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連載

海外プレーヤーのゲーム練習事情

第7回

百地裕子(プロゲーマー)

 韓国の選手たちは情報交換も密に行っていて、スマホ用の無料通話・メールアプリ「カカオトーク」でグループを作り、ストVの攻略情報をやり取りしているんです。日本の選手たちも「LINE」アプリで、リュウLINEグループ、ケンLINEグループといったようにキャラクターごとに情報交換を行っているので、そこは似ていますね。

 さらにDBクッパさんによると、韓国の選手たちはネットカフェのほか自宅でもオンライン練習対戦をしていて、そのためにより接続状況のいいインターネット回線を選んだりもするのだそうです。

「韓国の主要なインターネットプロバイダーのうちの一つが海外接続に強い回線を持っているので、そこに契約を替てでも日本のプレーヤーと質のいいオンライン対戦がしたいんです」と言っていました。日本と韓国は距離が近いので、さほど通信のタイムラグなくインターネットでオンライン対戦することが可能なんですね。

 韓国では皆、ゲーム機ではなくパソコンでゲームをするのが元々のスタイルなので、ストVのPC版が出たことでプレーヤー人口が増えているし、それに伴いインターネットで配信中継を見る人も増えていて、実にいい傾向なんだとか。ただ、1、2年前は「鉄拳」(ナムコ)という格闘ゲームの人気でゲームセンターがとても盛り上がっていたけれど、PC版が出たことでそっちは寂しいことになってしまっているようですが……。

「時代の移り変わりなのかもしれませんが、韓国もゲームセンターが廃れてきているというのは、やっぱり寂しいよ」とDBクッパさん。

ドミニカ共和国は仲間意識が強い

 最後はドミニカ共和国の練習環境について。日本では野球などでおなじみの国ですが、メキシコ湾の南に広がるカリブ海に浮かぶ島国です。そんなドミニカ共和国の格闘ゲームプレーヤーで、公式世界王者でもある〈MenaRD〉選手がなんとなんと私と〈ももち〉が運営する「忍ism」のスタジオへ遊びに来てくれたので、一緒にご飯を食べながらインタビューすることができました。

 せっかくなので練習環境だけでなく、いろいろ彼自身のことについても質問してみました。

 開口一番、ドミニカ共和国で今一番人気のゲームを聞いたところ「ストリートファイターV」とのことでした。これには私も驚きました。「League of Legends(リーグ・オブ・レジェンド)」(Riot Games)とか「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS(プレーヤーアンノウンズ・バトルグラウンズ)」(PUBG Corporation)といった世界的に大人気で、プレーヤー人口も非常に多いゲームじゃないの?

 そんなふうに問いかけると、〈MenaRD〉選手は「そういうゲームは流行ってないんだ。僕の国では格闘ゲームが人気なんだよ」と答えました。ちなみに彼が初めて挑んだ格闘ゲームは「大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U」(任天堂)で、お兄さんと遊んだのが最初だそうです。

 それからというもの、彼は格闘ゲームを好んでプレーするようになり、ストリートファイターにはまった。きっかけは14年末にアメリカのカリフォルニア州サンフランシスコで開催された「カプコンカップ2014」決勝での、シンガポールのトッププレーヤー〈Xian〉選手と日本の〈ももち〉選手との試合。彼にとってあの試合は一番の衝撃で、以後ストリートファイターをプレーするようになったのだとか。その3年後の「カプコンカップ2017」で本人が優勝するとは、なんだか感慨深い話です。

 さてその練習はというと、ドミニカ共和国もインターネット環境が良くなく、基本的にオフラインで集まって対戦するしかない。そのため練習仲間を作って、毎日集まっては練習対戦や情報交換をしているとのことでした。アメリカの〈NuckleDu〉選手のように、トレーニングモードを使うことはとてもよくあるそうです。

「オフラインでもすごく強い仲間たちと練習し合えるから、とてもいい環境だ」と〈MenaRD〉選手は言います。インターネットを使うのはもっぱら情報収集のためで、様々な選手の対戦動画を見て研究するぐらい。一番大切なのはやはり、仲間たちとの対戦だそうです。

 そんな彼は「17年に獲得した賞金で自分がオーナーのプロゲーミングチームを始めるんだ! もちろんメンバーはドミニカ共和国の仲間だよ」と、チームのロゴデザインを見せながら嬉しそうに語ってくれました。

 仲間たちを本当に大切に思っているんだなぁ、18歳なのにしっかりしているし、まわりの皆のことも考えていて素晴らしいなぁと思いました。

 彼は今回、EVO Japan 2018参加のため貯金を使って一人で来たと言っていました。日本には一度来てみたかったそうで、それが叶って嬉しかったとも。

「日本で気に入った食べ物はラーメンといきなりステーキ!」

「もっと日本でみんなと対戦したい。でも早く帰らないと、ドミニカ共和国で僕の帰りを待っているワイフが超怖いから、帰らなきゃ」

 無邪気に笑う姿からは子どもっぽさも感じられましたが、〈MenaRD〉選手は結婚していたんですね~。ところで「妻が怖いのはうちも一緒だよ」と私の夫の〈ももち〉が隣で笑って同意してたので、コラッ! と叱っておいたのは言うまでもありません。そんなこんなで、貴重な日本旅行の最終日を一緒に楽しく過ごさせて頂いた〈MenaRD〉選手、本当にどうもありがとう。

忍ismのスタジオへ遊びに来たドミニカ共和国の〈MenaRD〉選手(中央)

練習環境の差は縮まりつつある

 さて、以上3つの国の練習環境についてご紹介してみましたが、皆さんはどのように感じたでしょうか? 私はやはり“アメリカでは誰かの家に集まってみんなで練習する”というイメージがずっとあったので、その文化がゲームの技術的進歩でインターネットによるオンライン対戦へ移り変わっていた――というのに驚きましたね。プロ同士があまり対戦しないというのも意外でした。

 日本でもアーケード版ストVがリリースされなかったことで、ゲームセンターではなくオンラインでの練習対戦が主流になりましたし、アメリカ、韓国、日本はさほど練習環境に差はなさそうですね。今回の取材で、アメリカ人選手が変化した点としてスティーブさんもボソッと言っていました。

「以前はトレーニングモードで細かいテクニカル分析をするのがあまり好きじゃない選手が多くて、誰もが感覚でプレーしていて、読み合いがうまいのがアメリカ人っていう感じがしていたんだ。だけどストリートファイターVから大会の賞金が上がって、みんなそれを狙うようになったことで、最近はトレーニングモードや対戦動画の研究を重視するようになってきたように思う」

 今回のEVO Japan 2018では、本コラムのためにインタビューした3人以外にもイタリア、フランス、台湾、香港、シンガポールといった、いろいろな国のプレーヤーたちと日本で交流することができ、本当にいい機会となりました。また来年も同大会が開催されると嬉しいなと思います。

 それではまた次回。

著者情報

プロゲーマー

百地裕子

ももち ゆうこ

1986年、兵庫県生まれ。中京大学体育学部卒業。2008年より対戦格闘ゲームを始め、国内大会でトップゲーマーに勝利して知名度を獲得。愛称は〈チョコブランカ〉。11年にプロゲーミングチーム「Evil Geniuses」(本拠地・アメリカ)からスカウトされ、日本人初の女性プロゲーマーとなる。17年には北米のプロゲーミングチーム「Echo Fox」に移籍。夫は同チームに所属するプロゲーマーの〈ももち〉こと百地祐輔。世界初の現役プロゲーマー夫婦として、15年に株式会社忍ismを設立。「ゲームと人を繋げる」をモットーに、世界で活躍できる後進の選手育成、ゲームコミュニティーを盛り上げるためのイベントの企画・運営に携わる。

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