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連載

立ち枯れのお客さん ――キツツキの仲間

第30回

今森光彦(写真家/切り絵作家)

 木々の葉が全て落ちて、アトリエの周りはすっかり冬景色。雑木林は小山になっているので、ほんの少し駆け登るだけで景色が開け、南には棚田の風景、北には比良山(ひらさん)が望めます。初冠雪の頃になると、山の頂(いただき)が白く光って、清々しい気持ちになります。
 昨年は大きな台風がやってきて、雑木林の木々がたくさん折れました。直径30センチ以上あるクヌギやヤマザクラの木も数本、幹の途中からバッサリと亀裂が入ったものがあります。倒れた木を整理するのは一苦労でしたが、立ち枯れになった木は伐採せずにそのまま残すことにしました。それは、キツツキの仲間のためです。

12月になったら薪割りの仕事が始まる。

 アトリエにやってくるキツツキたちは、アカゲラ、コゲラ、アオゲラです。アカゲラは、ムクドリくらいの大きさで、オスは後頭部と尾羽根の下に赤い羽毛をもっています。全身が黒と白のはっきりした文様なので、紅色が鮮やかに見えます。木々の間をダイナミックに飛翔しては幹を駆け登り、また、隣の木に飛び移るという、まるで忍者のような身軽さ。アカゲラをアトリエの敷地内で発見したのは20年くらい前になりますが、アカゲラが来るほど雑木林の木々が成長してきたことにとても感動したのを覚えています。

元気よく木々の間を飛び回るアカゲラ。

 一方、コゲラは、アカゲラに比べると小さく、スズメくらいの大きさでしょうか。黒地に正方形の白い紙をちりばめたような文様をもつ美しい鳥です。フレンドリーで建物の近くにもやってきます。アトリエのアプローチにあるクヌギの並木がお気に入りです。このクヌギは刈り取った稲を干す稲木として管理しているので、高さ2メートルくらいしかありませんが、毎年枝を剪定するため、先端が握りこぶしのような形をしています。木肌がゴツゴツしているせいか、コゲラたちの大好物である越冬中の昆虫たちがたくさんいるようです。

スズメくらいの小さなキツツキ、コゲラ。

 そして、アオゲラは背中を中心に抹茶色をしています。オスの頭部には赤い斑紋もあり、とても印象的です。ハトくらいの大きさがあります。アカゲラやコゲラほど頻繁ではありませんが、アトリエの敷地内で毎年確実に見られます。エノキの実がほんのりと色づく頃、待っていたように現れます。細い枝に逆さになって止まると、枝先がしなってゆらゆらと動くのですが、器用に体や顔をねじって実をついばみます。
 アカゲラとコゲラは、アトリエの立ち枯れの木に営巣することもあります。台風で犠牲になったクヌギを始めとする広葉樹は、やがて立ち枯れとなって、彼らに子育ての場を提供することでしょう。自然による被害も、長い目で見れば生態系の中ではなくてはならない現象なのかもしれません。

アオゲラは、抹茶色の美しい鳥。

*写真の複写・転載を禁じます。

 

著者情報

写真家/切り絵作家

今森光彦

いまもり みつひこ

1954年滋賀県生まれ。幼い頃から昆虫少年で、大学卒業後に独学で写真を学び、1980年よりフリーランスとなる。以後、琵琶湖をとりまくすべての自然と人びとのかかわりをテーマに撮影している。また、熱帯雨林から砂漠まで昆虫写真を追求し、広く世界の辺境の地まで取材し続けている。木村伊兵衛写真賞(1995年)、土門拳賞(2009年)などを受賞。NHKスペシャルで「里山」をテーマにした番組を多数放映、現在もNHKBSプレミアムにて「オーレリアンの庭 今森光彦の四季を楽しむ里山暮らし」を不定期放映中。主な書籍に、『昆虫記』(福音館書店、1988年)、『里山物語』(新潮社、1995年)、『NHK ニッポンの里山』(NHK出版、2014年)、『今森光彦の心地いい里山暮らし12か月』(世界文化社、2015年)ほか多数。

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