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連載

百地裕子、史上最大のピンチ

第6回

百地裕子(プロゲーマー)

 タイムアタックは自分との戦いです。過去の自分よりどれだけ速く走れるか――ただそれだけなのですが、車の操作はどのタイミングでどれだけハンドルを回すのか、どれだけブレーキを踏むのか。操作のすべてが自分の感覚です。少しでも焦るとタイミングが狂ってうまく走れないし、緊張していつもうまく走れている所でミスったり。自分のメンタルに大変左右されます。

 タイムアタック中に、自分が自己ベストを出すことができそうなタイムで走れていることに気付くと、途端に「ミスをしてはいけない」というプレッシャーが顔を出します。それまで普通に走れていたのに、心臓がドキドキし始めます。

「ここまでいつもより速く走れているんだから、ミスしないように余裕を持ってこのコーナーを曲がろう」なんて思った時にはまぁミスをしますね。メンタルは自分のプレーに非常に強く影響する、ということをとことん感じることができます。たいていのコースは大体2分半程度でゴールできる長さなのですが、その2分半がとてつもなく長く感じます。そしてその緊張をはねのけ、自己ベストのタイムを出すことができたら! ……それはもう、とてつもない達成感を得ることができるのです。そして自分の成長をわかりやすく感じることができます。

 これが私がレースゲームにハマる理由の一つです。さらに「頭文字D ARCADE STAGE Zero」には、インターネット通信で全国のプレーヤーと対戦することができる「全国対戦モード」があります。日本のどこかの誰かと、レースをして勝ち負けを競えるのです。どちらが速く走ることができるかを、相手の行く手を阻む駆け引きを楽しみながら決める。これまた心臓がバクバクする瞬間の連続です。

 私はこのゲームで、かなりメンタルをトレーニングすることができているように思います。これは本業である「ストリートファイター」のプレーにも生きると感じますし、リアルな生活でも強くなれるのではと思います。そんな思いも込め、18年はこのゲームもやり込みたいですね。

ジャパン アミューズメント エキスポ2017で「頭文字D ARCADE STAGE Zero」に興奮しまくる百地裕子

ストVに〈ブランカ〉が再登場

 そして! やっぱり今年、私が一番無我夢中でプレーしたいのはPlayStation 4用ゲームの「ストリートファイターV(ストV)」(カプコン)ですね。何と私が大好きなキャラクター〈ブランカ〉も、やっとシーズン3バージョンで追加されることになりました。

 私は前作の「ストリートファイターIV」で緑色をした野獣のような〈ブランカ〉と出会い、恋に落ち、そして共に歩んできたわけですが、何と16年発売時の「ストV」ではいなくなっていたのです。泣く泣く別のキャラクターを使用しながら〈ブランカ〉のいない心の隙間を埋めていたのですが、完全に満たされることはありませんでした。思えば「ストリートファイターII(ストII)」で初登場し、「ストIII」でいなくなり、そして「ストIV」で再登場し、「ストV」でまたもいなくなってしまった〈ブランカ〉。もう「ストV」では会うことができないと思っていた彼が帰ってくるのです!

「ストリートファイター」は一つのシリーズがバージョンアップを繰り返し、少しずつ内容が新しくなったり変更されたりしながら、大体5年程度続きます。なので「ストIV」も初期の08年時点で16人だったキャラクターが、14年発売の最終バージョンでは44人まで増えていました。このようにバージョンアップごとにキャラクターも見直されるのですが、幸運なことに18年の「ストV」バージョンアップ(シーズン3)では、私の最愛キャラクター〈ブランカ〉が満を持して登場することが発表されました。

 私はこのキャラクターの登場を、世界中の誰よりも喜んでいるという自信があります。彼との日々が再び返ってきます。無我夢中で練習していたあの日々を思い出したい。いろいろなことを全部気にせず、〈ブランカ〉を動かすことだけに集中して、それ以外は頭の中を空っぽにして「ストリートファイター」を楽しみたい。〈ブランカ〉と共に強くなりたい。そう思います。

 とはいえ、離れ離れになっていた空白の2年間で私も〈ブランカ〉も、もう以前のままではありません。「ストIV」から「ストV」になったことで、彼の見た目はさほど変化していなくとも、中身は全然別人のようになっている可能性があります(要するに、全然違う性能のキャラクターになっている可能性もあるということです)。それでも私は〈ブランカ〉と歩んでいきたいと思います。もし練習していてあまりの変化に心が折れそうになったら、この記事を読み直すことで、また彼を愛して頑張ろうと思います。初心に返り、純粋に〈ブランカ〉に夢中になる日々で、活力を取り戻したいと思います! そうすれば、きっと自分の「やりたいこと」「どう生きるか」が見えてくる気がします。

18年も私らしく人間らしく

 新キャラクター〈ブランカ〉の追加が発表になった時、国内外問わずたくさんの方が〈チョコブランカ〉の復活を楽しみにしているというメッセージをくれました。その皆さんの声に答えたいです。地道にこつこつ、少しずつ強くなっていきたいと思います。

 こうやって落ち着いて考えてみると、やりたいことって案外すぐ出てくるものですね。今は自分の感情が少し迷子になっているだけなのかもしれません。

「いつでもどんな時でも元気100%全開だぜー!」って人はいません。きっと私はやりたいこと、やりたい生き方が胸の中にあります。それが、今は奥のさらに奥に隠れてしまっているだけなのでしょう。ですから、しまい込んでしまっている感情をゆっくり紐解いていこうと思います。

 うまくいっている時もあれば、何もかも全然うまくいかない時もある。ものすごく活力に溢れている日もあれば、ものすごく気分が沈む日もある。そうやって浮き沈みながら歩いていく。それがとっても人間らしいと思います。私らしく人間らしく、今年も生きていきたいと思います。

 皆さんも自分らしく生きる、素敵な一年にしてくださいね!

 それではまた次回。

著者情報

プロゲーマー

百地裕子

ももち ゆうこ

1986年、兵庫県生まれ。中京大学体育学部卒業。2008年より対戦格闘ゲームを始め、国内大会でトップゲーマーに勝利して知名度を獲得。愛称は〈チョコブランカ〉。11年にプロゲーミングチーム「Evil Geniuses」(本拠地・アメリカ)からスカウトされ、日本人初の女性プロゲーマーとなる。17年には北米のプロゲーミングチーム「Echo Fox」に移籍。夫は同チームに所属するプロゲーマーの〈ももち〉こと百地祐輔。世界初の現役プロゲーマー夫婦として、15年に株式会社忍ismを設立。「ゲームと人を繋げる」をモットーに、世界で活躍できる後進の選手育成、ゲームコミュニティーを盛り上げるためのイベントの企画・運営に携わる。

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