imidas - 情報・知識&オピニオン

連載

役所の母子支援窓口で感じたこと

"ここがおかしい"

仁藤夢乃(社会活動家)

「せっかく入所させても、すぐに退所してしまう人がいるから」という相談員の声を聞いたこともあるが、そこでの生活が自分に合うかどうか、雰囲気はどうか、どこにあるか、どんなスタッフや利用者がいるか、どんな設備があるかなど、行ってみなければ分からないことの方が多い。合わなかった時に、相談者の失敗のような扱いを受けたり、面倒くさそうに迷惑そうに対応されたり、今後の支援を嫌がられることがあるが、相談者を責めるのではなく、別の施設や別の選択肢を提案できるようになってほしい。

 ルールや制限は管理のためではなく、利用者の安心安全や権利のためにあるべきだ。ある程度の制限があっても、一人ひとりが安心して入所できるように、相談者の状況に合わせて制限を緩くしたり、一定の約束のもとで携帯電話の使用や外出許可などの配慮を行ったりしている施設もある。この施設ならそうした対応をしてくれると分かっていても、施設への入所措置を決めるのは行政の判断になるため、私たち支援者が施設と関係を築くだけでは不十分だ。

現実に起きていることを伝えたい

 役所では「施設側がそうした対応が可能だと判断するかは分からないため、窓口では一番厳しいことを言う」という話も聞いたことがある。が、そうであれば施設との入所調整を行う相談員が、相談者の希望や状況に合わせて、施設と交渉したり、相談者の不安を解消できるような説明をしたり、コミュニケーションをと取ったりすべきだ。そうしたスキルや知識、経験をもち、相談者に寄り添える良い相談員がいることも知っているが、相談に行った窓口で当初からそういう人に出会えることは、これまでにほとんどなかった。良質な相談員を確保するための待遇改善や研修の強化も必要だ。

 こうした対応の問題を指摘すると、関係機関に「あの支援者とは連携しにくい」と思われてしまうから、声を上げない方がいいと支援の関係者から忠告されることがある。施設関係者からは「相談員に相談者の利益のために動いてもらうためには、相談員の下手に出て相手を労ったり、どうしたらいいですか? と判断を委ねたりしてうまく動かすこと。相談中にイライラしそうになっても笑顔で、お願いする姿勢を忘れないように、とその子に伝えること」などとアドバイスされることも少なくない。

 でも、相談の現場はそんなに甘くない。施設側が、入所までにこんなに高いハードルがあることに気付いていないことも多い。だからこそ、こうして現実に起きていることを伝えたいと思った。

 相談者に変わることを求めるのではなく、支援の側が、必要としている人に利用してもらうために変わる必要がある。必要としている人がいたら、その人が安心して支援を受けられるようにサポートしてほしい。そして今回のケースでは、どこにも明文化されていないらしい「相談は1対1でしか受けられない」などのルールも、見直すべきではないだろうかとも感じた。

著者情報

社会活動家

仁藤夢乃

にとう ゆめの

1989年生まれ。中高時代に街をさまよう生活を送った経験から、10代女性を支える活動を行っている。これまでに夜の街でのアウトリーチ、シェルターでの保護や宿泊支援、シェアハウスでの住まいの提供といった活動を展開。第30期東京都「青少年問題協議会」委員。厚生労働省「困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会」構成員を務めた。TBS「サンデーモーニング」にコメンテーターとして出演中。著書に『難民高校生』(英治出版)、『女子高生の裏社会』(光文社新書)。

関連記事

新着記事

imidasの更新情報をお届けします。