「トー横」支援施設や団体で相次ぐ性暴力 〜事件は本当に「避けられないこと」なのか?
仁藤夢乃(社会活動家)
さらには施設があったことで事件が発覚したようにも語っていたが、この事件は施設の体制や利用者への無理解、専門性の欠如などが招いた性暴力事件である。まずは被害者にお詫びし、利用者のケアを徹底し、実態調査と再発防止を都に求めるべき立場にあるのではないか。そして「純粋に少年少女の立直りを考えているなら」というのも気持ち悪い。自分たちは善とか、純粋に青少年支援を考えているとかと言うが、少女たちの人権を尊重し、歌舞伎町を中心とする少女性搾取の構造を変えようという姿勢が全く感じられない。
虐待などを背景に家に帰れなかったり、傷ついている子どもたちを支えたりするには、場所をただ開放すればいいわけではない。これでは「トー横に屋根を付けただけ」なのだ。SNSで「きみまも」を「公営トー横」と表現する人もいて、その通りだなと思った。
本末転倒な東京都の改善策
事件後、都は「きみまも」について一度に利用できる人数を20人ほどに絞ったほか、身分証の提示を求めたり、相談員の他に警察OBを配置したりなど管理体制を見直したと報じられた。しかし実は、事件が明るみに出る少し前には、ホームページ上で利用を登録制にすると発表していた。それによると利用登録には本人が確認できるものや連絡先(携帯電話番号、住所など)の提出が必要とあり、都はそうすることで再発防止ができると説明しようと考えたのだろうが、これでは本末転倒だ。
なぜなら開設当初に匿名利用可としたのは、公的支援に拒否感をおぼえる青少年とつながるためだったからだ。家に帰れず性搾取の被害に遭っている少女たちは、そもそも身分証を持っていないことが多いし、個人情報を知られることに強い警戒心を持っている子がほとんどである。そうした状況を行政もようやく理解したからこそ「名前や住所を明かさなくても気軽に利用できる」とし、Colaboのバスカフェのようにスマホの充電ができたり、軽食が食べられたりする休憩場所を開設したはずではなかったか。
警察に補導されることを恐れて、人目につかないところを転々として生き延びている子どもたちが、警察OBが配置された監視カメラ付きの施設に行くわけがない。それでも利用したい人はいるかもしれないから、やればいいと思う。しかし、これでは決して虐待や性搾取の中にいる少女の支援にはならないことを、理解する必要があるだろう。
怪しい男たちによる「支援団体」が急増
若年女性支援事業は、Colaboのような女性主体の民間支援団体が活動を通して実態を示し、必要性を訴え続けたことで制度化された。22年には日本で初めて――世界的に見ると遅すぎるが、女性支援の根拠法「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(女性支援新法)」が成立し、しかしそれに伴いColaboに対するデマ拡散や妨害はこれまでにないほど深刻化した。背後には性売買業者やそれにつながる権力者たちがいる。24年の新法施行を前に、私たちの社会的信用を落とそうと必死だったのだろうと思う。
残念ながらその攻撃は成功している。若年女性支援が注目され、予算化される見通しが立ったころから、怪しい男性たちによる団体が複数立ち上がった。歌舞伎町だけでも片手で数えきれないほどにはある。半グレ組織とつながる人物が関わる団体も多く、彼らは「女性支援団体」を名乗り始めた。少女たちに声をかけたり、食事を与えたりしながら、彼女たちをコントロールし、そこで被害に遭った少女たちからの相談を受けることもあった。
つい最近も「トー横」に集まる少年少女の「支援団体」を名乗る団体の元代表の男が、17歳の少女にホテルでみだらな行為をした疑いで逮捕された。被害に遭った少女とは歌舞伎町で出会い、食事を提供したり、交通費として現金を渡したりしていたという。
現場に行けば、誰がどのような活動をしているか、どのような目線で少女たちのことを見て、どのような関係性を作り、どのような支援をしているのかがわかるはずだ――と私は思うが、それがわからない人が大半なのだろう。実際に、そうした団体を取材した人や、視察をした議員らが、そのような団体を持ち上げていることが被害を温存・拡大させてきた。
それだけ、若年女性支援とは何かが日本社会は理解されていないのだ。少女たちの置かれている現状や抱えているもの、性売買業者やその周辺の関係者たちの巧妙な動きや、それを支える搾取の構造、背景にある女性差別の問題への深い理解、さらには女性たちがどのような暴力の中で生きてきて、どれだけの傷を抱え、回復にどのような時間と支援が必要なのか――。今起きている問題や構造への理解がない、知らない、「専門家」を名乗る人たちに専門性がない状況がある。そうしたことを見抜いている性売買業者らが、「支援」の名を借りて福祉にも入り込んでいる。それに気づかず行政が誤った支援をすることも繰り返されている。そして善意の民間団体も、彼らのことを見抜けずに連携を始めている。これがトー横キッズ「支援団体」での性暴力事件が相次いでいる背景だ。
今、日本で何が起きているのか。なぜ若年女性支援が必要なのか。公的支援の在り方や支援現場の実態はどうなっていて、どのような議論がされてきたのかを知り、これからの社会を共に考えてほしい。