ただ「申請したい」と淡々と何度か伝えただけで、そんな扱いを受けた。結局、「生活保護は、他の制度を利用しても生活が成り立たない場合の最後の手段なので、まずは母子支援を受けるように」と言われ、先ほどの母子支援の窓口に戻された。この時点で、役所に来てから1時間以上経っていた。ただでさえ自分の個人的な事情を、見ず知らずの役人に話すだけでもかなりの力が必要なのに、こうした対応を受けると相談に訪れた人はどっと疲れてしまい、制度を利用することを諦めてしまうことが少なくない。

相談は本人と1対1でしか受けない

 A子は出産前と産後数カ月間にわたって彼の家にいた時、役所から母子支援を受けていた。「その時の担当者なら、これまでの事情も分かってくれているから、その人と話がしたい」と言うと、彼女が実家に戻って住所が変わったことから、受け持ちエリアの関係で前の担当者とは話ができず、記録を共有することもできないという。

 また、相談は本人と相談員の1対1でしか受けられないとして「同行支援の方は席を外して下さい」と言われた。理由を聞くと、「母子生活支援施設の性質上、第三者の方の同席はお断りしております」と言う。

 本人だけでは状況や希望を伝えられるか不安であるため支援者が同行していることや、聞かれてはまずいことは本人以外の前では話さなくていいので同席させてほしいと伝えるが、相談員は「相談はご本人と1対1でしか受けられないことになっているので、このままだとお話を聞くことができない」と繰り返した。

「そういうルールがあるんですか?」と聞くと、「ルールといいますか、そういう対応はできません」と言われた。

 DVなどの被害者が、加害者やその知人と来るなどして、相談者の安全が守れなくなってしまう場合などを想定しているのかなと思ったが、彼女はこれまでColaboを経由して公的機関に繋がった経験もあり、過去の状況を調べればその関係はわかるはずだ。こうした対応を受けたのは初めてだったので、「何かの規定に基づいて言っているのか、運用上のルールがあるのか、市の規定なのか、今後のためにも教えてほしい」と言うと、相談員は上司に確認しに行った。

押し問答が延々と繰り返される

 戻ってきた相談員は、「規定はないが、○○市として同行者がいたらお話ができない」と言う。A子が「これまで何度も相談してきたけど、考えると言われるだけで、何も変わらず放置された。だから、これまでの事情を知っている夢乃さんたちに一緒に来てと自分がお願いした。私が話を聞かれてもいいと言っているのにダメなんですか?」と聞くと、「市としては、ご本人がいいと言ったとしても、ご本人の個人情報を含むような相談はその内容を第三者の方に聞かせることはできません」「市としては、それだとお話しができません」と繰り返され、話も聞いてもらえない状態が続いた。

 私がやり取りをメモしながら話していると、相談員から「メモをしないでもらえますか」と言われた。「どうしてですか?」と返すと、「市として、外に出ては困りますので」と言う。「メモをしなければ同席できるのですか?」と聞くと、「ご本人の個人的な状況などをお話しいただきますので、同席はしていただけません。一般的なお話はできますが、個別の相談についてはお話できません」と言われた。

「○○市として、と繰り返されるが、誰が、どのような理由でそう言っているのか。相談すら受けてもらえないのは初めてだ。市に抗議する」と言うと、「今日すぐに行く所が必要なんですか? 今日すぐ(シェルターなどに)入りたいんですか?」と聞かれた。彼女が「入れるならすぐにでも」と答えると、「今日は無理です」と言って相談員は席を立ち、またしても上司に相談しに行った。

これ以上の意見はホームページから

 20分以上待たされた後、上司がやってきて、「市のほうに確認したところ、この対応で問題ないと言われた」と言う。誰に確認したのか聞くと「子ども青少年局のBさんの判断で、初回の相談は1対1でないと受けられません。これ以上のご意見については、市のホームページの広聴のページから問い合わせ下されば公式な回答を行います」と言う。

「彼女はこれまでにも相談していて、初回の相談というわけでもない」と返すと「相談者に提案する支援のメニューも見せられないですし、親族以外の第三者は同席させられないというのが市の判断です」と言う。彼女は親族を頼れないから相談に来ているのに。

 根拠となる規定はなく、「市としてはDV防止法をそう解釈していて、根拠としてお見せできるものはない。書面にすることもできない」とも言われた。DV防止法には、行政が民間の支援者の同席のもと相談者の話を聞いてはいけないと書かれていないし、彼女はDVにより誰かに追われているような危険な状況ではないし、母子生活支援施設はDV防止法を根拠法とする施設ではなく「居所なし」「若年」などの理由でも入所することができるのに。

 ここまでのやりとりに、2時間掛かっていた。「もういいです。もういい。二人で話せば何か変わるんですか? 二人でしか話せないならそれでいいですよ」とA子が怒りと疲れの混じった表情で言った。子どもが産まれる前のA子だったらきっと、ここまで耐えることはしなかったと思う。これだけ嫌味を言われて、たらい回しにされ、待たされても、耐えているA子の姿に、それだけ家を出たい気持ちがあるのだと感じた。

 こんな対応はあってはならないが、A子が役所のスタンスを仕方なく受け入れることになった。

緊急一時保護の申し込みをすることに

 個室に案内された彼女が15分くらいして出てきた。「詳しい状況を教えるように言われて、同じことを説明して、どういう希望をしているのか聞かれたから、今のバイトに通えるような場所で生活したいと言ったら、場所によっては職場に通えなくなるかもしれないけど、どこになるかは調整してみないと分からないし、門限があったり、友達や男性は入れなかったり、携帯を使えないところもあるけど、それでも申し込みをしますか?」と聞かれたと言う。

 またこの日は月の中旬で、母子生活支援施設への次の申し込みは翌月1日締め切り、入所は翌々月からになるため、それまでは「緊急一時」という形で入所できる施設を探すが、「本入所」できる施設はまた別の所になるかもしれないという説明を、聞きなれない言葉を使いながらされたという。

 彼女はアルバイトを希望していたので、一時入所先からさらに別の地域に移る可能性があると、就職先を探すこともできないと心配していた。それでも、保護されればお金の心配は必要なくなるため、私は「まずどんな所か行ってみて、もし合わないと思ったらまた他の選択肢も考えたら?」と提案して、彼女はまず家を出ることを選んで緊急一時保護の申し込みをすることになった。

 ここから私も相談に同席できることになった。2週間ほどで受け入れ施設を探すため、それまで家に戻って待機してほしいと言われ、手元にお金もないのに、その間の生活費や役所に来るまでの交通費については支援してもらえることのないまま、この日はA子も疲れ切っていて、帰宅することになった。

母子生活支援施設の厳しい入所条件

 3日後、彼女から電話があった。

「今日役所から電話があって、母子生活支援施設のことで話をしたいので近々来られますかと言われて、入れる所が見つかったんだと思って今日すぐに行ってきた。入所の手続きだと思って行ったら、入るには携帯没収、友達とか親戚とか、これまでの繋がりは一切断ち切って関係を整理すること。仕事にも行けない。子どもを私のママに会わせたくても地元に戻ってくることは許されない。地元からは遠い施設になる。一時保護の間、知人や支援者の人ともやり取りすることは一切できなくなる。地元を歩くことも禁止と言われた。それでも入りたいかどうか、家族や友達、支援者には相談しないで自分一人だけで決めるように言われて、そんなんだったらもういいですと言って、申し込みを取り下げてしまった」と言う。

 彼女はまた公的支援を受けることを拒むようになり、家にいられない時はColaboや友達の家などを訪ね歩いている。また本人が必要とするタイミングが来たら、家を出るサポートをしたいと考えているが、今が好タイミングだったのに、と思う。もっと行政との連携ができていたら、と思う。

 制度や施設を必要としている人がいても、こうした対応から利用できずにいる人がたくさんいることを、役所などへの同行を通して日々実感している。

入所のルールや制限はどうあるべきか?

 母子生活支援施設やシェルターは、DVなどから身を隠すようにして生活している方も入所するため、ある程度のルールや制限があることは理解できる。

 しかし、相談者が安心して相談できる環境を役所が作らない、相談をさせない、申請をさせない、施設を怖く厳しい所であるかのように「脅す」(そういう対応を受けた女の子たちが「脅された」と表現するのを聞いている)、どんな所であってもそこで生活する覚悟があるのかと迫る、これまでの繋がりを断たないと利用できないなど相談者を孤立させるようなことを言うなどして、制度を利用させない対応を再三目にしている。

著者情報

社会活動家

仁藤夢乃

にとう ゆめの

1989年生まれ。中高時代に街をさまよう生活を送った経験から、10代女性を支える活動を行っている。これまでに夜の街でのアウトリーチ、シェルターでの保護や宿泊支援、シェアハウスでの住まいの提供といった活動を展開。第30期東京都「青少年問題協議会」委員。厚生労働省「困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会」構成員を務めた。TBS「サンデーモーニング」にコメンテーターとして出演中。著書に『難民高校生』(英治出版)、『女子高生の裏社会』(光文社新書)。

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