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連載

薪ストーブは里山の生態系につながっている

第66回

今森光彦(写真家/切り絵作家)

 カラカラと音を立てて落ち葉が散る束の間が過ぎ、アトリエの周りは枯れ葉でいっぱいです。庭園の感覚だと落ち葉かきをして掃除をするところですが、私の場合はそのまま放置しています。というのも、やがてやって来る強い北風が、地面を舐めるように掃除してくれるからです。北風の仕事はお見事で、無数の落ち葉をちょっとくぼんだところに堆積させてくれます。この季節に訪れたお客さんが「美しくお掃除をされていますね」とほめてくれるのですが、これは風のおかげなのです。

落葉した雑木林。(撮影:今森元希)

 この時期になると、部屋では薪ストーブを使い始めます。アトリエの薪ストーブは、鍛鉄作家の知り合いが作ってくれたオリジナルです。つや消しの真っ黒な姿は、シンプルですが機能的な美しさをもっています。かれこれ30年以上前、アトリエを建てた時に設置したもので、この時は試作品というかたちで火のつき具合などを調べました。高熱が続くと部屋の壁面への影響があることがわかり、鉄製の断熱板を挟み込むなどの工夫もしました。商品化されているものではないので一抹の不安はありましたが、薪ストーブは問題なく燃え続けています。使い始めてから今までトラブルはないので相当に優秀です。冬場にアトリエにやって来たお客さんの中で、これと同じ薪ストーブが欲しいという人が何人も現れ、この作家に製作を依頼して好評を得ています。

薪ストーブに火をつける作業は楽しい。(撮影:今森元希)

 最近は薪ストーブが人気で、新築だけでなく古民家などにも設置する人が多くなりました。いろいろなメーカーが大小さまざまな種類の薪ストーブを販売しています。部屋の中に炎があると暖かさを感じますし、木の燃える匂いは心に安らぎを与えてくれます。
 でも、私の場合はそのほかにも薪ストーブを使いたい確固たる理由があります。それは持続的な雑木林の管理と直接つながっていることです。アトリエを建てた当時から管理している「萌木(もえぎ)の国」の木々をむだなく使いたいという強い思いがあります。萌木の国は、今まで二度にわたり伐採をしていますが、伐採した木はシイタケのほだ木などに使うほか、薪としても使用しており、管理しながら利用する雑木林として適切な広さのようです。

雑木林に落下している小枝は、焚きつけに重宝する。(撮影:今森元希)

 今、薪ストーブを利用している人たちの多くは、市販されている薪を購入したり、家屋の解体の時に出る廃材などを集めて使用したりしているようです。けれども、薪ストーブは本来、森の管理とつながっているものだと私は考えているので、使っている人たちが部屋の炎を見つめながら、木々の姿が想像できるといいなと思います。もっと言うと、森の中で暮らす生きものたちの姿が浮かんできたら最高です。薪ストーブは里山の生態系とつながっている……、薪ストーブを利用している人たちみんなにそんな自負を持っていただけると、さらなる意味が出てくるように思います。
 ちなみに、今年はまたまた萌木の国の木を伐採する年です。地元で長年シイタケ栽培をしているベテランに任すことになりそうですが、その様子はまた別の機会に話をさせていただきます。

炎は部屋に暖かさと安らぎをもたらしてくれる。(撮影:今森元希)

*写真の複製・転載を禁じます。

著者情報

写真家/切り絵作家

今森光彦

いまもり みつひこ

1954年滋賀県生まれ。幼い頃から昆虫少年で、大学卒業後に独学で写真を学び、1980年よりフリーランスとなる。以後、琵琶湖をとりまくすべての自然と人びとのかかわりをテーマに撮影している。また、熱帯雨林から砂漠まで昆虫写真を追求し、広く世界の辺境の地まで取材し続けている。木村伊兵衛写真賞(1995年)、土門拳賞(2009年)などを受賞。NHKスペシャルで「里山」をテーマにした番組を多数放映、現在もNHKBSプレミアムにて「オーレリアンの庭 今森光彦の四季を楽しむ里山暮らし」を不定期放映中。主な書籍に、『昆虫記』(福音館書店、1988年)、『里山物語』(新潮社、1995年)、『NHK ニッポンの里山』(NHK出版、2014年)、『今森光彦の心地いい里山暮らし12か月』(世界文化社、2015年)ほか多数。

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