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女児虐待死事件から感じた危険な空気(1)子どもたちが助けを求められなくなる!?

"ここがおかしい"

仁藤夢乃(社会活動家)

 そこで私たちは彼女を保護し、児童相談所と保護観察所の担当者を集めて話し合うことにした。両者はそこで名刺交換を行った後、児相の担当者が「私たちとしては、一時保護の時点で彼女はもう家に返せないと判断していたんです」と切り出した。その後、彼女が安心して暮らせる場所をどう探すかで、児童相談所と保護観察所が互いに押し付け合おうとするようなことが起きた。児童相談所は厚生労働省、保護観察所は法務省と管轄が違うために連携が難しいのだそうだが、彼女のようなケースは本当に多いので、帰住先探しや出院後の支援などでの連携を強く求めたい。

 警察と情報共有をすべきケースについては、各児童相談所の判断に任せるのではなく、過去の事件や今の状況を検証・調査し、よく議論して基準を作ってほしい。また、警察は福祉機関ではないが、現状で児童相談所の閉所時間に頼れる唯一の公的機関なのだから、虐待被害児に対し「取り締まり」ではなく「ケア=保護」の視点を持って関われるよう、全ての警官に継続的な研修を早急に行うべきだ。私は、そういう問題意識もなく「情報の全件共有」を語る人が増えることが怖い。警察には、むしろ補導した子を支援につなぐなど、必要なケアを受けられるよう積極的に動いてほしいと思う。

 児童相談所と警察の情報共有を叫ぶ人たちには、「全ての子どもに弁護士を付ける」ことへの賛同も同時に求めていきたい。虐待されている子どもの中には「親と離れて生活したい」「親と縁を切りたい」と思っている子も、そうでない子もいる。しかし公的機関の対応には、そうした子どもの気持ちや意思が尊重されているとは感じられなかったり、子どもの権利が守られていないと思われたりすることが多々ある。

 大きな権力に自分の人生や生活が左右されてしまうこと、決め付けられてしまうことを子どもたちは恐れている。虐待の事実が発覚したことからそういう経験をしたり、家族とのいい距離感を求めていたのに、介入があだになって関係が悪化したと感じたりした子どもは相談をしなくなる。だから警察と情報共有をするかしないかに関わらず、「子どもの味方」になる人を子どもたち一人ひとりに付けてほしい。「児童相談所の弁護士」ではなくて、「子どもの代理人」として活動できる専門家が必要だろう。

女児虐待死事件から感じた危険な空気(2)へ続く

著者情報

社会活動家

仁藤夢乃

にとう ゆめの

1989年生まれ。中高時代に街をさまよう生活を送った経験から、10代女性を支える活動を行っている。これまでに夜の街でのアウトリーチ、シェルターでの保護や宿泊支援、シェアハウスでの住まいの提供といった活動を展開。第30期東京都「青少年問題協議会」委員。厚生労働省「困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会」構成員を務めた。TBS「サンデーモーニング」にコメンテーターとして出演中。著書に『難民高校生』(英治出版)、『女子高生の裏社会』(光文社新書)。

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